平成13年版 情報通信白書

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第1章 特集 加速するIT革命

7 地域生活の情報化

活力ある個性豊かな地域社会の構築に向け情報通信基盤の整備・活用が進展

 現在、我が国の各地域においては、少子・高齢化や過疎化、地域経済の活性化などへの対応が迫られている。一方、高度な情報通信ネットワークの形成やその有効活用が、地域生活においてもかつてない利便性の向上をもたらし、これら地域社会の課題解決に大きく貢献するものと期待されている。
 このような中、今後、活力のある個性豊かな地域社会の構築には、地域における情報通信インフラの整備とその高度利用への取組が不可欠であり、各地域で様々な情報化への取組が進められているところである。

1)地域情報化計画の団体別策定状況
 先ず地方公共団体における地域情報化計画の策定状況をみると、全ての都道府県及び政令指定都市において策定済又は策定中であるのに対し、特別区では69.6%、市町村では21.2%と大きな差が生じている。ただし、市町村では近年、策定数が増加傾向にあり、地域情報化への取組が徐々に進んでいる状況にある(図表1))。
 また都道府県では、平成12年度末時点で、47都道府県中30都道府県が地域情報化計画を改定あるいは新規に策定し直している。それぞれについて改定・新規策定の背景を整理すると「IT革命」を挙げているものが圧倒的に多く90%以上となっており、国のe-Japan戦略を踏まえた地域情報化計画の策定に着手している例もみられる。主な目標では、産業振興、豊かな生活の実現、個性的な(自立した)地域づくりを掲げているところが半数以上であり、整備対象は電子自治体(70%)、高度ネットワークインフラ(60%)が多い。また、パブリックコメントの採用も67%に上っている(図表2))。
 一方、特別区及び市町村の地域情報化計画においては、近年、総合計画等の一部や国の構想に基づくものではなく独自の計画の割合が徐々に高まってきており、地域情報化に当たって市区町村がそれぞれの地域特性を踏まえた個性的な取組を積極的に進めていることが分かる。

2)高度な情報通信インフラの整備推進
 各地方公共団体では、地域情報化計画等に基づき、それぞれの地域社会の発展や課題の解決、地域生活の利便性向上などに向けた取組が進められている。
 岡山県では、平成8年度から岡山情報ハイウェイ構想を推進しており、平成12年度には県庁と県内9か所にある地方振興局間を結ぶ高速大容量(155〜622Mbps)の基幹回線の整備が完了した(図表3))。県自らが敷設した光ファイバ網(総延長約450km)を活用して、福祉・ボランティアの情報ネットや災害・救急医療情報の提供など、各種行政サービスの充実・高度化が進められ、県民生活を向上させるさまざまなサービスに利用されている。現在、市町村では、岡山情報ハイウェイと役場を光ファイバで結び、市町村役場を拠点に地域内の公共機関、学校、公民館等を接続する地域情報網の整備が進められており、平成14年度までに、全市町村が情報ハイウェイと接続される予定である。
 さらに、同県では平成13年2月に「おかやまIT戦略プログラム」を策定しており、情報通信基盤を活かして、今後3年間にわたり、ITを活用した社会・経済活動の活発な展開を目指すこととしている。
 また、岐阜県では、高度情報化による「地域交流の活性化」「福祉社会の実現」「地域産業の振興」を推進するため、公共既設光ファイバの活用と県独自の基幹系光ファイバの整備を行うことにより、「岐阜情報スーパーハイウェイ構想」を推進している。 本構想では、県内全域への光ファイバ網の展開に向け、岐阜市、大垣市、各務原市の各情報拠点地域をつなぐ実験基盤の整備及び実験利用を経て、平成14年度までに155Mbpsの伝送速度を持ち、県内各地の主要公共施設や総合庁舎、大学等を接続する基幹ルート網の構築を完了する見込みである。また、IT拠点機能の充実や企業集積の推進など、既にIT基地インフラとしての整備がなされてきた県南部地域のソフトピアジャパンやテクノプラザは、岐阜情報スーパーハイウェイにより全県域と高速大容量の基幹回線で結ばれることとなり、今後の高度な活用・展開が期待されている。同県では、これらのIT基地インフラでの研究開発やニュービジネス創出、人材育成など、ITコア機能の強化を図るほか、これらの機能の県内全域での展開に向け、各地域におけるIT拠点施設に対して、ソフトピアジャパンの活用による研修活動の充実や相談窓口の設置等の支援を進めることとしている(図表4))。

3)インターネットの有効活用への取組
 地域社会でのインターネットの活用事例としては、地方公共団体の発する行政情報だけでなく、そこに住民や企業等からの情報やアイデアを付け加え、利用者参加型の運営形態へと発展させていくことが考えられる。
 神奈川県藤沢市では、慶應義塾大学等の協力のもと、インターネットを利用した「新しい市民参加システムの構築」と「コミュニティ形成」を目指して、市民公募による運営委員会を中心に「市民電子会議室」が設置されている(図表5))。これはインターネット上において市民が自由にテーマを設定し、会議室を主催できるもので、我が国における先進的な電子会議室システムを最初に開発するなど、草分け的存在となっている。 また、様々なテーマについての市民間の交流・意見交換が、市への提案書提出やイベント等の開催など具体的な動きに結実しているところである。 このほか、同市のホームページには「しみんの広場」コーナーが設けられ、市民等による様々なホームページへのリンク集として、多様な情報へのアクセスが可能となっているなど、情報通信を活用した新しい地域コミュニティ作りが進展しているところである。

図表1) 地方公共団体における地域情報化計画策定状況(策定済及び策定中)
地方公共団体における地域情報化計画策定状況(策定済及び策定中)
図表2) 30都道府県における地域情報化計画の策定概要
30都道府県における地域情報化計画の策定概要
図表3) 岡山情報ハイウェイの展開イメージ
岡山ハイウェイの展開イメージ
図表4) 岐阜情報スーパーハイウェイ構想のイメージ
岐阜情報スーパーハイウェイ構想のイメージ
図表5) 神奈川県藤沢市の「市民電子会議室」のイメージ
神奈川県藤沢市の「市民電子会議室」のイメージ

 


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