平成13年版 情報通信白書

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第1章 特集 加速するIT革命

1 情報リテラシーの現状分析

インターネット利用拡大に向け、身近な相談相手や体験スペースなどに高いニーズ

 ITの急速な普及・進展の中で、国民が等しく情報化の恩恵を享受するためには、利用者においても、それらを自由自在に使いこなす能力、すなわち情報リテラシーを習得していることが重要である。具体的には、情報機器の操作取扱いに加え、主体的に情報源やそこから得られる情報を取捨選択し、収集・活用できる能力などが情報リテラシーの要素として考えられる。
 ここでは、「インターネット利用に関する調査」の結果に基づき、各回答者について「情報基礎リテラシー」(0〜4点)、「パソコンリテラシー」(0〜3点)、「インターネットリテラシー」(0〜8点)、「情報に対する意識」(0〜5点)、「タイピング能力」(0〜3点)の5項目について点数化し、さらにこれらを合計して「総合情報リテラシー」(0〜23点)を算出して、これらの点数について分析を行うこととする(注)。

1)情報リテラシーの概況

ア 情報リテラシーの総合得点
 情報リテラシーについて総合的にみると、23点満点で平均点は8.58点であった(図表1))。これをインターネット利用者・非利用者別に集計した場合、インターネット利用者は平均で13.29点であったのに対して、インターネット非利用者では5.48点となっており、インターネット利用の有無と情報リテラシーの高さにおける強い相関性を示している。同様に、携帯・PHSによるインターネット利用・非利用及びパソコンの世帯所有・非所有についても情報リテラシーとの関連がみられる。

イ 個人属性と情報リテラシー
 個別の情報リテラシーについて、まず性別でみると、男性の方がインターネットリテラシー等において高い傾向がみられるが、全般的に差異はそれほど大きくない(図表2))。
 年齢層別に情報リテラシーをみると、「20歳代」が最も情報リテラシーが高く、年代間のばらつきも大きくなっている(図表3))。特にインターネットリテラシーに関しては、極端に大きな差がついている。また世帯年収別についても、年齢層別と同様にインターネットリテラシーでは比較的大きな格差がみられる(図表4))。第1章第5節において、個人属性では「年齢」、「世帯年収」とインターネット利用の有無との関連性が比較的大きく、特に20代の人や高年収の世帯においてインターネット利用の割合が高い傾向がみられたが、これらの人々のインターネットリテラシーの高さは、インターネット利用の内容についても比較的成熟しつつあることを示していると考えられる。
 職業別に情報リテラシーをみた場合には、パソコンリテラシーやインターネットリテラシーについて、勤務者と学生が他の職業と比較して特に高くなっている(図表5))。これは、インターネットの企業普及の拡大や、学校、特に高等教育においてインターネットが広く導入されてきた状況を背景として、職場や学校においてインターネット利用等の機会が得られることが、これらの人々の情報リテラシー向上に影響していると考えられる。
 以上の結果から、国民全体が参加する高度情報通信ネットワーク社会の形成に向けて、インターネットに接する機会が比較的少ない高齢者層や主婦層などに対する情報リテラシー向上のための取組を、引き続き積極的に進める必要性が示唆される。

2)インターネット利用の拡大に向けた要因分析
 次に、情報リテラシーの総合点が4点以下の回答者(以下、「低得点者」という。)に注目し、全体と比較することにより、このような情報リテラシーが比較的低い人々がインターネットを利用するために必要となる要因を検討する。
 先ず、「インターネットの利用に関してわからないことがあったときに最初に行う行動について」の設問を見ると(図表6))、全回答者における回答率では「詳しそうな知り合いに聞く」(62.1%)、「マニュアルを読む」(47.0%)の回答が特に多くなっている。しかし、低得点者では、「詳しそうな知り合いに聞く」との回答が5割以上で突出しており、全体の回答比率とも大差ないが、「マニュアルを読む」等自ら書籍、電話等を用いて調べることを内容とする項目については、いずれも全体の回答者の回答比率を大きく下回っている。このことから、情報リテラシーが比較的低い人々に対してインターネット利用を促進するためには、詳しい人に容易に聞くことができる環境の整備がより強く求められると考えられる。
 さらに、「インターネット活用に必要な施策」についての設問をみると、低得点者は、「無料で体験できる場所の充実」(55.1%)、「相談窓口や講習会の充実」(34.6%)の回答率が、回答者全体よりも比較的高くなっている(図表7))。これも、インターネットを利用するにあたって不明な点を克服する手段として、詳しい人のサポートが得られる場所や機会を希望しているものと考えられる。
 一般的にインターネット利用等の機会に接しやすいと思われる勤務者や学生において情報リテラシーが高くなる傾向がみられたことと考え合わせると、情報リテラシーの比較的低い人々のインターネット活用を促進するためには、気軽に質問ができる相談者や体験場所の存在がより重要であると言える。

図表1) 総合情報リテラシーとインターネット利用
情報リテラシー総合点とインターネット利用
図表2) 性別と情報リテラシー
性別と情報リテラシー
図表3) 年齢と情報リテラシー
年齢と情報リテラシー
図表4) 世帯年収と情報リテラシー
世帯年収と情報リテラシー
図表5) 職業と情報リテラシー
職業と情報リテラシー
図表6) インターネット利用でわからないことがあったときの行動(複数回答)
インターネット利用で分からないときがあったときの行動
図表7) インターネット活用に必要な施策
インターネット活用に必要な施策


(注)「インターネット利用格差に関する調査」においては、「インターネット利用に関するアンケート」(郵送アンケート調査)の結果に基づき、情報リテラシーについて点数化を行っているが、その算出手順は以下のとおりである。
【各情報リテラシーについて】
1)情報基礎リテラシー
アンケート調査において、以下の操作等が可能と回答した場合、それぞれについて1点を加算(最高で計4点)。
・家庭用ビデオデッキのタイマー録画機能による番組予約
・金融機関のATM(現金自動預払機)による預貯金の預け入れや払い戻し
・留守番電話の機能による留守録の設定や再生
・コピー機による拡大・縮小コピー
2)パソコンリテラシー
アンケート調査において、以下の操作等が可能と回答した場合、それぞれについて1点を加算(最高で計3点)。
・パソコンやワープロ専用機による文章作成
・パソコンやワープロ専用機でのキーボード操作
・パソコンやワープロ専用機によるグラフ作成
3)情報に対する意識
アンケート調査において、以下の各内容に該当すると回答した場合、それぞれについて1点を加算(最高で計5点)。
・人よりも早く情報を得たい。
・情報はできる限りたくさん入手したい。
・情報はいつでもどこにいても欲しいときに入手したい。
・欲しい情報は、お金を払ってでも入手するのは当然だと思う。
・情報収集のため、定期的に読んでいる雑誌がある。
4)インターネットリテラシー
アンケート調査において、以下の操作等が可能と回答した場合、それぞれについて1点を加算(最高で計8点)。
・電子メールの受信確認
・受信した電子メールへの返信メール作成
・電子メールに、ファイル添付して送信
・ウェブページの作成
・自分でドメインを取得
・知りたい情報のインターネット検索
・パソコンのセットアップ
・パスワードの変更
5)タイピング能力
アンケート調査において、ワープロやパソコンのキーボード操作について以下の各内容に該当すると回答した場合、それぞれ点数化。
・手元を見ないで、はやく打てる(→ 3点)。
・手元を見ながら、はやく打てる(→ 2点)。
・手元を見ながら、ゆっくり打てる(→ 1点)。
・キーボードはほとんど使えない(→ 0点)。

【総合情報リテラシーについて】
以上の各得点の総計により算出。

 


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