平成13年版 情報通信白書

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第1章 特集 「加速するIT革命」〜ブロードバンドがもたらすITルネッサンス〜

はじめに

I 進むIT社会の構築

 近年目覚しい発展を遂げているIT(情報通信技術)革命については、平成12年から13年にかけて社会的関心が大きな高まりをみせ、政府においてもIT革命の推進を重要な戦略課題として明確に位置付けている。具体的には、昨年7月以降矢継ぎ早に対策を進めた結果、「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」の制定(本年1月施行)、高度情報通信ネットワーク社会推進本部(以下「IT戦略本部」という。)の設置(平成13年1月)、5年以内に世界最先端のIT国家となることを目指す「e-Japan戦略」(平成13年1月IT戦略本部決定)及び「e-Japan重点計画」(平成13年3月IT戦略本部決定)の策定、さらに同戦略等を各府省の平成14年度の施策に反映する年次プログラムである「e-Japan2002プログラム」の策定の検討など、IT革命の戦略的推進体制が整えられたところである。
 その過程で、IT革命が、18世紀に英国で始まった産業革命に匹敵する歴史的大転換を社会にもたらすとの認識は、我が国においてもほぼ定着したものと思われる。ITは、まさしく新世紀の発展基盤として、経済的側面では経済構造改革の実現や産業活動の効率化を促進するとともに、国民生活の側面では多様なライフスタイルの実現や利便性の向上をもたらす鍵として、我が国社会全体から強い期待が示されている。情報と知識が付加価値の源泉となる社会、「高度情報通信ネットワーク社会」への移行が現実のものとなりつつある。
 このような状況のもと、今回の白書が対象としている平成12年から平成13年初旬にかけてのITの特徴は、一言でいえば、光ファイバ網等への支援や競争促進の環境整備等によりもたらされた、DSL(Digital Subscriber Line:デジタル加入者線)やケーブルインターネットの急速な普及、常時接続サービスの普及・低廉化に象徴される本格的なブロードバンド時代の到来であり、まさしく「ブロードバンド元年」と位置付けられる。
 インターネットは、我が国においても既に90年代前半から一部で普及が始まっていたが、この段階ではデータの伝送速度の遅さや従量制の料金といった事情もあり、流通する情報はテキスト情報が中心であり、また利用方法としても、電子メール交換や情報検索が主であった。また、利用者は必要なときにインターネット接続サービス事業者にダイヤルアップ接続し、料金を気にしながらインターネットを利用するという状態が最近まで続いてきた。
 しかし、ブロードバンド時代において、国民の誰もが、1)どんな情報でも短時間で送受信が可能となり(例えば100MbpsのFTTH(Fiber To The Home)の場合、2時間の映画を5分で伝送可能)、2)ネットワークに常時接続、3)パソコンだけではなく、携帯電話や情報家電などさまざまな機器を用いて、多様な生活場面でインターネット活用が可能となる状況が現実のものとなりつつあり、インターネット利用に本質的な変化をもたらしつつある。流通する情報の大容量化が進み、全ての「情報」がネットワーク流通の対象となる。また、味覚や嗅覚、触覚といったこれまでネットワークで流通する情報の範囲外であったものも、ネットワーク上の流通の対象とする研究も進みつつある。全ての人々が、あらゆる場面でその「情報」を活用する時代の到来である。
 こうしたブロードバンド・インターネットの個人レベルへの浸透により、いわば人間は「無限の情報空間」を自由に活用することが可能になる。これは、先に述べた企業活動の効率化や多様なライフスタイルの実現といった「変化」にとどまらず、個人の知的活動の飛躍的な向上をもたらし、国境を越えた地球規模での文化的「変革」にまで達するポテンシャルを秘めている。その意味で、ブロードバンド・インターネットはちょうど、中世イタリアに端を発した「ルネッサンス」が、個人の思想活動の活性化をもたらし、「暗黒の中世」から人間中心の近代文化への転換を実現したことにも対比できるものと考える。
 このような観点から、新世紀の幕開けとなる今回の白書の特集のテーマを、「加速するIT革命〜ブロードバンドがもたらすITルネッサンス〜」と題し、ITの我が国社会経済への浸透状況を示すとともに、インターネットのブロードバンド化の進展及びそれがもたらすコンテンツの利用動向の変貌について焦点をあて、分析したところである。
 最後に、米国経済において、昨年インターネット関連株の大幅な下落などいわゆる「ネットバブル」が崩壊し、それを受けて一部IT革命の効果に対する懐疑的な議論もなされているが、IT革命の本質は、IT関連企業の業績向上や株高等にとどまるものではなく、先に述べたような、より根本的・本質的なものであることをここで改めて強調しておきたい。

 


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