平成13年版 情報通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く目次の階層をすべて閉じる

第3章 情報通信政策の動向

4 電波利用環境の整備

電波の三次元可視化技術の研究開発の開始

 総務省では、健全な電波利用環境を維持するため、不要電波問題、電波の人体に与える影響等の問題、不法・違法無線局問題等に対応している。

1)不要電波問題対策
 電波利用の拡大、各種電子・電気機器の普及にともない、機器・システムが他の機器・システムから電磁的な妨害を受けることが大きな問題となっている。このため、国際無線障害特別委員会(CISPR)では、各種電子・電気機器に対して妨害波の許容値、イミュニティ(注)の限度値及びそれらの測定法を規定(CISPR規格)しており、各種電子・電気機器の製造の際には、無線障害となりうる電波の発生を抑制するとともに、妨害波の存在下においても性能劣化を起こさないような対策がとられている。総務省では、CISPR規格(CISPR16−2)に準拠した無線妨害波及びイミュニティ測定法の技術的条件について、平成12年9月に電気通信技術審議会から答申を受けた。本答申を参考に、各種電子・電気機器の製造に関する規格の策定又は改定が行われることとなる。
 また、総務省では平成12年度から「電子機器から漏洩する電波の三次元可視化技術の研究開発」を行っている。現在、電子機器から漏洩する電波に対しては、その発生部位や発生状態が把握できないため経験を基にした試行錯誤的な対策がとられている。このような問題を抜本的に解決するために、電子機器から漏洩している電波の状況を三次元の画像として表示することによりその発生状況を把握できる技術(電波カメラ)の研究開発を実施している(図表)。平成12年度は、高精度電波センサーの試作及びホログラムを得るための走査方法の開発に関する従来技術の調査検討等を実施した。平成13年度は、高精度アレイ化センサーの開発、画像処理技術の開発等を実施する予定である。

2)人体電波防護対策
 昨今の携帯電話等の急速な普及にともない、無線設備が生活圏の付近に整備されるようになったことにより、これらの無線設備から発射される電波が人体に好ましくない影響を及ぼすのではないかという懸念が提起されるようになった。このような状況を踏まえ、安全な電波利用の一層の徹底を図るため、平成9年4月に「電波利用における人体防護の在り方」に関する答申を踏まえ、携帯電話端末等の身体に近接して使用される無線機器に適用される電波防護指針(局所吸収指針:比吸収率で規定)が策定され、無線機器の製造等におけるガイドラインとして活用されている。
 他方、携帯電話端末等に対する比吸収率の測定方法については、これまで複数の方法が開発・提案されてきたが、欧米の標準化機関では、局所吸収指針の制度化に使用することを目的とし、比吸収率を統一的に評価するための測定方法について、標準化が進められており、近々完了する見込みである。我が国においても、比吸収率を統一的な方法で測定し評価するための測定方法が求められている。このような状況を踏まえ、安全な電波利用のより一層の徹底を図ることを目的として、局所吸収指針の制度化に向け、電気通信技術審議会へ平成12年5月に「携帯電話端末等に対する比吸収率の測定方法」について諮問し、同年11月に一部答申を受けた。答申では、人体側頭部の側で使用する携帯電話端末等に対する比吸収率の測定方法について統一的な評価方法が提言された。今後、測定方法の適用対象の拡大や国際規格等の整合性等を踏まえつつ、関係省令の一部改正を行う予定である。

3)不法・違法無線局対策
 電波利用の拡大とともに、不適正な利用も増大して電波利用における障害が多発している。このため、不法無線局の探査等を効果的に行うための電波監視システム(DEURAS:Detect Unlicensed Radio Stations)の整備を平成5年度から進めて電波監視活動を強化するとともに、捜査機関との不法無線局の共同取締りを実施している。また、不法・違法無線局の未然防止策として、周知啓発活動の強化や基準不適合設備の製造販売の防止等に取り組んでいる。
 また、衛星通信については、近年、軌道及び周波数の使用状況が高密度化し、混信等の発生が現実化しているため、平成10年度から、宇宙電波監視施設を整備し、静止衛星のL、Ku、Ka帯ダウンリンクの監視を開始し、平成11年度に監視対象とする周波数をS、C帯にも拡張している。

図表 電子機器から漏洩する電波の三次元可視化技術の研究開発
電子機器から漏洩する電波の三次元可視化技術の研究開発


(注)イミュニティ(Immunity):使用している機器や装置あるいはシステムが、外部からの無線妨害波によって、性能が劣化することなく動作することができる能力。

 


(3)電子署名・電子認証 に戻る 5 放送の健全な発展に向けた取組 に進む