平成8年版 通信白書

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第1章 平成7年情報通信の現況

1 国内情報通信の動向


 (1)  電気通信サービス


 ア 電話サービス
 (ア)  契約数及びサービス提供地域
 (NTT)
 NTTの加入電話契約数は、7年9月末現在 6,072万契約(対前年同期比 1.9%増)となっている。
 また、加入電話契約を事務用と住宅用とに分けて見ると、7年9月末現在、事務用は 1,884万契約(対前年同期比 1.3%増)、住宅用は 4,187万契約(同 2.1%増)である。伸び率は、3年度以降事務用の伸び率が住宅用よりも小さい傾向が続いている(第1-1-3図参照)。
 (新第一種電気通信事業者)
 長距離系新第一種電気通信事業者3社(第二電電(株)、日本テレコム(株)及び日本高速通信(株))の市外電話サービス契約数(ID登録数の3社単純集計)は、7年9月末現在、 3,066万契約(対前年同期比 9.5%増)となっている。
 また、これら長距離系の新事業者3社は、いずれも全都道府県(都道府県内の一部地域の場合を含む。)でサービスを提供している。
 一方、地域系新第一種電気通信事業者のうち、唯一加入電話サービスを提供している東京通信ネットワーク(株)の加入電話契約数は、7年9月末現在1万 7,038契約(同51.4%増)であり、そのサービス提供地域は、東京、神奈川、千葉、埼玉、群馬、栃木、茨城、山梨及び静岡の9都県である(都県内の一部の地域の場合を含む)。
 (イ)  トラヒック
 (総通話回数・総通話時間)
 6年度における総通話回数と総通話時間(NTT、第二電電(株)、日本テレコム(株)、日本高速通信(株)及び東京通信ネットワーク(株)の5社合計)は、それぞれ 832.6億回(対前年度比 4.8%増)、39億4千万時間(同 3.9%増)となっている。伸び率は前年度に比べ総通話回数で 2.0ポイント、総通話時間で 1.0ポイント高くなっている。
 総通話回数をNTTと新事業者(4社の合計)別に見ると、NTTが前年度に比べ 4.1%増であるのに対して、新事業者は14.9%増と大きく伸びており、総通話回数に占める新事業者のシェアは、前年度に比べ 0.6ポイント増の 7.2%となっている。
 また、県間通話回数に占める新事業者のシェアは、前年度に比べ 2.2ポイント増の31.3%となっている。
 さらに、東京都、大阪府、愛知県相互の通話回数に占める新事業者のシェアは、前年度に比べ 0.3ポイント減の54.1%となった(第1-1-4図参照)。
 (距離段階別通話回数・通話時間)
 総通話回数及び総通話時間を「区域内通話」(3分間の通話が10円でかけられる単位料金区域の中に終始する通話)、中距離の「 100km以内」及び遠距離の「 100km超」のように距離段階別に分けると、区域内通話の通話回数及び通話時間は、 528.6億回(総通話回数の63.5%)、22.3億時間(総通話時間の56.5%)、 100km以内の通話が 227.9億回(同27.4%)、12.5億時間(同31.7%)、 100km超の通話が76.1億回(同 9.1%)、 4.7億時間(同11.8%)である。総通話に対して、区域内通話の占める割合が減少し、市外通話(「 100km以内」及び「 100km超」の通話)の占める割合が増加する傾向にある。
 さらに、NTTと新事業者別に市外通話の通話回数及び通話時間を見ると、NTTについては、 244.3億回(対前年度比 6.4%増)、13.8億時間(同 4.1%増)である。一方、新事業者については、59.7億回(同14.9%増)、3.31億時間(同16.1%増)であり、ともに伸び率はNTTに比べて大きい(第1-1-5図参照)。
 (一回当たりの通話時間別通話回数)
 総通話回数を一回当たりの通話時間別に見ると、1分以内の通話の回数が 438.5億回で最も多く、シェアは総通話回数の52.7%(対前年度比 0.7ポイント増)を占めている。また、いずれの通話時間における通話も増加傾向にあるが、中でも1分以内の通話は、前年度より 6.2%増加している。
 NTTと新事業者別に通話回数の構成を見ると、NTT、新事業者ともにシェアが増加している通話は1分以内の通話で、それぞれ、前年度より 0.8ポイント増の53.4%、同 1.0ポイント増の43.7%となっている(第1-1-6図参照)。
 (時間帯別通話回数)
 1日の時間帯別に総通話回数の構成比を見ると、昼間(8時から19時)は76.8%(対前年度比 0.5ポイント減)、夜間・深夜早朝(19時から翌朝8時)は23.2%(同 0.5ポイント増)であり、昼間の割合が減少し、夜間・深夜早朝の割合が増加する傾向にある。
 NTTと新事業者別に通話回数総数における時間帯別の通話回数構成比を見ると、NTTでは昼間が76.3%(同 0.5ポイント減)、夜間・深夜早朝が23.7%(同 0.5ポイント増)、新事業者では昼間が83.9%(同 1.4ポイント減)、夜間・深夜早朝が16.1%(同 1.4ポイント増)である(第1-1-7図参照)。
 (ウ)  加入者線交換機端子数
 7年9月末現在のNTTの加入者線交換機の総端子数は、 6,337万端子(対前年同期比 0.8%増)である。また、すべての端子がID送出可能端子であり、NTTの全加入者は長距離系新事業者と加入契約が可能となっている。さらに、高度な電話サービスや料金の多様化を実現するための基礎となるデジタル交換機の端子数は 5,434万端子で、総端子数に占める比率は85.7%(同 8.5ポイント増)である。
 一方、新事業者である東京通信ネットワーク(株)の加入者線交換機の総端子数は、7年9月末現在、5万 6,985端子(対前年同期比87.7%増)であり、全端子がデジタル交換機の端子で、ID送出可能端子である。
 (エ)  電話サービスの多様化
 利用者の高度化・多様化するニーズに対応して、新しい電話サービスの実用化が進められている。7年度から新たに提供されたり、あるいは機能が拡充された主なサービスは、以下のとおりである。
 (VPNサービス)
 VPNサービスとは、特定のユーザグループ間においてあらかじめ登録した内線番号を回すと、電話会社側で自動的に一般の電話番号に変換し、相手側につなぐサービスである。既にNTTについては6年2月からサービス提供中であったが、7年5月から新たに第二電電(株)、日本テレコム(株)、日本高速通信(株)によりサービスが提供されている。
 (キャッチホンIIサービス)
 キャッチホンIIサービスとは、現行のキャッチホン機能に加え、話し中に割り込みがあっても出られない時に音声メッセージ蓄積装置が代わって応答し割り込み者のメッセージを録音するとともに、録音後に契約者に通知し、契約者はダイヤル操作により音声メッセージ蓄積装置にアクセスし、割り込み者のメッセージを聞くことができるサービスである。このサービスが、7年7月からNTTにより提供されている。
 (迷惑電話防止サービスの機能拡充)
 迷惑電話防止サービスは、いたずら電話等、受信者が受信したくない通話を事前に登録しておき、その通話をブロックするサービスであり、6年8月からNTTによりサービスが提供開始されてきた。このサービスの利用者の要望にこたえるため、拒否登録をした電話番号を一括で削除する機能に加え、最後に登録した順番に一つずつ解除できる機能、拒否登録した電話番号から迷惑電話がどれくらい掛かってきたか効果を確認する機能拡充が、8年3月から実施されている。
 (フリーダイヤルサービスの機能拡充)
 フリーダイヤルサービスは、昭和60年12月からNTTによりサービスが提供開始されて以来、様々な機能拡充が行われてきたが、更なる利便向上のため、フリーダイヤル用の迷惑電話防止サービス、フリーダイヤル番号通知サービス、発信地域指定の細分化等の機能拡充が、7年9月から実施されている。
 (ダイヤルQ2サービスの改善)
 ダイヤルQ2サービスは、元年7月からNTTによりサービスが提供開始されてきたが、一部の悪質なアダルト情報の提供等に利用されて、青少年に悪影響を与える番組の登場、高額利用の料金請求、他人の電話回線の無断利用による不正通話等が社会的な問題となっていた。これにこたえるため、7年11月から、特定者だけに利用可能とするパスワードの導入や、利用者が番組内容等を確認するための一定時間については情報料が掛からない「番組冒頭における情報料非課金時間」の導入が行われた。またこれと併せて、ダイヤルQ2サービスの新たな利用形態に対応するため、従来の利用時間に応じて情報料を課金する方式に加え、利用時間に関係なく利用ごとに一定の情報料を課金する「定額課金」も導入されている。
 (各種網機能サービス)
 オープンネットワーク協議会(注1)における第二種電気通信事業者等からの要望にこたえるため、7年7月からNTTにより話中時転送サービス(現行のキャッチホン機能に加え、話中に掛かってきた電話をあらかじめ指定した転送先に転送するサービス)、転送元電話番号受信サービス(話中時転送サービスにより転送されてきた転送元の電話番号を着信者が受信できるサービス)等の各種網機能サービスが提供されている。
 (「114番」による話中調べ専用番号の新設等)
 NTTによる話中調べや故障問い合わせは、これまで「113番」をダイヤルすることにより自動応答装置が応答し、ガイダンスに従ってサービスを選択するようになっていたが、迅速な対応が求められる故障問い合わせについては、利用者から改善の声が寄せられていた。これにこたえるため、8年2月から、「113番」を故障問い合わせ等の専用番号とし、「114番」を自動応答装置による話中調べ専用の番号として新設することとなった。
 イ 移動通信サービス
 (ア)  携帯・自動車電話サービス
 (契約数及びサービス提供地域)
 携帯・自動車電話サービスの総契約数(NTTDoCoMo等地域別9社と新第一種電気通信事業者15社の合計)は、7年9月末現在 666万 9,905契約(8年3月末の現在 1,020万4,023 契約)であり、対前年同期比 130.7%増と加入電話と比べて大幅に伸びている(第1-1-8図参照)。
 7年9月末現在、総契約数をNTTDoCoMo等及び新事業者別に見ると、NTTDoCoMo等の契約数は 327万 4,310契約(対前年同期比99.0%増)、新事業者の契約数は 339万 5,595契約(同 172.6%増)で、新事業者のシェアは前年同期より 7.8ポイント増の50.9%となり、NTTDoCoMo等のシェアを上回った。また、総契約数をアナログ及びデジタル方式別に見ると、アナログ方式の契約数は 438万 1,274契約(対前年同期比69.5%増)であるのに対して、デジタル方式は 228万 8,631契約(同 648.6%増)と爆発的な増加を遂げている(第1-1-9図参照)。
 携帯・自動車電話サービスの提供地域については、アナログ方式の提供区域の人口カバー率は約95%に達しているが、デジタル方式のサービスも、NTTDoCoMo等又は新事業者により着実にサービス提供地域を拡大しつつある。
 このような携帯・自動車電話サービスの著しい成長の背景には、1地域4社体制(PHSサービスを併せると、移動体通信市場全体では1地域7社体制)という世界的に見ても激しい競争市場の実現により料金が急速に低廉化・多様化したこと、端末売り切り制導入移行の競争促進による端末の低価格化、技術革新による小型・軽量化、デジタル化、電池寿命が向上したこと等がある。また、7年7月から開始したPHSサービスとの相乗効果が働いたことも市場成長の要因となっている(第1-1-10図参照)。
 (トラヒック)
 6年度における携帯・自動車電話サービスの総通話回数と総通話時間(NTTDoCoMo等地域別9社、新第一種電気通信事業者15社の合計)は、それぞれ41.7億回(対前年度比64.2%増)、1億 467万時間(同63.2%増)である。
 総通話回数をNTTDoCoMo等と新事業者(15社の合計)別に見ると、NTTDoCoMo等は22.7億回(同55.5%増)、新事業者は19.0億回(同75.9%増)となっており、総通話回数に占める新事業者のシェアは、前年度と比べ 3.0ポイント増加して45.5%となっている。
 距離段階別の通話回数及び通話時間を見ると、 160km以内の通話では、40.1億回(総通話回数の96.2%)、 9,761万時間(総通話時間の93.3%)であり、 160kmを超える通話では、 1.7億回(同 4.1%)、 706万時間(同 6.7%)となっている。 160kmを超える通話が極めて少なく、近距離の通話を中心に利用されていることが伺える(第1-1-11図参照)。
 1回当たりの平均通話時間を加入電話と比較すると、加入電話は2分50秒であるのに対して、携帯・自動車電話は約半分の1分30秒であり、携帯・自動車電話は簡潔な通話に利用されていることが伺える。
 1日の時間帯別に総通話回数の構成比を見ると、昼間(8時から19時)は75.5%、夜間・深夜早朝(19時から翌朝8時)は24.5%であり、夜間・深夜早朝の割合が、NTTと新事業者を合わせた加入電話(23.2%)に比べてやや高くなっている(第1-1-12図参照)。
 携帯・自動車電話と加入電話との相互通話の状況を見ると、携帯・自動車電話から加入電話へ発信した通話回数は23.7億回、加入電話から携帯・自動車電話へ着信した通話回数は14.1億回となっており、携帯・自動車電話が発信中心に利用されていることが分かる。また、携帯・自動車電話相互間の通信は 3.9億回で、加入電話とを合わせた総通話回数 874.3億回の 0.4%にとどまっている(第1-1-13表参照)。
 (イ)  PHSサービス
 PHSサービスは、移動通信サービスの一つであり、携帯・自動車電話に比べてカバーエリアが狭い、高速移動中は使用できないなどの制約があるが、利用料金が安く、端末が小型軽量で、高速データ通信の可能性を秘めるなどの特徴を有している。7年7月から首都圏、札幌を皮切りに、PHSサービスが開始され、8年3月末現在では、エヌ・ティ・ティパーソナル通信網グループ9社、ディーディーアイポケット電話グループ9社、アステルグループ8社が順次サービスを開始し、1地域3社体制の競争市場が整った。
 PHSサービスの総契約数(7年9月末時点でサービス提供中であったエヌ・ティ・ティ中央パーソナル通信網(株)等2社とディーディーアイ東京ポケット電話(株)等2社の合計)は、7年9月末現在13万 2,507契約(8年3月末時点でサービス提供中の各社合計では、 150万8,114 契約)である。
 (ウ)  無線呼出しサービス
 無線呼出しサービスの総契約数(NTTDoCoMo等地域別9社と新第一種電気通信事業者31社の合計)は、7年9月末現在 1,033万25契約(8年3月末現在 1,061万549 契約)であり、伸び率は前年度に比べやや鈍化している( 3.9ポイント減)ものの対前年同期比17.0%増となっている。契約数が着実に増加している理由としては、若年層を中心とするパーソナルユースとしての利用拡大、無線呼出受信機の売り切り制の導入以降の競争促進による端末の低価格化、多様化が寄与しているものと考えられる。
 総契約数をNTTDoCoMo等及び新事業者別に見ると、7年9月末現在NTTDoCoMo等の契約数は 604万 7,874契約(同15.7%増)、新事業者の契約数は 428万 2,151契約(同18.9%増)である。総契約数における新事業者のシェアは41.5%である(第1-1-14図参照)。
 (エ)  その他の移動通信サービス
 第一種電気通信事業者が提供するその他の移動通信サービスとしては、NTTが提供している列車公衆電話、NTTDoCoMoが提供している船舶電話、航空機公衆電話等と、新事業者が提供しているマリネット電話サービス、テレターミナルサービスがある。
(報道資料参照)10/27付:(株)アステル沖縄のPHSサービスの開始
(報道資料参照)11/24付:(株)アステル北海道、東北及び中部のPHSサービスの開始
 ウ ISDNサービス
 ISDNサービスは、音声、ファクシミリ、データ、映像等の情報を大量に、高品質かつ経済的に伝送したいという高度化、多様化する情報通信のニーズにこたえるため、サービスごとの個別のネットワークでなく、一つのデジタルネットワークにより統合して提供する公衆サービスである。
 ISDNサービスの普及は、従来より、企業の売上高管理等のPOSデータ通信や、テレビ会議等の映像伝送等を中心に、企業活動における高速通信向けに拡大してきた。
 更に、近年、インターネットやパソコン通信の利用の拡大に伴い、一般家庭においても、ISDNサービスが導入されてきている。これについては、電話回線に比べて伝送容量が大きいため、インターネットやパソコン通信へのアクセスがより容易であること、インターネットやパソコン通信にアクセス中であっても、その間、電話の利用が可能であること等のISDNの利便性や、ISDNを導入する際に必要となる接続装置等の初期費用が近年、低廉化の動きにあることが要因として挙げられる。
 NTTが提供しているISDNサービスには、基本インタフェースによるサービスと、一次群速度インタフェースによるものとがある。8年2月、インターネットやパソコン通信の利用に対応する需要喚起型のサービスとして、深夜早朝時間帯月極定額サービスが導入されている(詳細については第1-1-22表を参照)。
 NTTは長らく国内における唯一のISDNサービスの提供事業者であったが、7年10月から大阪メディアポート(株)及び(株)四国情報通信ネットワーク、8年3月から北海道総合通信網(株)、東北インテリジェント(株)がISDNサービスに参入した。
 NTTによるISDNサービスの回線数は、7年12月末現在、サービス提供地域数が 3,478地域(対前年同期比18.3%増)で、回線数は、基本インタフェースが45万 3,187回線(同48.1%増)、一次群速度インタフェースが 8,750回線(同47.2%増)である(第1-1-15図参照)。
 エ 専用サービス
 専用サービスには、高速デジタル伝送サービス、一般専用サービス、映像伝送サービス、テレビジョン放送中継サービス、無線専用サービス等がある。ここでは、近年伸び率が著しい高速デジタル伝送サービスと、専用サービスの総回線数の9割以上を占める一般専用サービスについてその動向を概観する。
 (ア)  高速デジタル伝送サービス
 高速デジタル伝送サービスは、[1]データ伝送と電話を統合した利用、[2]LAN相互間の高速データ伝送、[3]広帯域を要するテレビ会議等の企業情報通信ネットワーク等の回線として利用されている。
 高速デジタル伝送サービスの総回線数(NTTと長距離系及び地域系新第一種電気通信事業者の合計13社の総数)は、7年9月末現在、5万 1,894回線(対前年同期比96.3%増)と大きな伸びを示している。このうち新事業者の回線数は1万 745回線(同36.4%増)で、総回線数におけるシェアは20.7%(同 4.9%減)である(第1-1-16図参照)。
 高速品目(64kb/s〜6Mb/s )のうち、回線数の伸びは、64kb/s回線(対前年同期比 163.8%増)、 128kb/s回線(同 245.3%増)といった低速度回線で大きい傾向にある。また、新事業者のシェアは、 1.5Mb/s 回線(48.5%)、3Mb/s 回線(44.0%)、6Mb/s 回線(52.6%)といった高速度回線で大きい(第1-1-17表参照)。
 超高速品目(50Mb/s 、 150Mb/s )については、従来からNTTが提供していた 150Mb/s のMA内回線に加えて、7年5月にNTTによって 150Mb/s のMA外回線及び50Mb/s 回線が提供されるようになったほか、7月からは新事業者が50Mb/s 及び 150Mb/s 回線について順次提供を開始している。7年9月末の提供回線数は、50Mb/s が7回線(すべて新事業者)、 150Mb/s が13回線(すべてNTT)である。
 (イ)  一般専用サービス
 一般専用サービスは、[1]電話、ファクシミリ通信、[2]銀行の預金業務のオンライン処理、[3]航空会社の座席予約業務のリアルタイム処理、[4]流通業のPOSシステム等のデータ伝送、[5]放送業のラジオ放送中継等に利用されている。一般専用サービスには、アナログ伝送により決められた周波数帯域を利用できる「帯域品目」と、デジタル伝送により速度を保証している「符号品目」がある。
 一般専用サービスの総回線数(NTT、長距離系及び地域系新第一種電気通信事業者13社の合計)は、7年9月末現在 103万 4,119回線(対前年同期比 0.2%減)である。
 これを帯域品目・符号品目別に見ると、帯域品目の総回線数は69万 6,970回線(同 0.7%増)と伸びは鈍化しているものの、増加傾向にある。このうち電話網相当の規格を有する3.4kHz 回線と音声伝送回線が大部分(帯域品目の回線数の98.6%)を占めており、これらの回線数の合計は68万 7,231回線(同 0.6%増)である。
 一方、符号品目の総回線数は33万 7,149回線(同 2.0%減)と減少に転じた。これは、符号品目の回線の78.3%を占める50b/s 回線が26万 4,103回線(同 2.4%減)と減少したことによる影響が大きいためである。また、前年同期比で伸びが大きい回線品目は、9,600b/s回線で4万 6,615 回線(同 8.6%増)となっている(第1-1-18図参照)。
 また、新事業者の総回線数は1万 9,882回線であり、一般専用線の総回線数におけるシェアは 1.9%(同 0.1ポイント増)と小さい。
 オ デジタルデータ伝送サービス
 デジタルデータ伝送サービスには、回線交換サービス、パケット交換サービス、フレームリレーサービス、セルリレーサービスがある。ここでは、デジタルデータ伝送サービスの総回線数の9割以上を占めるパケット交換サービスと、新規サービスであるフレームリレーサービス、セルリレーサービスについてその動向を概観する。
 (ア)  パケット交換サービス
 パケット交換サービスは、データを一定長以下のパケットに区切って交換機に蓄積して伝送するパケット交換方式によるデジタルデータ伝送サービスである。全データの伝送が終わるまで回線を専有する回線交換方式に比べ、回線を共有できるなどの点で効率が良い。
 パケット交換サービスの提供は、NTTと中部テレコミュニケーション(株)により行われている。
 NTTによるパケット交換サービスの回線数は、7年12月末現在46万 3,052回線(対前年同期比 4.9%増)である。特に、加入電話網を介してパケット交換網に簡単にアクセスできる第2種パケット交換サービスの回線数は、7年12月末現在42万 8,682回線(同 6.0%増)で、伸びは鈍化しているものの増加傾向にある(第1-1-19図参照)。
 (イ)  フレームリレーサービス
 フレームリレーサービスは、ネットワークにおける処理を簡素化することで、従来からのパケット交換方式よりも高速のデータ伝送・交換を可能とするフレームリレー方式により、64kb/sから 1.5Mb/s までの通信速度に対応した、LAN間通信等に用いられるデジタルデータ伝送サービスである。
 フレームリレーサービスの提供は、5年1月からスターネット(株)等の第二種電気通信事業者が提供を開始しており、6年11月から第一種電気通信事業者による提供が行われている。8年3月末現在、第一種電気通信事業者では、NTT、日本テレコム(株)、日本高速通信(株)、第二電電(株)、東京通信ネットワーク(株)及び大阪メディアポート(株)により提供されている。
 第一種電気通信事業者が提供するフレームリレーサービスの回線数は、7年12月末現在 1,158回線(うちNTTの回線数は 368回線)である(第1-1-20図参照)。
 (ウ)  セルリレーサービス
 セルリレーサービスは、フレームリレー方式において行っているデータ長を可変とする処理を省略することにより、さらに高速の通信に対応したデジタルデータ伝送サービスである。
 セルリレーサービスの提供は、7年9月からNTT、同年10月から日本高速通信(株)、同年11月から日本電気(株)、同年12月から日本テレコム(株)(試験役務で提供)、ひまわりネットワーク(株)により開始されている。
 カ 衛星通信サービス
 通信衛星3号(CS-3)の後継機として、NTTにより7年8月N-STARaが、8年2月N-STARbが打ち上げられた。また、(株)日本サテライトシステムズにより7年8月JCSAT-3が打ち上げられた。これにより、衛星通信サービスは、8年3月末現在、(株)日本サテライトシステムズのJCSAT-1、JCSAT-2及びJCSAT-3、宇宙通信(株)のスーパーバードA及びスーパーバードB、NTTのN-STARa、N-STARbの7機の通信衛星により行われることとなり、総トランスポンダ(電波中継器)数は 208本(JCSATの 104本、スーパーバードの52本、N-STARの52本)である。また、通信衛星を利用して情報の送受信を行う地球局として無線局免許を受けている数は、7年12月末現在 5,270局である。
写真
 キ 電報サービス
 電報サービスは、NTTにより提供されており、その総通数は6年度において 4,329万通であった。総通数は昭和61年度以降増加が続いていたが、4年度より減少し、6年度は対前年度比 3.8 %の減少となっている。昭和60年度以降にサービスが開始された「メロディ」、「押し花」等の付加価値電報の通数は、 2,919万通(同 4.8%増)であった。付加価値電報の慶弔電報に占める割合は72.7%と前年度に比べて 5.4ポイント増加している。
 7年度上半期も6年度と同様の傾向を示しており、総通数は 1,995万通(対前年同期比 1.0%減)、付加価値電報の通数は 1,401万通(同 5.9%増)、付加価値電報の慶弔電報に占める割合は76.4%(同 9.1ポイント増)となっている。
 ク ビデオテックス通信サービス
 ビデオテックス通信サービスは、NTTによりキャプテン方式によるものが提供されており、その利用契約数は、7年12月末現在21万 2,229契約(対前年同期比34.3%増)である。また、7年4月、加入電話回線等によりサービスの提供が受けられる第1種ビテオテックス通信網サービスにおいて、新たに9,600b/s回線が提供されている。
 ケ ファクシミリ通信網サービス
 ファクシミリ通信網サービスは、送信情報の蓄積機能等の付加機能がネットワークに付与され、ネットワークが同報通信等のサービスを提供するサービスであり、NTTにより提供されている。ファクシミリ通信網サービスの契約数は、7年9月末現在72万 8,581契約(対前年同期比14.4%増)である。昭和56年9月にサービスを開始して以来、契約数の伸び率は鈍化している。
 コ オフトーク通信サービス
 オフトーク通信サービスは、加入電話等の利用者に対して、電話等で使用されていない時の回線を利用し、情報提供センターから音声等により情報提供を行うサービスであり、NTTにより提供されている。オフトーク通信サービスの契約数は、7年9月末現在28万 2,901契約(対前年同期比 8.8%増)であり、情報提供センター数は 192である。
 サ 国内電気通信料金
 (ア)  電気通信料金の改定
 (国内電気通信料金の低廉化)
 近年、国内電気通信の各分野において料金の低廉化が進んでいる。日本銀行が発表した「物価指数月報」によると、2年の全サービス業の総平均を 100とすると、7年7月〜9月においては、全サービス業の平均の指数は 102.8であり 2.8ポイント上昇しているのに対して、国内電気通信料金の指数は89.5であり、10.5ポイント低下している。特に、携帯・自動車電話(7年7月〜9月平均の指数69.3)、無線呼出し(同84.5)、専用回線(同85.8)の指数が大きく低下している(第1-1-21図参照)。
 7年度においては、電話サ-ビスの基本料金について、6年度の第1次改定に続く第2次改定が実施されるとともに、電話サービス、携帯・自動車電話サービス、PHSサービス、専用サービス、ファクシミリ通信網サービスの分野で料金の値下げが実施されている(第1-1-22表参照)。
 (専用サービスにおけるコスト傾向と整合した料金体系への移行)
 NTTによる専用サービスの料金改定に関し、7年6月、電気通信審議会から、高速デジタル伝送サービスの近距離の基本回線専用料の引上げは、コストを基礎とする料金体系を目指すものであり、やむを得ないが、実施時期と段階的実施方法について再考することが適当である旨の答申が出された。それを受けて、7年7月、NTTから、値上げ額を当初案より抑え、実施を8年度以降に繰り下げ、2段階実施であったものを3段階実施にするなど内容の見直しを行った再申請がなされ、同月、NTTに対し専用サービスの料金の改定が認可された。これにより、高速デジタル伝送サービスの高速品目(64kb/s〜6Mb/s )については、コスト傾向と整合した料金体系へ移行することとなった。またこれと併せて、エコノミーサービスの提供、高額利用割引の拡大等が実施された。さらに、一般専用サービスの帯域品目(音声伝送:3.4kHz 、音楽放送:3.4kHz(S))について料金の値下げ等が実施された。
 (イ)  電気通信料金の多様化
 電話等の料金の競争は、従来、料金水準面を中心に展開されてきた。しかし、近年は加入者線交換機のSPC(注2)化の進展により多様な料金を導入できる設備面の環境が整備されてきたこと等を背景として、利用者のニーズ、利用形態の多様化等に対応した多様な料金が設定されるようになりつつある。
 7年度においては、電話サービス、専用サービス、ISDNサービス、デジタルデータ伝送サービスの分野で料金の多様化が実施されている(第1-1-23表参照)。
 その中でも、7年8月にNTTが実施した電話サービスの深夜早朝時間帯月極定額制サービスは、7年6月の「マルチメディア時代のユニバーサルサービス・料金に関する研究会」中間報告において、マルチメディア時代に向けてパソコン通信の普及促進等を図る観点から、深夜・早朝時間帯に定額制料金を導入することが望ましいと提言されたことを受けたものである。8年2月からはISDNサービスの基本インタフェースについても同様のサービスが導入されている。


第1-1-3図 NTTの事務用・住宅用一般加入電話契約数及び伸び率(対前年同期比)の推移

第1-1-4図 NTT、新事業者の通話回数におけるシェア(1) 第1-1-4図 NTT、新事業者の通話回数におけるシェア(2)

第1-1-5図 電話サービス 距離段階別通話回数及び通話時間

第1-1-6図 電話サービス 一回当たりの通話時間別通話回数

第1-1-7図 電話サービス 時間帯別通話回数の構成比

第1-1-8図 携帯・自動車電話契約数及び伸び率(対前年同期比)の推移

第1-1-9図 携帯・自動車電話 アナログ方式、デジタル方式別契約数の推移

第1-1-10図 第一種電気通信事業者の携帯・自動車電話サービスの提供地域(7年度末現在)

第1-1-11図 携帯・自動車電話サービス 距離区分別通話回数・通話時間

第1-1-12図 携帯・自動車電話サービス 時間帯別通話回数の構成比

第1-1-13表 携帯・自動車電話と加入電話の相互通話状況

第1-1-14図 無線呼出し契約数及び新事業者のシェアの推移

第1-1-15図 ISDNサービス回線数及び提供地域数の推移

第1-1-16図 高速デジタル伝送サービス回線数及び新事業者のシェアの推移

第1-1-17表 高速デジタル伝送サービス 主な速度別回線数

第1-1-18図 一般専用サービス回線数の推移

第1-1-19図 NTTのパケット交換サービス回線数の推移

第1-1-20図 フレームリレーサービスの提供状況の推移

第1-1-21図 企業向けサービス価格指数の推移(国内電気通信)

第1-1-22表 7年度における主な通信料金の改定の状況(1)

第1-1-22表 7年度における主な通信料金の改定の状況(2)

第1-1-23表 7年度における主な通信料金の多様化の状況

通信衛星「N-STAR」(写真提供:NTT)

 

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