平成8年版 通信白書

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第1章 平成7年情報通信の現況

2 経営動向等

 (1)  電気通信事業者

 ア 電気通信事業者の経営動向
 「法人企業統計年報」(大蔵省)によると、6年度の営業収益(売上高)は、全産業については前年度よりは若干少なくなっているがほぼ同額、製造業については対前年度比 1.8%増、非製造業については同 0.7%減である中で、郵政省の調査によれば、6年度の第一種電気通信事業者全体の電気通信事業営業収益は7兆 8,558億円(対前年度比 7.3%増)であった。その内訳を見ると、国内第一種電気通信事業者は7兆 5,151億円(同 7.4%増)、国際第一種電気通信事業者は 3,406億円(同 3.8%増)であった。昭和61年度以降の対前年度比の推移を見ると、第一種電気通信事業者の電気通信事業営業収益は順調な伸びであったと言える(第1-2-3図参照)。
 なお、6年度の第一種電気通信事業者の経常利益は 2,143億円(対前年度比 7.3%減)であり、国内第一種電気通信事業者は 1,796億円(同 7.2%減)、国際第一種電気通信事業者は 347億円(同 8.0%減)であった。
 (ア)  NTT等
 6年度のNTTの経営状況について見ると、総収益は5兆 9,582億円(対前年度比 1.3%増)、営業収益は5兆 8,756億円(同 1.1%増)、総費用は5兆 8,155億円(同 0.8%増)、営業費用は5兆 6,313億円(同 0.9%増)であり、経常利益は 1,426億円(同30.3%増)で増益となった(第1-2-4表参照)。これは、長距離系新第一種電気通信事業者との相互接続料の増加、5年10月及び6年4月の公衆電話料金の値上げ並びに7年2月の基本料の値上げによる影響が大きいと考えられる。
 電話役務営業損益のうち加入電話の状況を見ると、基本料の営業損失は 1,221億円であったが、損失額は前年度より25.9%減少している。市外通話の営業利益は減少したが、市内通話の営業利益は大幅に増加している。また、公衆電話は赤字から黒字に転じた(第1-2-5表参照)。
 また、事業部制による経常損益を見ると、地域通信事業部は 912億円の損失であるが、損失額は前年度に比べて59.1%減少した。一方、長距離通信事業部は 2,527億円の利益であるが、利益額は前年度に比べて29.7%減少した(第1-2-6表参照)。
 さらに、6年度の各地域通信事業部の経常損益について見ると、東京、関東、関西は、黒字額が大幅に増加している。また、東海は前年度までは赤字であったが、6年度は黒字になっている。その他の地域は赤字であるが、総じて損失額が減少している(第1-2-7表参照)。
 また、7年度上半期のNTTの経営状況について見ると、営業収益は3兆 284億円(対前年度同期比 6.0%増)、営業費用は2兆 8,510億円(同 3.0%増)であり、経常利益は 1,267億円(同 257.2%増)と大きく増加している。営業収益全体に占める電話収入の割合を見ると78.0%と前年度より 0.5ポイント増加している。
 一方、NTTDoCoMo等地域別9社の6年度の営業収益は 8,294億円(対前年度比14.5%増)、営業費用は 7,678億円(同43.9%増)であり、経常利益は 344億円(同73.7%増)であった。
 (イ)  長距離系新第一種電気通信事業者
 6年度の長距離系新第一種電気通信事業者3社全体の経営状況について見ると、営業収益は 7,664億円(対前年度比27.6%増)、営業費用は 7,075億円(同27.9%増)であり、経常利益は 330億円(同25.4%増)と前年度に引き続き大きな伸びを示した。なお、長距離系新第一種電気通信事業者3社は、NTT地域網への接続費用として 3,103億円をNTTに支払っている。
 各社別に経営状況をみると、第二電電(株)の営業収益は 3,778億円(対前年度比28.8%増)、営業費用は 3,419億円(同29.8%増)、経常利益は 293億円(同29.6%増)であった。また、日本テレコム(株)の営業収益は 3,048億円(同21.6%増)、営業費用は 2,738億円(同21.7%増)、経常利益は 182億円(同12.2%増)であった。これに対し、日本高速通信(株)の営業収益は83億円(同48.5%増)、営業費用は 917億円(同42.3%増)、経常損失は 145億円(同16.0%増)であった(第1-2-8表参照)。
 第二電電(株)及び日本テレコム(株)の増益理由は携帯電話端末の販売等の附帯事業収益の大幅な伸びによるもの、日本高速通信(株)の経常損失増加の理由は、全国ネットワークの展開や主要ルートの二重化等に伴う設備投資増によるものと考えられる。
 また、7年度上半期の長距離系新第一種電気通信事業者3社全体の経営状況について見ると、営業収益は 4,386億(対前年度同期比18.4%増)、営業費用は 3,815億円(同11.6%増)であり、経常利益は 512億円(同 297.9%増)であった。
 (ウ)  地域系新第一種電気通信事業者
 6年度の地域系新第一種電気通信事業者11社全体の経営状況について見ると、営業収益は 1,031億円(対前年度比36.9%増)、営業費用は 825億円(同37.3%増)であり、経常利益は96億円(同74.5%増)と大きな伸びを示した。これは、専用サービス収入の堅調な増加及び携帯・自動車電話会社への回線の提供による業務受託収入の増加によるものであると考えられる(第1-2-9表参照)。
 (エ)  衛星系新第一種電気通信事業者
 6年度の衛星系新第一種電気通信事業者2社全体の経営状況について見ると、営業収益は 320億円(対前年度比 0.9%増)、営業費用は 317億円(同 1.2%減)であり、経常損失は36億円(同損失額34.5%減)であった(第1-2-9表参照)。
 (オ)  新携帯・自動車電話事業者
 6年度の新携帯・自動車電話事業者15社全体の経営状況についてみると、営業収益は 4,448億円(対前年度比92.0%増)、営業費用は 4,615億円(同 149.2%増)であり、経常損失は 476億円となった。これは、新規事業者の参入が多く、初期投資が大きかったことによるものと考えられる(第1-2-9表参照)。
 (カ)  新無線呼出し事業者
 6年度の新無線呼出し事業者31社全体の経営状況について見ると、営業収益は 1,069億円(対前年度比35.1%増)、営業費用は 916億円(同34.1%増)であり、経常利益は 139億円(同46.3%増)と大きな伸びを示した(第1-2-9表参照)。
 (キ)  KDD
 6年度のKDDの経営状況について見ると、総収益は 2,600億円(対前年度比 0.2%増)、営業収益は 2,478億円(同 0.6%増)、総費用は 2,337億円(同 1.0%増)、営業費用は 2,294億円(同 0.8%増)であったが、経常利益は 263億円(同 6.7%減)と減益であった。これは、トラヒックの増加による増収を営業費用が上回ったことによるものと考えられる。
 営業収益の内訳をサービス別に前年度と比較して見ると、営業収益の主力である電話収入が同 2.3%増、専用収入が同 6.5%増となっている。一方、テレックス収入、電報収入及びデータ通信収入は減少している。
 また、7年度上半期の営業収益は 1,327億円(対前年度同期比 1.1%増)、営業費用は 1,150億円(同 0.1%増)、経常利益は 177億円(同18.0%増)の増益となった。これは、トラヒックの増加による増収であると考えられる(第1-2-10表参照)。
 (ク)  新国際第一種電気通信事業者
 6年度の新国際第一種電気通信事業者2社全体の経営状況について見ると、営業収益は 967億円(対前年度比12.2%増)、営業費用は 854億円(同21.1%増)であり、経常利益は83億円(同11.7%減)で減益であった。これは、トラヒックの増加による増収を営業費用が上回ったことによるものと考えられる(第1-2-9表参照)。
 これを各社別に見ると、ITJの営業収益は 461億円(対前年度比13.0%増)、営業費用は 431億円(同25.3%増)であり、経常利益は31億円(同 8.8%減)であった。一方、IDCの営業収益は 506億円(対前年度比11.7%増)、営業費用は 423億円(同17.2%増)、経常利益は52億円(同13.3%減)であった。
 (ケ)  第二種電気通信事業者
 6年度の第二種電気通信事業者全体の経営状況について見ると、営業収益は6年度推計で1兆 7,577億円(対前年度比 8.3%増)と前年度の伸び率( 3.2%増)を上回り堅調に増加している。これは、企業において、情報通信を活用した新しい業務形態への移行が進展してきていること、インターネットに関連したニュービジネスが出現してきていることによるものと考えられる。
 この内訳を見ると、特別第二種電気通信事業者の営業収益が 9,924億円(推計、対前年度比 3.4%増)、一般第二種電気通信事業者の営業収益が 7,653億円(推計、同15.5%増)であり、一般第二種電気通信事業者は他業種に比べ大きく増加している(第1-2-11図参照)。
 イ 電気通信事業者の設備投資動向
 7年3月及び10月に郵政省が実施した「通信産業設備投資等実態調査」(注6)等によると、電気通信事業者全体の6年度の設備投資実績額は2兆 8,829億円であり、5年度実績額に比べ 2.0%増加している。
 また、「法人企業動向調査報告」(経済企画庁、7年12月実施)によると、7年度の設備投資修正計画額は、全産業が42兆 4,742億円(対前年度実績額比 4.0%増)、製造業が13兆 8,969億円(同13.0%増)、非製造業が28兆 5,503億円(同 0.1%増)となっている中で、電気通信事業者全体の7年度の設備投資修正計画額は3兆 5,279億円であり、対前年度実績額比22.4%増となっている(第1-2-12表参照)。元年度以降の設備投資実績額(7年度は修正計画額)の対前年度増減率の推移を見ると、第一種電気通信事業は堅調に伸びており、特に7年度においては大きく伸びている(第1-2-13図参照)。
 (ア)  第一種電気通信事業者
 6年度の第一種電気通信事業者全体の設備投資実績額の内訳を見ると、NTTが1兆 8,517億円(対前年度実績額比 2.1%減)、NTTDoCoMo等地域別9社の合計が 3,038億円(同29.3%増)、KDDが 462億円(同 3.8%増)、新第一種電気通信事業者が 4,679億円(同 0.2%増)であった。新第一種電気通信事業者の設備投資額は、第一種電気通信事業者全体の17.5%を占め、前年度より 0.7ポイント増加している。
 また、7年度の第一種電気通信事業者全体の設備投資修正計画額の内訳を見ると、NTTが1兆 9,300億円(対前年度実績額比 4.2%増)、NTTDoCoMo等地域別9社の合計が 3,552億円(同16.9%増)、KDDが 536億円(同16.0%増)、新第一種電気通信事業者が 9,949億円(同 112.6%増)となっている。なお、NTTは7年度半期報告書において、前記修正計画額について、さらに約 600億円の増加を見込んでいる。新第一種電気通信事業者の設備投資額は、第一種電気通信事業者全体の29.8%を占め、前年度実績額より12.3ポイント増加している。新第一種電気通信事業者の7年度の設備投資修正計画額が増加している理由は、PHSのサービス開始による基地局設置、携帯・自動車電話のデジタル化対応等のためであると考えられる。
 (イ)  第二種電気通信事業者
 6年度の第二種電気通信事業者全体の設備投資実績額は、5年度の伸び率よりも大きな伸びを示した。
 7年度の設備投資修正計画額は、前年度実績額と比べると減少している。


第1-2-3図 業種別営業収益の推移(第一種電気通信事業の営業収益及び業種別営業収益の対前年度増減率)

第1-2-4表 NTTの経営状況

第1-2-5表 6年度NTTの電話役務損益明細表

第1-2-6表 6年度NTTの事業部制収支状況

第1-2-7表 6年度NTTの各地域通信事業部の収支状況

第1-2-8表 長距離系新第一種電気通信事業者の経営状況

第1-2-9表 第一種電気通信事業者の経営状況

第1-2-10表 KDDの経営状況

第1-2-11図 第二種電気通信事業と他業種の営業収益対前年度増減率の比較

第1-2-12表 電気通信事業者の設備投資額

第1-2-13図 業種別設備投資額の推移(実績額及び対前年度増減率)

 

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