平成8年版 通信白書

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第3章 情報通信が牽引する社会の変革―「世界情報通信革命」の幕開け―

(2)  情報通信インフラ整備等の動向

ア 情報通信市場の状況

 アジア・太平洋地域における電気通信事業者の状況について概観すると第3-1-37表のとおりである。
 1995年7月現在で、同地域においては、韓国、香港、マレイシア、シンガポール、フィリピン、インドネシア、オーストラリア、ニュー・ジーランドで既に電気通信事業者の民営化が行われており、タイでは民営化が計画されている。このように、アジア・太平洋地域においても電気通信事業者の民営化の動きが進展している。
 情報通信市場の自由化についても固定通信分野では、フィリピン(約60社)をはじめとし、香港(4社)、マレイシア(3社)等で競争が導入されている。また、移動通信分野では、ブルネイ(12社)、インド(8社)、フィリピン(5社)、香港(4社)、オーストラリア、マレイシア(各3社)等多くの国において競争が導入されている状況にある。 

イ 情報通信インフラの整備のための政策等

 アジア・太平洋地域の各国においては、情報通信インフラの整備状況に格差がみられる。比較的整備が進んでいる国では、情報通信基盤整備を戦略的に重視し、自国を電気通信のハブとするための政策をとっているところもある。さらに、比較的整備が遅れている国においても、インフラ整備のために各種支援策を講じつつある。
 (ア)  ハブ政策
 シンガポールでは、自国を世界の電気通信のハブとする計画を進め、世界の情報通信基地としての地位を確立しようとしている。これは、[1]電気通信インフラとその提供するサービス水準を世界上位の水準に高める、[2]電気通信産業の成長、効率化を促進する、などを通して、世界の電気通信のハブ機能を持つことを目的としている。
 同国では、「インテリジェント・アイランド」を目指して1992年3月、IT2000(インテリジェント・アイランド構想)を発表した。1994年に既に固定電話網の 100%デジタル化を達成し、ビデオ・オン・デマンド等の新サービスを提供している。1994年12月には、中央ビジネス地区等の大手ホテル・商用ビルへの光ファイバ回線敷設が完了しており、今後、2005年までにすべての家庭へ光ファイバ回線を敷設する予定である。また、1994年にシンガポール・ケーブルビジョンが設立されており、2000年までには、全国的なケーブルテレビのネットワークを構築する計画である。
 また、マレイシアにおいても、1994年5月、「電気通信に関する国家政策」を発表し、世界の電気通信のハブとなることを目指す姿勢を示した。同政策により、電気通信のすべての分野において競争が導入され、テレコム・マレイシア以外に多くの新事業者が出現している。
 (イ)  固定電話網の整備
 中国では、官庁・企業等を中心に電話が普及しており、個人が自宅で電話を持つケースは一部であった。しかし、近年の経済開放政策による近代化が進むにつれて、電気通信に対する需要が急速に増大し、通信網の整備が急速に進められている。同国では、1990年以降光ファイバ網の敷設が積極的に進められており、北京-南京、北京-広州、北京-ハルピン等で敷設が完了し、稼働している。
 インドネシアでは、通信需要の増加にこたえるため、電気通信の開発計画を策定・実行してきた。現在は、1994年からの第6次電気通信開発5か年計画の途上である。この計画では、1999年末までに 500万の電話回線を増設することを目標としている。 500万の電話回線中 300万回線は、PTテレコムがジャカルタ首都圏とスラバヤで敷設し、残りの 200万回線を外国資本を含めた民間コンソーシアムで敷設する計画である。
 タイでは、1990年10月に民間委託方式を取る電話回線敷設計画が決定され全国で 300万回線の増設が進められている。
 インドでは、1994年5月、従来インド通信省により独占的に提供されていた地域電話サービスへの競争導入の方針を決定し、外資を含む民間企業が新規参入できるようになった。1995年1月には、全国を21地域に分割し、地域電話事業の新規免許の入札を開始した。同年6月入札は締め切られ、16社が応札している。
 (ウ)  移動通信網の整備
 シンガポールや香港では、移動通信サービスが日米欧と同等又はそれ以上に進展しているが、その他の諸国においても、最近では、急速に増加する電話需要に対応するために、建設コストが低く、ケーブル敷設が不十分な地域でも通信を可能とする移動通信に注目してきている。
 中国では1987年に携帯電話サービスが開始され、1993年現在 800以上の都市でサービスの提供が行われている。このサービスは、アナログ方式が中心であるが、中国の第二事業者である聯合通信が、1995年7月から北京、上海、天津及び広州でGSMサービスを開始している。
 フィリピンでは、規制緩和政策により、情報通信関係設備投資が促進されており、とりわけ移動通信分野で著しい。同国では、静止衛星を利用した移動通信サービスを提供するための合弁会社が設立されている。これは、近隣諸国のほか中国、インド等をカバーする衛星を1997年に打ち上げ、携帯電話の域外でも同衛星を経由することで通信を可能とするものである。
 インドネシアでは、1995年に携帯電話端末に課せられていた35%の奢侈税を廃止し、携帯電話の普及促進を図っている。
 タイでは、携帯・自動車電話への加入者数は、1995年6月現在で約 100万人に達している。同国最大のアドバンスト・インフォ・サービス社は、1997年前半までに全土でGSMサービスの導入を行う計画である。
 インドでは、1994年10月に通信省が、ボンベイ、カルカッタ、デリー及びマドラスの4大都市でGSMサービスを提供するために設立された8合弁会社(各地域2社)に免許を付与した。
 (エ)  衛星及びケーブルテレビ網の整備
 香港では、1992年に打ち上げられた通信衛星アジアサット1号に続き、1995年12月、アジアサット2号の打上げが行われた。本衛星を利用した香港の衛星会社による衛星放送のカバーする範囲は、アジア全域とオーストラリア等の世界53か国・地域となっており、約2億人の視聴者がおり、今後も視聴者数は増加すると予想されている。また、1996年4月には、日本向け放送も行われる計画となっている。
 中国では、アジアサット2号を使用し、ペイテレビサービスの実施が計画されている。また、同国では、1990年以降ケーブルテレビが急速に普及してきており、1994年末現在、北京ケーブルテレビ、上海ケーブルテレビをはじめ約 1,200のケーブルテレビ局が許可されており、中国でのケーブルテレビへの加入者は、 3,000万世帯以上となっている。
 インドネシアでは、島しょ国であるため、1976年のパラパA1号の打上げ以来、早くから国内通信に衛星を利用している。今後の計画としては、1996年内に放送衛星インドスターの打上げが、1999年までにパラパB5・B6の打上げが予定されている。
 インドでは、香港の衛星会社による衛星放送のケーブルテレビによる受信世帯が増加してきている。ケーブルテレビのシステム数は、1985年100 であったのが、1992年には、1万 5,000に増している。同国のケーブルテレビ事業者は、 200〜 300世帯を対象とした小規模事業者が多い。同国では、無認可のケーブルテレビ事業者が衛星放送を送信していたが、政府は1994年10月にケーブルテレビ法を制定し、すべての事業者に1994年末までに登録を義務付け、登録された事業者から税金を徴収することとした。また、テレポートが、インドのシリコンバレーと呼ばれるバンガロール市周辺を含む全国5か所に設置され、国際データ通信、テレビ会議等を提供し、インドのソフトウェア開発を急成長させている。


第3-1-37表 アジア・太平洋地域の電気通信事業者の状況(95.12現在)

 

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