平成13年版 情報通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く目次の階層をすべて閉じる

第1章 特集 加速するIT革命

第2節 ITが先導する経済新生【要旨】

 ITは、IT関連企業の成長が経済成長を牽引するのみならず、電子商取引の普及や企業内のIT活用の進展にともなう生産性向上等を通じて、我が国の経済構造を変革する原動力として機能しつつある。ここでは、1)1980年代以降の企業のIT化の取組が経済成長に与えた影響、2)電子商取引を中心とするインターネットビジネスの状況、3)企業内のIT化の状況について検証する。
 我が国における企業のIT化へ対する取組は、1980年代における汎用コンピュータや、EDI・POS等の業務システム導入などの進行とともに急速に進展したが、バブル経済崩壊による企業の投資抑制の影響を受け、1990年代前半に一度は減速した。しかし、1990年代後半に入り、インターネットの登場を契機として、再度急速な進展をみせている。このような企業のIT化の進展が我が国の経済成長にどの程度寄与してきたかを検証するため、特にIT資本蓄積による効果に着目し、1985年以降における経済成長の要因をIT資本、一般資本(ITを除く資本)、労働の各要素に分解して寄与率(同時期の経済成長率(全体)の中でIT資本蓄積にともなう経済成長率が占める比率)を推計した。その結果、1995年〜99年のIT資本の寄与率は、1985年〜95年の2倍以上となる100.8%にまで達し、特に1995年〜99年においては、IT資本が我が国の経済成長の牽引役となっていることが確認できる。
 次に、電子商取引を中心とするインターネットビジネスの状況についてみると、平成12年における我が国のインターネットビジネス市場の市場規模は47兆8,031億円と対前年比で倍増しており、昨年に引き続き大きく成長していることが分かる。インターネットビジネスの内訳をみると、電子商取引(最終消費財)市場が6,233億円(対前年比78.1%増)、電子商取引(中間財)市場が38兆1,000億円(対前年比164.6%増)、インターネット関連ビジネス市場が9兆798億円(対前年比42.0%増)といずれも大きな成長を遂げている。平成12年の特徴としては携帯電話・PHSからのインターネット利用者数の爆発的な加入者増にともなう、最終消費財市場、インターネット関連ビジネス市場及びモバイルビジネス市場の拡大が挙げられ、モバイルコマース市場、モバイルコマ−ス関連ビジネス市場はいずれも対前年比10倍以上の伸びを見せており、インターネットビジネス市場の拡大に寄与している。
 他方、企業内のIT化についてみると、平成12年においてLANを構築している企業は約9割、またイントラネットを構築している企業も約4割に達し、企業内のIT化も順調に進んでいるといえる。また、CRMシステムの導入による顧客管理の充実やナレッジ・マネジメント・システムの導入によるサービス内容の充実など、企業ネットワークの高度な活用が企業の競争力を強化する重要な要因となりつつある。その一方で、企業内のIT化による効果は全ての企業において一様に生じている訳ではなく、その取組の内容により格差が生じる可能性がある。この点について、LAN・イントラネットの導入による費用対効果を企業アンケートにより調査したところ、接続端末1台当たりの社員数が多い企業ほど導入効果がまだ現れていないと考えている傾向が強く、接続端末1台当たり5人以上の企業では73.1%が「プラスの効果が出ていない」と回答している。このことから、社内ネットワークの構築などIT投資においてその効果を発揮するためには、単にシステムを導入するだけでなく、端末機器の十分な配置など、情報化の密度を高めることも重要な要素であることがうかがえる。

 


11 ブロードバンド時代のネットワーク利用者像 に戻る 1 ITがマクロ経済に与える影響 に進む