平成13年版 情報通信白書

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第1章 特集 加速するIT革命

第6節 電子商取引の円滑な普及・発展【要旨】

 電子商取引の普及に伴うIT関連産業の成長、新規産業創出、取引形態等既存の経済活動の変化は、経済・産業の構造改革を促進し、我が国の経済が新世紀において発展を続けるために重要な要素である。我が国においても、電子商取引は、全般的にみて順調にその市場規模を拡大しつつあるものの、インターネット上の電子商取引の特徴である1)誰もが参加できる、2)民間主導で市場が形成される、3)スピードが速い、4)国境のない市場が形成される等のサイバー空間の特徴を発揮し、複数の販売者・調達者で財・サービスの交換を行うe-マーケットプレイスや、消費者同士の間の取引となるネットオークションなどこれまでにない新たな取引形態を定着させていくことが必要である。

 このような経済のIT化への動きの中、政府はIT革命の阻害要因の見直しを行うため、まず民間での取引等において書面交付等を義務付けている様々な制度について、従来の書面による手続に加えて電子メール等も利用できるようにするための所要の制度整備を行った。さらに、このような行政上の義務付け以外にも、電子契約、情報財契約におけるルールや情報仲介ビジネスに関する責任ルールなど、電子商取引の特質に応じた情報化社会の基本ルール作りについて、関連する法制度の整備等の取組を進めている。

 また、インターネット上での電子商取引等において相手方が本当に本人であることを確認する手段である「電子署名」の法的位置付けや、その電子署名が本人のものであることを証明する「認証業務」に対する国の認定制度を設けるための「電子署名及び認証業務に関する法律」が、平成13年4月1日から施行された。認証業務に関する法的な枠組みの整備により、今後、電子署名・電子認証市場の大きな発展が期待される。このほか、インターネット上での安全・確実な決済方法の確立を図るため、「クレジットカード方式」や「電子マネー」等のインターネット決済手法の開発・普及に向けた各種の取組が進められているところである。

 しかし、近年、インターネット消費者取引に関する苦情やトラブルが大幅に増加し、またインターネット利用者へのアンケート調査では、決済方法への不安感などから電子商取引を行っていない人が4割を超える結果も出ている状況にある。 このような不安感を払拭するため、個人情報漏洩や提供される商品・サービスの品質について、各方面における不安解消の取組が求められる。 また、企業における系列取引や旧来からの商慣行などが電子商取引の弊害になっている実態についても、一般にしばしば指摘されているところであり、生産・流通・消費の全てにわたって、官民における仕組みの見直し、コンセンサスの形成が重要である。

 一方、インターネットにおいて活動する経済主体の飛躍的な拡大にともない、インターネットでの「住所」に該当するドメインネームについて、例えば自らの商標に関連するドメインネームを第三者に取得され、多額の費用による「買戻し」を要求されるといった紛争事例が引き続き増加していくことが予想される。このような紛争を適切に処理するための体制整備が必要であるとともに、「インターネット・ガバナンス(統治)」の重要性の高まりを踏まえ、ICANNにおける議論への参画など、引き続き我が国のプレゼンスによる一層の貢献を図っていくことが重要である。

 今後、電子商取引を更に普及・発展させていくためには、従来の実社会における取引にはないインターネット上での電子商取引の特徴や、インターネットの仮想的な社会空間としての特質を十分に踏まえ、広範な人々の間で利用しやすい環境を整えていくことが欠かせないと考えられる。

 


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