平成13年版 情報通信白書

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第1章 特集 加速するIT革命

3 バックボーン回線の高速化

ブロードバンド時代の到来に備えたバックボーン回線の整備

 インターネット利用者の急速な拡大や、ブロードバンド・アクセス・ネットワークの普及にともなう動画像や音楽等大容量コンテンツの流通量増加により、インターネット上の大幅なトラヒックの増加が予想され、インターネットのバックボーン回線についても対応が求められている。
 インターネットのバックボーン回線は、電気通信事業者が構築したIP網により構成されている(図表1))。そのため、インターネットのトラヒック増加への対応としては、ISPによるバックボーン回線の高速化とIX(インターネット・エクスチェンジ)の増強を進める必要がある。

1)インターネット接続サービス事業者による回線増強
 バックボーン回線は、ISPの相互接続点であるIXから放射状に構築されている。そのため、IXでのトラヒックの増加傾向の推移をみると、インターネット上でのトラヒックの傾向が分かる。我が国の主要なIXにおける近年のトラヒック量の推移をみると、急激な増加傾向を確認でき、平成12年末の時点でピーク時には3Gbpsを超えている(図表2))。
 このようなトラヒックの増加にともない、ISP各社も保有するバックボーン回線の増設の必要に迫られており、図表3)にみられるように、ISPが独自に海外へ接続している回線容量や、ISPからIXに接続されている回線容量は急速に増設されているところである。
 しかし、現状のバックボーン構成のまま、今後FTTH、ケーブルインターネット、DSL及びFWAが普及し、2004年末にこれらの加入世帯合計が2,100万世帯を超えた場合、例えばNSPIXP2について計算すると、そのトラヒック負荷は1.8Tbps程度まで増加するものと推測される(注)。さらに、今後、IPv6の普及によって家庭の情報家電等がネットワークにつながることになれば、1.8Tbpsをはるかに超える負荷が発生することも予想される。
 この状態を回避するためには、バックボーン回線の高速化とトラヒックの抑制が求められるが、その際には、バックボーンを構成する高速専用線等の料金の低廉化を進めるとともに、ブロードバンド化等にともなうトラヒック構造の変化に対応した、IX等のトラヒックの交換点の分散化を促進する必要がある。

2)基幹網の高速化
 ネットワークの発展にともない、第一種電気通信事業者が保有する物理的な基幹網についても増強が図られている(図表4))。また、国内網の整備のほか、グローバルなネットワークであるインターネットのバックボーンとなる、国外網についても整備が進んでおり、アジア各国を結ぶ国際海底ケーブルの整備と、それらの対米国網への接続などが計画され、さらに平成14年に向けて最大規模の日米網であるAANの整備も予定されている(図表5))。
 また、新たな回線設備を増設するだけではなく、既存のケーブル設備の利用効率を向上させ、伝送速度を向上するための技術導入も進んでいる。WDM(Wavelength Division Multiplexing:波長分割多重)技術は、光ファイバ内に複数の波長の光信号を多重伝送する技術であり、これによって回線容量が現状の数倍から百数十倍へと向上する(図表6))。我が国では、NTTコミュニケーションズ、KDDI、日本テレコム、クロスウェイブコミュニケーション等の長距離系事業者が既に幹線に導入しているほか、EACやAPCN2といった海底ケーブルでは、当初よりWDM技術の導入を視野に入れた構築が進められている。

図表1) バックボーン回線の構成
バックボーン回線の構成(概念図)
図表2) 我が国の主要なIXにおける近年のトラヒック量の推移
我が国の主要なIXにおける近年のトラヒック量の推移
図表3) インターネット接続サービス提供者による回線増強
インターネット接続サービス提供者による回線増強状況の推移
図表4) 日本国内における基幹網
日本国内における基幹網
図表5) 日本周辺の国際海底ケーブル(平成13年2月現在)
日本周辺の国際海底ケーブル(平成13年2月現在)
図表6) WDM技術のイメージ
WDM技術のイメージ


(注)ケーブルインターネット及びDSLの利用者数合計(平成11年3月から12年12月までの3か月ごとデータ、総務省資料)をもとに、今後のFTTH、FWAの利用者を加えると、これらの回線契約者数はおよそ2,100万契約になると推計される。そこで、NSPIXP2のトラヒック量の伸びについて、時間軸による伸びと、このケーブルインターネット及びDSLの伸びを説明変数とした重回帰分析により推計すると、平成17年(2005年)初頭に1.8Tbps程度のトラヒック量に達すると推計される。しかし、本推計は現状をもとに延長したものであり、FTTHの登場によるトラヒック量の増加や、IXの分散化による集中回避により、今後変動する可能性がある(三菱総合研究所委託調査による推計)。

 


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