平成13年版 情報通信白書

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第1章 特集 加速するIT革命

4 電子商取引(中間財)市場

平成17年(2005年)には約100兆円市場にまで拡大

 従来、紙でやりとりをしていた受発注を電子化することにより、取引企業間での受発注の効率化を図ることを目的としてインターネット、とりわけエクストラネットを用いた企業間の中間財(原材料等)の取引が広く行われ始めている。また、複数の売り手企業と複数の買い手企業との間で行われるインターネット上の電子商取引の場であるe-マーケットプレイスが登場し、調達手段の多様化が進んでいる。

1)市場規模
 「ITが産業に与える影響に関する調査」によると、平成12年の我が国における電子商取引(中間財)市場の市場規模は、38.1兆円と前年の2.5倍以上にまで拡大しており、平成17年(2005年)には98.9兆円に達すると予測される(注1)(資料2参照)。また、電子商取引(中間財)の新しい取引形態として注目されているe-マーケットプレイス市場は、市場が立ち上がり始めたばかりであり、平成12年では800億円に過ぎないが、平成17年(2005年)には16兆円にまで成長するものと予測される(図表1))(注2)。さらに、電子商取引(中間財)市場を業種別に見ると、平成12年は電機・自動車の2業種で市場規模全体の8割近くが占められているのに対し、平成17年(2005年)には6割程度にまでその比率が低下すると予測されている(図表2))。我が国における電子商取引(中間財)市場の成長は、規格化された部品が多く、組立メーカーと部品メーカーとの間で固定化された安定的な取引関係が形成されており、さらに他の業種に先駆けてEDIの構築が進んでいた電機業界・自動車業界を中心に、既存のシステムインフラのインターネット対応を図る形で進んできた。しかし、これらの業種においては、既におおむねインターネット対応が完了しつつあるため、今後は他の業種における電子商取引(中間財)活用が広がり、市場規模の拡大を牽引していくものと予想される。

2)e-マーケットプレイス
 平成12年における我が国のe-マーケットプレイス市場は、企業の関心の高まりを受け、様々な業界においてサービスが開始されており、また新規設立の表明も相次いで行われている(図表3))。今後も引き続き、数多くのe-マーケットプレイス設立が計画されており、市場間の競争はますます激化すると考えられる。そのような中、e-マーケットプレイスは競争力を高めるため、単に取引の場を提供するだけではなく、より高付加価値のサービス提供を模索している。また、e-マーケットプレイス同士を接続し、それぞれに参加する企業間での取引を可能とする市場間接続も始まりつつある。e-マーケットプレイスの高付加価値サービスの提供は、企業のe-マーケットプレイス利用を促進し、今後新しい市場の拡大に大きく貢献するものであると考えられる。

■事例:e-マーケットプレイス − ワイズシステム
 農産物等のe-マーケットプレイスを構築・運営するワイズシステムは、花きのe-マーケットプレイス「フラワーワイズ」を、2年間の試験運転期間を経て、平成12年6月より広域的に展開している。このサービスを利用することで、会員は24時間いつでも複数の会員とインターネット上で取引ができ、販路や仕入先を飛躍的に拡大することが可能となる。また、既存の卸売市場取引と比較して、1)卸売市場への移動、2)数時間に及ぶセリへの参加、3)購入商品の店舗への運搬、という一連の業務を省略することによるコスト削減効果などが見込める。現在フラワーワイズでは、約300社がおよそ8,000種類の花をインターネット上で売買しており、年間取引額は既に10数億円程度にまで達している。
 また、フラワーワイズでは単にインターネット上で取引の場を提供するにとどまらず、現場の視点から効率的な流通の仕組を構築するなど、より効果的・機能的なe-マーケットプレイスとして稼動するよう取引の流れ全体を設計している。流通の仕組についてみると、従来の花き業界では、取引の90%が集中する卸売市場において取引と同時に一旦商品の受渡しを行い、取引成立後に卸売市場から買い手の店舗へ商品を再度発送するという取引形態(商物一体)がとられていた。しかし、この形態では、取引の成立が容易である反面、商品の流れという観点では、輸送に長時間を要するため商品が劣化するという問題が生じていた。そこでフラワーワイズでは、取引をインターネット上で行う一方、商品は買い手へ直接配送するという、売買取引と商品の受渡しの場所を分離した流通の仕組(商物分離)を構築し、品質を低下させることなく低コスト・短時間での取引を実現している。その他、e-マーケットプレイスにおける商品の取引情報等を集積し、会員に対する市況情報の提供や、成約情報の集統計等、会員のマーケティング活動をサポートする体制の整備も進めている(図表4))。

図表1) 電子商取引(中間財市場)の市場規模
電子商取引(中間財市場)の市場規模
図表2) 電子商取引(中間財市場)の業種別構成比の推移
電子商取引(中間財市場)の業種別構成比の推移
図表3) 平成12年に設立されたe-マーケットプレイスの例
図表4) フラワーワイズのサービス概要
フラワーワイズのサービス概要


(注1)我が国の電子商取引(中間財)市場の市場規模推計方法について
 以下の式を仮定し、業種毎に市場規模を推計した。
  電子商取引(中間財)市場=中間財市場規模×インターネットEDI利用率×電子商取引(中間財)利用金額
 なお、各項目の調査手法は以下のとおり。
・中間財市場規模 産業連関表(RAS法により平成12年まで延長推計)
・インターネットEDI利用率 「通信利用動向調査(企業編)」(総務省)、主要企業ヒアリング
・電子商取引(中間財)利用金額 「インターネット調達等に関するアンケート」(ITが産業に与える影響に関する調査)、主要企業ヒアリング
 また、平成17年(2005年)の推計においては、「インターネットEDIの利用意向がある」企業が5年間の間に全て「インターネットEDIを利用する」と仮定し、上記と同様の手法で市場規模を推計した。
(注2)我が国のe-マーケットプレイス市場の市場規模推計方法について
 以下の式を仮定し、市場規模を推計した。
 e-マーケットプレイス市場=中間財市場規模×e-マーケットプレイス利用率×e-マーケットプレイス利用金額
 なお、各項目の調査手法は以下のとおり。
・中間財市場規模 産業連関表(RAS法により平成12年まで延長推計)
・e-マーケットプレイス利用率 「インターネット調達等に関するアンケート」(ITが産業に与える影響に関する調査)
・e-マーケットプレイス利用金額 「インターネット調達等に関するアンケート」(ITが産業に与える影響に関する調査)
 また、平成17年(2005年)の推計においては、「e-マーケットプレイスの利用意向がある」企業が5年間の間に全て「e-マーケットプレイスを利用する」と仮定し、上記と同様の手法で市場規模を推計した。

 


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