平成8年版 通信白書

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第2章 情報通信政策の動向

(7)  国際衛星通信をめぐる動向及びその対応

 ア インテルサット
 国際電気通信衛星機構(インテルサット)を取り巻く環境は急速に変化しつつある。光海底ケーブル技術の発展に伴い、これまで衛星通信によって伝送されていた国際通信、すなわち国際公衆交換電話サービスのトラヒックは、着実に光海底ケーブルによる伝送に移行しつつある。このような中で主要な通信路について見ると、光海底ケーブルが占める割合は既に80%程度まで拡大しており、インテルサットの果たす役割ももはや補完的なものにまで後退している。一方、我が国とアフリカ、中南米の途上国との通信路について見ると、インテルサットはなおも唯一の通信路として重要な役割を果しており、今後ともこの役割は続くものと考えられている。また、各国の衛星通信の自由化により多彩な衛星サービスが生まれるとともに、民間衛星によるグローバルなネットワークの構築が進められている。このような動きに対応し、インテルサットの業務内容も多様化が進み、放送関連サービス等の成長が著しいことから、かつて80年代後半にインテルサットの収入の約80%を占めていた国際公衆交換電話サービスの比重は収入全体の半分強まで減少している。
 このような競争状況を踏まえ、インテルサットでは2000年過ぎまで衛星通信市場の活発な拡大を背景に堅調に成長するものの、その後は市場の成長の鈍化と別個衛星システムの成長の間で縮小に転じると予測している。インテルサットでは競争への対応として1995年8月に開催された第20回締約国総会において、衛星の利用率を今後とも高く維持し、衛星利用における規模の経済を保持するため、インテルサットに代わり衛星を保有し、同機構に宇宙部分を提供するとともに、自らは新サービスの提供を行うことを目的とする子会社の設立につき具体的検討を開始することを決定した。現在、作業部会において1997年4月に予定される締約国総会に向け、子会社の在り方につき検討が進められている。
 イ インマルサット
 これまで、国際海事衛星機構(インマルサット)は、海上の遭難及び人命の安全通信への貢献、海事、航空通信の改善をその主たる役割としてきたが、1996年4月からスポットビームを初めて備えた第3世代衛星を打ち上げ、これにより提供回線数を飛躍的に増大させ、同年夏より携帯性の高いミニMサービスによる本格的な陸上移動通信の提供を開始する予定である。これによりインマルサットがグローバルな移動通信全般の担い手として大きく成長することが期待されている。しかしながら、同時に、民間企業による周回衛星を利用した衛星携帯電話サービスの提供も計画されていることから、2000年以降、インマルサットは縮小に転じるとの予測もなされている。
 1996年2月に開催された第11回総会は、このような競争環境の変化に対応するため機構改革の必要性を認め、政府間組織としての性格の維持と海上の遭難・安全通信等公的な義務の堅持を決定した上で、インマルサットが新サービスに進出するため署名当事者が負う使用実績に応じた出資義務を廃止し、外部の出資を受け入れるとの方針を決定した。1996年末又は1997年初めに臨時総会を開催し最終的な決定を行う予定であり、今後具体的な内容等の検討が開始される予定である。
 なお、インマルサットでは、中軌道周回衛星を利用した移動通信サービスの提供につき検討した結果、出資を希望する署名当事者とともに別会社を設立しサービスを提供することが適当と判断し、1995年1月にI-COグローバルコミュニケーションズ社を設立した。インマルサットは最大の出資者として、同社の経営につき15%の発言権を有している。

中軌道周回衛星の配置イメージ

 

 

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