平成13年版 情報通信白書

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第1章 特集 加速するIT革命

2 情報リテラシー向上に向けた取組の進展

児童・生徒や高齢者等の国民各層によるインターネット利活用を拡大

1)教育の情報化の推進状況
 我が国の教育現場に高度な情報通信機能を導入し、将来のIT社会を担う子供たちの情報活用能力の育成を図るなど、教育の情報化を進めることは、21世紀の高度情報通信ネットワーク社会を支える人材を確保し、IT社会の構築を着実に進展させていくために不可欠である。
 このため、学校教育においては、平成14年度以降実施される新学習指導要領の下で、1)小・中・高等学校を通じて各教科や総合的な学習の時間においてコンピュータやインターネットを積極的に活用、2)中・高等学校で情報に関する教科の必修など、情報教育の充実が図られているところである。
 こうした教育を円滑に実施するために、平成17年度を目標に、全ての学級のあらゆる授業においてコンピュータやインターネットを活用できる環境の整備が進められているところである。
 現在の我が国の公立学校におけるコンピュータの設置状況をみると、平成12年3月時点で中・高等学校等については既に100%に達するなど、非常に高い割合でコンピュータが導入されていることが分かる(図表1))。
 これに対して、接続回線の速度を問わず、何らかの形でインターネットへ接続されている公立学校の割合は、全学校のうちの57.4%に達し、前年度調査時より21.8ポイント上昇している。また、ホームページを開設している学校数は7,850校と前年度(4,842校)から大幅に増えているが、インターネット接続されている学校のうち、ホームページを開設している学校の割合は35.0%であり、ほぼ前年度並みである。今後も、学校において、ホームページの活用も含めた、インターネットの特徴である情報発信が進むことが望まれる(図表2))。
 現在、平成13年度には全ての公立学校がインターネットに接続されることを目標に環境整備が行われているが、今後、学校で利用する端末台数の増加や、動画コンテンツの活用など、インターネットを活用した教育活動の多様化に対応していくためには、回線速度の向上が不可欠である。
 このため、総務省では教育分野におけるインターネットの活用を促進するため、文部科学省との連携の下、小・中・高等学校等を光ファイバ、デジタル加入者線(DSL:Digital Subscriber Line)、FWA等の様々な高速アクセス回線により接続した研究開発用ネットワークを整備し、それらを活用しての高度なネットワーク構築技術や情報伝送技術等の研究開発を実施している。 平成12年度補正予算では、「学校インターネットの情報通信技術に関する研究開発」(文部科学省「次世代ITを活用した未来型教育研究開発事業」と連携)として全国60地域の約1,500校を研究開発用ネットワーク整備の対象とすることとしており、同補正予算により実施された「地域イントラネット基盤整備事業」による学校接続も含めて、平成13年度内には全国約4万校の公立学校のうち4,000校以上が高速アクセス回線によりインターネット接続される予定である。

2)IT基礎技能講習の開催
 国民の情報リテラシー向上の観点から、インターネットや電子メールの利用など、地域住民のIT基礎技能の習得に向け、地方公共団体が学校や、公民館などの身近な施設を利用して開催するIT基礎技能講習を支援するため、「情報通信技術(IT)講習推進特例交付金」を創設し、平成12年度補正予算(54,549百万円)を計上した(注)。
 本交付金により全国の地方公共団体においてIT基礎技能講習の実施が進められているところであり、平成13年1月事業開始からの3か月間で、全国の45都道府県において5,536講座が開設された。募集定員に対する受講希望者の倍率は全国平均で2.73倍に達し、既に約11万人が受講している(資料13参照)。今後、平成13年度末までに全国で約550万人程度の受講を見込んでいるところである。
 このうち山梨県須玉町の中央公民館では、20歳以上の町民を対象にパソコンに触れる機会を提供するため、平成13年1月より無料の「パソコン教室」を開催している(図表3))。本教室では、受講者1人あたり1台のパソコンを用意し、講師1名とアシスタント2名により、パソコンの基本的な操作を始めとしてインターネットを利用しての情報検索や電子メールの送受信方法などについてきめ細かな講習が実施されており、好評を博している。 また、参加者の受付開始直後に受講希望者が定員の20名に達するなど、当初から高齢者を含む幅広い年齢層の町民の高い関心が寄せられており、同町では4月から「パソコン教室」の開催回数を増やすとともに、平成14年3月まで継続して毎月開催することとしている。

3)高齢化社会における情報リテラシー向上のための取組
 今後の高齢化への動きにおいて、高度情報通信ネットワーク社会の恩恵を国民全てが享受し、ITの社会経済における可能性が十分に発揮されるためには、これまでインターネット利用が比較的低調であった60歳代以上の情報通信利用を促進するための取組が重要である。 このような中、現在、シニア世代のためのインターネットによるコミュニケーション・ネットワークの形成を目指した非営利活動が各地で広がりつつある。
 埼玉県蕨市では、市民による自主運営の高齢者向けのパソコンクラブとして、平成10年に「わらびシニアパソコンクラブ」が設立された。同クラブでは、パソコンやインターネットなどを用いて、高齢者自身の活性化と、高齢者の積極的な社会参加を支援することを目的として、初級者向けからホームページ作成等の高度な内容を含むものまで、各種の講座を開講している。また仙台市では同様に市民の手によって「仙台シニアネットクラブ」が運営されているが、このような他団体とのインターネットを通じた交流・協力、高齢者対応のパソコンガイドブックの制作など、様々な活動を展開中である。なお、これからの活動としては、これまでのシニア向け事業に加え、市民一般向けにインターネット等初級者体験講座の展開や、中小企業向けの「定年退職準備講座」の提案などについても取組を進めていくこととしている。
 意欲のある高齢者の社会参加の機会を開き、インターネットを有効に活用することで他の世代との交流を深め、これまで培われてきた高齢者等の知恵と経験を社会の中で共有し、更に活かす仕組みが形作られていくことが大いに期待される。

図表1) 公立学校におけるコンピュータ設置状況 (平成12年3月)
公立学校におけるコンピュータ設置状況(平成12年3月)
図表2) 公立学校におけるインターネット接続状況(平成12年3月)
公立学校におけるインターネット活用状況(平成12年3月)
図表3) IT基礎技能講習の開催(山梨県須玉町)
IT基礎技能講習の開催事例(山梨県須玉町)(写真)


(注)なお、IT基礎技能講習の実施に伴い、文部科学省では、全国の図書館、公民館等約7,000箇所にパソコンを整備するとともに、インターネット接続に必要な機器の整備を行うための補助金(18,948百万円)を平成12年度補正予算において計上した。

 


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