平成13年版 情報通信白書

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第1章 特集 加速するIT革命

II IT社会実現への課題

第5節 デジタル・オポチュニティの確保【要旨】

 全ての人がいかなるところにおいてもグローバルな情報社会の利益に参加可能なデジタル・オポチュニティの確保された社会の構築は、IT革命を推進し21世紀型経済社会を構築していく上で重要な課題である。そこで本節では、インターネット利用格差に焦点を当て、インターネットの利用状況に関する郵送アンケートの実施結果に基づき我が国におけるデジタル・ディバイドの現状等について分析を行う。
 まず地域別格差では、パソコンによるインターネット利用については南関東地域や近畿地域など大都市圏で高い傾向にあるが、携帯電話・PHSによるインターネット利用については北陸地域が南関東地域を上回るなど、必ずしも大都市圏から利用が進んでいるとは言えない状況である。また都市規模別においても、パソコンインターネットについては政令指定都市・特別区、その他の市部、町村部の順で顕著な格差がみられるのに対し、携帯電話・PHSインターネットについてはその他の市部での利用率が政令指定都市・特別区を上回るなど明確な傾向の違いがみられる。携帯電話・PHSインターネットには、パソコンと比較して廉価で、操作の習得が容易といった特徴があり、これらがパソコンインターネットと比較して普及に格差が生じにくい要因の一つになっているものと考えられる。

 次に、その他の個人属性(性別、職業、年齢、世帯年収)別についてみると、いずれも格差は存在しているが、特に年齢、世帯年収についてインターネット利用・非利用との相関関係が高いとの結果が出ており、高年齢層、低所得者層への対策の重要性を示唆している。他方、地域間格差や性別による格差はそれと比較してインターネット利用に与える影響が小さい。また、パソコンインターネットについては各属性別に格差は発生しているが、携帯電話・PHSインターネットについては男女別格差が縮小しているとともに、世帯年収別格差について600万円以上においては格差がほとんど生じていないことが特筆される。
 個人属性による格差をより詳細にみると、60歳代や70歳代、世帯年収400万円未満、無職という高齢者関連項目が最もインターネット非利用との関連性が高く、次に主婦関連項目が続いている一方、インターネット利用全体との関連性については、学生関連項目が高く、次に勤務者関連項目が続いている。このことから、特にデジタル・ディバイド解消を進める際に、高齢者層及び主婦層に対する対策の検討が重要であることを示唆している。

 なお、インターネット非利用者がインターネットを利用しない理由として、「よく分からない、関心がない」、「必要性を感じない、サービスやコンテンツに魅力を感じない」、「利用し始めるきっかけがない」、「端末や機器の使い方が難しいから」をいずれも6割を超える非利用者が挙げており、インターネットを利用し始めるための動機がないこと、機器利用能力の障壁がインターネットを利用しない主な要因となっている。また、インターネット非利用者が利用するための条件としては、「気軽に教えてくれる人がいれば」(41.1%)「気軽に体験や練習ができる場所があれば」(36.6%)「無料講習会などで習えるようになれば」(32.4%)などインターネットを気軽に練習できる機会の確保についての希望が多く、次いで「テレビのリモコン程度に簡単になれば」(28.9%)「電話程度に簡単になれば」(27.6%)といった機器の操作性向上に関する希望が続いている。これは、現在実施されているIT講習の推進が格差是正に有効であるとともに、今後インターネット接続機器について電話機や双方向テレビ受信機などパソコン以外の端末でのインターネット利用を可能にすることが操作性の問題解決に向けた手段となり得ることを示していると考えられる。なお、全体で1割程度は「どうあっても利用しない」と回答しており、特に高齢者層においてはその回答が17.2%に達し、インターネット利用自体への拒否感が強いことに注意する必要がある。

 なお、障害者に関するデジタル・ディバイドについては、ウェブ関連技術の標準化を進める国際団体であるW3Cが、ウェブ上の情報への障害者のアクセスを容易にするためのガイドラインを策定しており、郵政省(現総務省)及び厚生省(現厚生労働省)が開催した研究会はこのガイドラインに依拠した指針を作成した。現在、総務省では、同指針に基づくホームページ作成支援システムの開発等を行っている。また、国際間におけるデジタル・ディバイドについては、各国のインターネット利用率と一人当たりGNPの相関性が高く、一人当たりGNPが低い国ほどインターネット利用率も低くなる傾向にあり、発展途上国におけるインターネット普及に対する先進国の支援の必要性を示している。

 


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