平成13年版 情報通信白書

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第1章 特集 加速するIT革命

1 世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成

2005年までに、1,000万世帯が超高速インターネットに、また3,000万世帯が高速インターネットに低廉な料金でアクセスを実現

 「e-Japan重点計画」では、我が国の情報通信ネットワークの現状について、これまで極めて信頼性の高い世界的にも高水準の情報通信ネットワークを全体として構築してきたが、インターネットについては、アジア・太平洋地域においても決して先進国と言えない状況であること、放送については、地上放送のデジタル化で米国、イギリスに出遅れている状況であると捉えている。
 そこで、達成すべき目標として、平成17年(2005年)までに、1,000万世帯が超高速インターネットに、また3,000万世帯が高速インターネットに、低廉な料金でアクセス可能な環境に整備すること、放送のデジタル化、通信と放送の融合を推進することを掲げ、その実現に向け、民間によるネットワーク整備を原則とし、政府は自由かつ公正な競争の促進、基礎的・基盤的な研究開発等民間の活力が十分に発揮される環境の整備に取り組んでいくこととし、1)インターネット網の整備、2)放送のデジタル化、3)通信と放送の融合に対応した制度の整備、4)地理的情報格差の是正等について施策を推進していくこととしている。
 総務省では、インフラ整備とコンテンツ・アプリケーション開発の好循環を創造すること、民間主導原則の下、国は民間活力が適切に引き出される環境を整備すること、国際的協調と国際競争力を強化すること、都市部と地方を問わず、全国どこでも世界最高水準のサービスを享受できる利用環境を整備することを基本方針に、以下の具体的施策を推進する。

1)インターネット網の整備

(i)公正競争条件の整備

ア 非対称規制の導入
 既存の非対称規制に加え、市場支配力を有する電気通信事業者の反競争的行為を防止、除去するとともに、利用者利益を確保し、市場支配力を有さない電気通信事業者に対しては、契約約款、接続協定の認可制等を一定の条件の下で届出制に移行するなど大幅な規制緩和措置を平成13年中に行う。このため、「電気通信事業法等の一部を改正する法律案」を第151回通常国会に提出し、成立した。

イ NTTに対するインセンティブ活用型競争促進方策の導入
 NTTのグループ経営の改善と公正競争の確保を図る観点から、地域通信網の開放の徹底、NTTコミュニケーションズ及びNTTドコモに対するNTT持株会社の出資比率の引下げを含むNTTグループ内の相互競争の実現、東・西NTTの経営効率化の推進等、競争促進のための自主的な実施計画をNTT持株会社及び東・西NTTが作成し、公表することを期待する(注)とともに、当該実施計画の実施状況を注視し、また、IT革命推進のため、東・西NTTが本来業務の円滑な遂行及び電気通信事業における公正な競争の確保に支障を及ぼすおそれがない範囲内において既存の経営資源を活用してインターネット関連サービス等成長の期待される新たな業務を営むことを可能とする措置を平成13年中に講ずる。このため、「電気通信事業法等の一部を改正する法律案」を第151回通常国会に提出し、成立した。
 なお、公正な競争を促進するための施策によっても競争の進展が見られない場合には、通信主権の確保や国際競争の動向も視野に入れ、速やかに電気通信に係る制度、NTTの在り方等の抜本的見直しを実施する。
 
ウ 電気通信事業紛争処理委員会の創設
 電気通信分野については、地域通信網のオープン化や事業者間の競争の進展により電気通信事業者間の接続形態が複雑化する等、電気通信事業者間等の協議内容も高度化・多様化するとともに、その迅速な解決がますます求められるようになってきている。また、競争環境の激変に対応してルール型行政を充実していくことが電気通信行政の基本的方向であるなか、電気通信事業者間等の紛争事案も今後大きく増加する可能性が高く、効率的な紛争解決が求められるようになってきている。
 そこで、紛争処理機能を充実する観点から、平成13年中に高度化・複雑化する電気通信事業者間の紛争事案を専門的に取り扱う機関として、「電気通信事業紛争処理委員会」を総務省に設け、現行の接続、共用等に係る裁定に加え、より簡易で迅速な当事者間の合意形成を促進するためのあっせん手続等を新たに導入する。このため、「電気通信事業法等の一部を改正する法律案」を第151回通常国会に提出し、成立した。

(ii)超高速ネットワークインフラ等の形成推進

ア 既存光ファイバの活用
 サービスの安定的な供給及び公平な利用の確保に配慮しつつ、自治体、電力事業者、鉄道事業者等の保有する既存の光ファイバ等の有効活用を促進するとともに、電気通信事業者のネットワーク構築の柔軟性を図るため、従来の一般利用者を対象とした電気通信役務と異なる専ら電気通信事業者を対象とした電気通信役務(卸電気通信役務)について、事業者間の個別契約に基づく柔軟な提供を可能とするための措置を平成13年中に講ずる。このため、「電気通信事業法等の一部を改正する法律案」を第151回通常国会に提出し、成立した。

イ 接続ルールの整備
 競争事業者が自社の伝送装置を東・西NTTの光ファイバ設備と公正な条件により接続して提供できるようにすることによって、光ファイバ設備を用いた高速のインターネットサービスが円滑に提供されることを可能とするために、光ファイバの端末系伝送路設備、中継伝送路設備について、伝送装置を介さないアンバンドルされた形態での接続を東・西NTTに義務付けることとして、平成13年4月に関係省令が改正・施行された。

ウ 線路敷設の円滑化
 線路敷設の円滑化については、IT戦略会議・IT戦略本部合同会議において、「日本型IT社会」の最も基本的な社会的基盤である超高速インターネットの整備に不可欠な光ファイバ網の整備を推進するため、線路敷設の円滑化の方針が取りまとめられた。また、平成12年12月の電気通信審議会の「IT革命を推進するための電気通信事業における競争政策の在り方についての第一次答申」においても、同旨の提案がなされている。これらに基づいて、以下の措置を講じる(一部実施済)。
(1)電柱・管路等の貸与申込・貸与拒否等の手続を定めたガイドラインを、関係省庁との協議、情報通信審議会への諮問及びパブリック・コメントを経た上で作成し、平成13年4月から運用を開始している。
(2)ガイドラインの適用等について紛争が発生した場合には、公有地上も含め土地に定着する電柱・管路等について、電気通信事業法に基づいて新設される電気通信事業紛争処理委員会の審議を経た上で総務大臣が協議の認可・裁定を行うことができるよう平成13年中に措置する。このため、「電気通信事業法等の一部を改正する法律案」を第151回通常国会に提出し、成立した。

エ 加入者系光ファイバ網及び広帯域加入者網の整備推進

(a)特別融資制度(超低利融資制度)
 光ファイバ網は、従前、平成22年(2010年)の全国整備を目指していたが、平成10年11月に改定された「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」等において、平成17年(2005年)への前倒しに向けて、できるだけ早期に実現できるよう努力する旨が政府決定された。
 総務省では、平成7年度より、中継系に比べて整備が遅れている加入者系光ファイバ網について、事業者の投資負担を軽減するため、「加入者系光ファイバ網整備特別融資制度」を創設し、支援を行ってきている。これは、日本政策投資銀行等から加入者系光ファイバ網を整備のため低利融資(NTT-C`)を受ける事業者に対し、通信・放送機構に設けた基金から利子助成(NTT-C`金利と下限金利(当初5年間2%、6年目以降2.5%)との差)を行うものである。
 平成13年度には、本特別融資制度の対象設備として、従来の加入者系光ファイバ網関連施設に加え、広帯域加入者網(DSL(デジタル加入者線)、ケーブルインターネット、FWA(加入者系無線アクセスシステム))関連施設を新たに追加するとともに、こうしたネットワークの整備が遅れがちな地方を中心としてより強力な支援を講じ、全国均衡のとれた整備を促進するため、過疎地域等については、特別融資に係る下限金利の引き下げ(当初5年間1.6%、6年目以降2.1%)を行う措置を講じている。

(b)デジタル加入者線導入促進基盤整備事業
 高速の加入者アクセス網を早急に整備するため、平成12年度補正予算において、高速インターネット接続を可能とするDSLサービスに必要な設備を整備する事業者に対し所要経費の一部を補助するデジタル加入者線導入促進基盤整備事業を実施した。同事業は、一般会計から公益法人((財)電気通信振興会)に補助金を交付し、当該公益法人がDSL技術を活用した通信サービスを実施するために必要な設備を整備する事業者に対して補助金を交付するもので、補助率は、DSLサービスを実施するために必要な施設・設備の取得に要する経費の5分の1以内である。本制度により、42事業者計34万4千回線のDSL回線導入事業に対し交付決定を行った。
 
(c)新世代通信網促進税制の拡充・延長等
 光ファイバ網をはじめとする新世代通信網の構築のためには、多年にわたり多額な設備投資が必要であることから、民間事業者の投資負担軽減を図ることを目的として、平成3年度に国税(法人税)、4年度に地方税(固定資産税)の特例措置が創設され、支援が行われている。平成13年度には、適用期間が2年間延長されるとともに、対象設備として波長分割多重化装置(WDM)の追加が行われた。地方税として取得後5年分につき課税標準を3/4に軽減することにしている。
 
(d)広帯域加入者網普及促進税制の創設
 DSLをはじめとする広帯域加入者網の構築のためには、多年にわたり多額な設備投資が必要であることから、民間事業者の投資負担軽減を図ることを目的として、平成13年度から、新たに、DSL(デジタル加入者線)、ケーブルインターネット、FWA(加入者系無線アクセスシステム)に係る設備の特別償却制度等が創設された。
 
オ 電力線搬送通信設備に使用する周波数帯域の拡大
 平成14年度(2002年度)までに電力線搬送通信設備に使用する周波数帯の拡大(2MHz〜30MHzを追加)について、放送その他の無線業務への影響について調査を行い、その帯域の利用について検討し、結論を得ることとしている。
 
カ 電波資源の迅速かつ透明な割当
(1)総務省では、地域電気通信市場の競争を促進するとともに、大容量の情報通信を無線により可能とする準ミリ波・ミリ波帯の周波数を利用した加入者系無線アクセスシステムについて、平成10年12月にその導入に関する基本的方針等を公表し、その需要の増大に併せ、使用可能な周波数帯を拡張するよう努めてきたところである。平成13年5月より、26GHzについて、FWA用として720MHzの新たな割当が実施された。
(2)マイクロ波帯の移動通信への利用の進展にともなう将来の移動通信システムの周波数の確保、無線アクセスシステムへの周波数割当の拡充等新たな周波数需要が増える一方で、固定通信用として、より高い周波数帯の利用あるいは光ファイバの利用が進展しつつあるなど、マイクロ波帯無線システムを取り巻く環境が変化しつつある状況から、マイクロ波帯を利用する固定通信用周波数割当の見直しを行い、その一層の有効利用を図る必要がある。総務省では、平成12年11月に固定通信システムによるマイクロ波帯の利用に関する調査研究会を設置し、現在の利用者、今後の利用を希望する者等から広く意見を聴取することにより、同周波数帯の利用の現状、今後の需要等について、平成13年6月までに取りまとめることとし、調査検討が進められた。その結果を踏まえて、第4世代移動通信システム等の新たなシステムへの迅速な周波数割当に資するよう、平成14年度中に同周波数帯に係る周波数割当計画の変更を行うこととしている。
(3)諸外国で行われているオークション方式など周波数割当の実施状況を調査し比較検討を行い、我が国における最適な周波数割当方式を、公平性、透明性、迅速性の確保、周波数の有効利用の確保等の様々な観点から検討し、平成17年度(2005年度)までに結論を得ることとしている。

(iii)高速インターネットの地理的格差の是正
 総務省では、地域における高度な情報通信ネットワーク整備に対する支援を通じ、地域における情報化の促進を図ることにより、地域間の情報格差の解消に向けた以下の取組を行っている。

ア 地域インターネット導入促進基盤整備事業
 地域間のデジタル情報格差の解消を図ることを目的として、平成13年度より地域・生活情報通信基盤高度化事業の一環として、地域住民にインターネットを活用した双方向の行政サービスを提供するため公共施設にインターネットを導入する市町村(沖縄県の市町村、過疎、離島、半島、山村に該当する市町村、高齢者比率が全国平均を上回る市町村)に対し、補助金により支援を行っている。

イ 地域イントラネット基盤整備事業
 地域の教育、行政、福祉、医療、防災等の高度化を図り、地域の活性化に資することを目的として、平成11年度より、地域・生活情報通信基盤高度化事業の一環として、インターネット技術を活用した地域の高速LAN(地域イントラネット)の整備に取り組む地方公共団体等を補助金により支援している。平成13年3月現在、263件(15県233市区町村1広域連合)の事業を採択した。

ウ 広域的地域情報通信ネットワーク基盤整備事業
 地域の広域行政のニーズに対応するため、複数の地方公共団体が連携して行う広域的な情報通信ネットワークの整備を促進することを目的として、平成12年度より、複数の地方公共団体の連携主体に対して補助金により支援を行い、地域における公共サービスの情報化を推進している。平成13年3月現在15地域(3県98市町村2広域連合4一部事務組合)の事業を採択した。

エ 光ファイバ網、DSL等の整備
((ii)エ 加入者系光ファイバ網及び広域帯加入者網の整備推進参照)

(iv)研究開発
 現在のインターネットの1万倍の処理速度と3万倍の接続規模を有し、利用者を目的の情報に安全かつ的確に導くスーパーインターネットの実現に向けて、情報通信分野において世界最高水準の技術力を有するため、総務省では伝送速度の高度化、インターネット基盤技術の高度化、移動通信技術の高度化という観点から戦略的に研究開発を推進している。

ア 伝送速度の高速化

(a)超高速フォトニック・ネットワーク技術に関する研究開発(第3章第5節7参照)
 幹線系・アクセス系のネットワークのみならずインターネットの端から端までの全ての情報伝送処理を光領域で高品質・効率的に行う技術について研究開発を推進し、以下の実現に向けて取り組む。
・光多重化技術について、平成17年(2005年)までに光ファイバ1芯あたり1000波の多重化が可能となるようWDM技術の高度化に取り組む。
・光ノード技術について、平成17年(2005年)までに10Tbpsの光ルーターを実用化する。
・光ネットワーク技術について、平成17年(2005年)までに電気信号変換することなく光ネットワークを制御・管理する技術を実用化する。
・平成17年(2005年)までにペタビット級ネットワーク通信の基礎技術を確立し、2010年頃を目処に実用化を図る。

(b)スペース・インターネット技術の研究開発
 広域性、同報性、耐災害性等といった特徴を有する衛星通信システムを積極的に活用して、地上のネットワークと相互補完した、超高速インターネットのネットワークを構築するための技術の研究開発を文部科学省と連携して実施する。
 衛星による情報の経路選択を可能とし、地球を取り巻く宇宙空間にインターネットを張り巡らせるため、衛星搭載が可能なルータ等の研究開発、スペース・インターネットに最適な伝送方式の研究開発等を行い、平成17年(2005年)までに超高速インターネット衛星を打ち上げて実証実験を行い、平成22年(2010年)を目途に実用化する。

イ インターネット基盤技術の高度化
 5年以内の実現が目標とされている、超高速アクセスが可能な世界最高水準のインターネットの基盤となる技術について、基礎段階から実用段階まで総合的な技術開発を推進するために、以下の研究開発等を実施する。

(a)情報家電インターネットに関する研究開発
 平成11年5月の電気通信審議会中間答申における提言を踏まえ、平成12年度より、情報家電とインターネットの活用により、多様なコンテンツの円滑な流通を実現するシステムを構築する技術の開発を実施している。例えば、ネットワーク側の制御による情報家電へのマルチキャスト機能の付加や、IPv6に標準装備されるセキュリティ機能等、単なるアドレス空間の拡大を超えた新たな機能を活用し、より高度・高信頼な情報家電を実現するための研究開発を行う。

(b)スーパーインターネットに関する研究開発
 平成11年5月の電気通信審議会中間答申における提言を踏まえ、平成12年度より、高密度環境におけるネットワーク技術の開発、ネットワークによる自動認識技術の開発を実施している。具体的には、特定のアクセス・ポイント(電話局や基地局)にアクセスすることなく、携帯端末等がその場の環境に応じて自動的・自律的に周囲の機器とネットワークやサービスを構成し、通信を可能とする技術の開発、増加を続けるインターネット接続機器をネットワーク上で正確に認識するための基本ソフトウェア技術や、これらの機器間の通信を的確に制御するための技術など、膨大な数の機器を様々なネットワークに接続することを可能とする技術の開発を実施する。

(c)通信・放送融合技術の開発の促進
 通信と放送の相違を利用者が意識せずに簡便かつ安全に情報の送受を行うことを可能とするため、平成13年度に総務省が通信・放送機構に出捐し、通信・放送機構が基盤的電気通信システムの機能とその有効性を実証するテストベッド「通信・放送融合技術開発システム」を構築することにより、地方公共団体における公共システムの開発や民間企業等による通信・放送融合等の先導的な情報通信サービスの開発を促進する。
 また、通信と放送のそれぞれ独自の利点である双方向性と多数への同報性とを組合せた先行的なサービスの提供を可能とし、通信・放送融合の便益の利用者への早期還元を図るため、通信・放送融合技術の開発者に対する助成金制度を設け、サービスの基盤となる電気通信システムやこれに係るソフトウェア等が実利用に耐えうるようその開発を促進する。
 なお、これらの業務については、通信・放送融合技術を用いて提供される電気通信サービスの普及を図るため、「通信・放送融合技術の開発の促進に関する法律」を第151回通常国会に提出・成立し、通信・放送機構の業務の特例として追加することとしているところである。

(d)創造的情報通信システムの研究開発
 通信・放送分野のこれまでの技術開発成果である基礎的な要素技術を組み合わせ、インターネットやデジタル放送上におけるコンテンツのより一層円滑な流通を推進するためのより高度な電気通信システムの研究開発を実施する。本研究は、通信・放送機構が、教育・交通・福祉等国民生活に身近なサービス向上に資する高度なシステムや放送番組をはじめとするコンテンツの円滑な流通を促進する高度なシステムの基盤となる汎用的なシステム構築技術、電子書籍・デジタル音楽・ストリーミング・ビデオ等インターネットに適したコンテンツを適切な課金処理の下で利用者に短時間で品質を保ってインターネット上を流通させるためのシステム開発等について、委託方式によって研究開発を実施することを内容としている。

ウ 移動通信技術の高度化

(a)ITS実現のための情報通信技術の研究開発(第3章第5節11参照)
 平成11年2月のITSにおける情報通信システムの在り方に関する電気通信技術審議会答申において、総合的に取り組むべきITS研究開発課題の一つとして「ITS情報通信システムプラットフォーム(情報通信基盤)技術の実現」が示された。これを受けて、横須賀市にITSリサーチセンターを設置し、交通情報、地図情報、車両位置管理情報等の様々なITS関連情報を有機的に統合するとともに、最先端の高速無線ネットワーク環境と連携し、ITSにおける高速インターネットの実現(車の動くオフィス化)を図るための研究開発を実施している。
 平成17年度(2005年度)までに、高速移動する車から映像情報を含めた様々な情報を円滑に提供、享受するシステムを実現する予定である。

(b)第4世代移動通信システム実現のための研究開発
 我が国主導のモバイルITの幹となる移動通信システムであり、IMT-2000(第3世代移動通信システム)の次の世代の移動通信システムである第4世代移動通信システムを実現し、世界最先端のモバイルIT環境を実現するため、平成17年(2005年)までにソフトウェア無線技術(周波数や通信方式等をソフトウェアによって柔軟な変更を可能とする技術)、高速変復調技術(高品質で高速な信号の伝送を行うこと等を可能とする技術)、広帯域アクセス技術(効率的に基地局と端末とを接続すること等を可能とする技術)等の要素技術を確立するための研究開発の支援、促進を行い、平成22年(2010年)までに実現を図る。

(c)マルチメディア無線通信ネットワークの研究開発
 多様なマルチメディア情報を統合し、地上における無線通信により誰でも容易にかつ効率的に伝送できるようにするためのミリ波帯無線通信技術、異なる種類の無線通信システムの間を選択・切替えて利用できる技術、超高速伝送光無線通信技術を平成13年度から5か年計画で開発し、平成17年(2005年)までに実用化を図る。
 また、全国どこでも超高速インターネットやマルチメディア移動通信を可能とする成層圏無線プラットフォームの研究開発を推進しており、平成17年(2005年)に技術実証実験を行い、技術の確立を図る。

(v)国際インターネット網の整備

ア アジアにおける高度なIT利用の促進のための研究
 平成13年度から、アジア地域の特性(多言語環境等)に配慮し、ネットワーク上で大容量の映像コンテンツが安全、容易に取引できるような技術の開発を目的とした国際ネットワーク接続実験を実施する。本施策は、九州・沖縄サミットで採択されたIT憲章を踏まえたものであり、日本と外国にある劇場や音楽ホール等を広帯域ネットワークで結び、4年間にわたり、リアルタイム(又はオンデマンド)で高品位の映像を配信する技術、国際間ネットワークに関する品質保証技術等の開発及び検証を行う。

イ 国際標準に向けた研究活動の推進
 平成10年度より、情報通信分野における国際標準の実現に必要不可欠な技術の研究開発を推進するため、研究成果の国際電気通信連合(ITU)等の国際標準化機関への提案等国際標準化活動への貢献を条件とした公募を行う「国際標準実現型研究開発推進制度」を設置するなど、IETF、ICANNなどの民間標準化団体、ITU等における我が国及びアジア・太平洋地域による標準提案の推進を図っており、平成15年度(2003年度)までに10件程度の標準提案を行う。

ウ 沖縄の国際情報通信ハブ化(第3章第7節3(2)参照)
 アジア・太平洋地域の情報通信拠点形成に向けたグローバルなIXの形成、地域情報通信ネットワークの高度化、国内外の情報通信関連企業、研究機関等の誘致促進・集積・育成、国内外のコンテンツ・アプリケーションの集積、情報通信技術等に明るい人材の早期・大量育成の5つの推進方策を多面的かつ重層的に展開し、平成17年度(2005年度)までに高度な地域情報通信ネットワークを整備するなど沖縄国際情報特区構想を推進し、平成22年度(2010年度)までに沖縄における情報通信ハブ等を実現する。

2)放送のデジタル化(第3章第3節4(1)第3章第3節4(4)第3章第4節1参照)
 関東、近畿、中京の三大広域圏では、平成15年末(2003年末)、その他の地域では平成18年末(2006年末)までに地上デジタル放送を開始するため、地上放送のデジタル化にともなうアナログ周波数変更対策を講ずるとともに、地上デジタル放送設備投資に係る負担を軽減するため、地上放送を行うための施設(デジタル番組制作設備等)の整備について、平成11年度から税制・金融上の支援措置が実施されている。
 ケーブルテレビについては、平成22年(2010年)までに全てデジタル化されるよう、デジタル化に係る負担を軽減するため、デジタル放送を送信するための施設(光ファイバ、デジタル送信用光伝送装置等)の整備について平成13年度において、税制・金融上の支援措置の拡充等が行われた。

3)通信と放送の融合に対応した制度の整備

(i)電気通信役務利用放送法
 通信と放送の伝送路の融合の進展に対応し、CSデジタル放送及び有線テレビジョン放送の設備利用の規制緩和を行うため、電気通信役務を利用して放送を行うことを制度化するために電気通信役務利用放送法が第151回通常国会に提出された。

ア CSデジタル放送の規制緩和
 これまで受委託放送制度により、衛星中継器を通信用・放送用に分離し、放送用の周波数(中継器)を国が指定し、放送用周波数の枠内で認定し、参入希望が枠を越える場合には、比較審査が行われ、外資規制もあった。新制度により、衛星事業者が需要に応じて通信用・放送用に柔軟に設備を提供できることとなり、一定の適格性があれば全て登録することとなった。これにより比較審査も外資規制も撤廃された。

イ 有線テレビジョン放送の規制緩和
 これまで通信事業者の設備を利用する場合にも、あらためて有線テレビジョン放送の許可が必要としたが、新制度では、有線テレビジョン放送法の許可を不要とし、一定の適格性があれば全て登録することとなった。

(ii)通信・放送融合技術の開発の促進に関する法律
 情報通信利用者の多種多様なニーズに的確に応え、情報通信の利便の向上を図るため、通信・放送融合技術を用いて提供される電気通信の役務の普及を図ることを目的として、通信・放送機構に特例業務として、通信・放送融合技術の開発を行う者に対する助成金を交付すること、及び通信・放送融合技術の開発に必要な電気通信システムを整備して当該技術の開発を行う者の共用に供することを行わせることを制度化するために「通信・放送融合技術の開発の促進に関する法律案」が第151回通常国会に提出し、成立した。

4)地理的情報格差の是正等

(i)ユニバーサルサービスの提供の確保
 現在、ユニバーサルサービス(具体的には、加入電話、公衆電話及び緊急通報が該当。)は、東・西NTTによりNTT法の責務に基づき提供されており、その費用は東・西NTT各社の内部において、採算地域から不採算地域への地域間の費用補填により賄われてきている。しかし、地域通信市場、とりわけ都市部等の採算地域において電気通信事業者間の競争が急速に進展している中、採算地域においてユニバーサルサービスの提供に係る費用の地域間補填のための原資を確保することが困難となってきており、東・西NTT各社内における地域間補填だけではユニバーサルサービスを引き続き確保していくことが困難となってきている。
 そこで、ユニバーサルサービスの提供を確保するための新しい枠組みとして、東・西NTT等各社内における地域間補填に加え、他の電気通信事業者が応分の費用負担を行うとともに、他の電気通信事業者も基礎的電気通信役務を提供する事業者(適格電気通信事業者)として交付金の交付を受けることを可能とする制度を平成13年中に設ける。このため、「電気通信事業法等の一部を改正する法律案」を第151回通常国会に提出し、成立した。

(ii)移動通信用鉄塔施設の整備(第3章第3節2(1)参照)
 携帯電話の利用可能な地域を拡大し、地域間の情報通信格差是正を図るため、過疎地等において市町村が移動通信用鉄塔施設を整備する場合に、国がその設置経費の一部を補助する移動通信用鉄塔施設整備事業を実施しており、平成15年度(2003年度)までに市町村役場及びその支所等が移動通信サービスエリアとしてカバーされている市町村割合を95%以上とすることを目標としている。



(注)総務省では、平成13年5月8日に、NTTに対して、電気通信市場の競争促進のための自主的な実施計画を速やかに作成・公表することを期待するとともに、その実施状況について報告されたい旨文書で要請を行った。

 


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