平成8年版 通信白書

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第3章 情報通信が牽引する社会の変革―「世界情報通信革命」の幕開け―

(1)  成長する情報通信産業

ここでは、情報通信産業の国内生産額、粗付加価値、雇用者数及び労働生産性を推計し、これらの推移を定量的に分析・検証することで、リーディング産業としての情報通信産業の現状を明らかにする(注46)。

ア 情報通信産業の国内生産額、粗付加価値の動向

情報通信産業の実質国内生産額の推移を見ると、昭和60年が52.0兆円、2年が80.6兆円及び6年が88.3兆円である(注47)。年平均成長率は、昭和60年から2年にかけてが 9.1%及び2年から6年にかけてが 2.3%であり、我が国産業全体の実質国内生産額のそれぞれ同期間の年平均成長率 4.6%、 1.9%と比較すると、より高い水準で推移している。また、情報通信産業の実質国内生産額が我が国産業全体の実質国内生産額に占める比率も、昭和60年が 7.6%、2年が 9.3%及び6年が 9.5%と拡大してきている(第3-2-36図参照)。
 また、情報通信産業の名目粗付加価値(名目GDPに相当)の推移を見ると、昭和60年が26.6兆円、2年が38.4兆円及び6年が43.6兆円である。年平均成長率は、昭和60年から2年にかけてが 7.6%及び2年から6年にかけてが 3.2%であり、我が国産業全体の名目粗付加価値のそれぞれ同期間の年平均成長率 6.2%、 2.6%と比較すると、より高い水準で推移している。また、情報通信産業の名目粗付加価値が我が国産業全体の名目粗付加価値に占める比率も、昭和60年が 8.0 %、2年が 8.6%及び6年が 8.8%と拡大してきている(第3-2-37図参照)。
 これらの年平均成長率について部門別に見ると、国内生産額では、国際電気通信及び情報ソフトが、粗付加価値では、情報ソフト及び情報通信機器賃貸が、特に高い成長を遂げている(第3-2-38表,第3-2-39表参照)。
 以上のように、情報通信産業は、我が国産業全体と比較して、成長率が高く、我が国産業全体に占める比率も高まりつつある成長産業であることが分かる。
 なお、情報通信産業の部門別構成比を見ると、国内生産額、粗付加価値双方とも情報関連サービス、情報通信機器製造、研究及び国内電気通信が高い比率を占めている。

イ 情報通信産業の雇用者数の動向

 情報通信産業の雇用者数の推移を見ると、昭和60年が 327万人、2年が 392万人及び6年が 401万人である。年平均増減率は、昭和60年から2年にかけてが 3.7%及び2年から6年にかけてが 0.6%であり、増加の伸びは鈍化しているものの、着実に雇用を創出していることが伺える。また、情報通信産業の雇用者数が我が国産業全体に占める比率は、昭和60年が 7.1%、2年が 7.6%及び6年が 7.3%となっている(第3-2-40図参照)。
 年平均増減率について部門別にみると、情報ソフトが特に高い水準で推移しており、6年は昭和60年に比べ、約 3.5倍で約30万人の雇用増となっている。また、国内電気通信、国際電気通信は、昭和60年から6年にかけて、雇用者数にほとんど変化がない(第3-2-41表参照)。
 なお、情報通信産業の雇用者数の部門別構成比を見ると、情報関連サービスと情報通信機器製造の情報通信産業全体に占める比率が高い。

ウ 情報通信産業の労働生産性の動向

情報通信産業の労働生産性(注48)の推移を見ると、昭和60年が雇用者1人当たり 1,591万円、2年が 2,053万円及び6年が 2,256万円で、我が国産業全体のそれぞれ同期の労働生産性 1,492万円、 1,675万円、 1,684万円と比較すると、高い水準にある。その年平均上昇率は、昭和60年から2年にかけてが 5.2%及び2年から6年にかけてが 2.4%で、我が国産業全体のそれぞれ同期間の労働生産性の年平均上昇率 2.3%、 0.1%と比較すると、極めて高い水準で推移している(第3-2-42図参照)。
 情報通信産業の部門別の労働生産性を見ると、情報通信機器賃貸、国際電気通信、放送が特に高い水準である(第3-2-43表参照)。

エ 国内生産額、粗付加価値の日米比較

 我が国と米国の情報通信産業の国内生産額及び粗付加価値を、比較可能な最新の年次である2年について「1990年日米国際産業連関表(速報)」(通商産業省)をもとに、産業連関分析の手法を用いて比較する(注49)。
 情報通信産業の国内生産額を見ると、我が国は約 6,900億ドル(約 100兆円(注50))、米国は約1兆 2,500億ドル(約 180兆円)で、米国は我が国の約 1.8倍である。粗付加価値を見ると、我が国は約 4,000億ドル(約57兆円)、米国は約 7,400億ドル(約 110兆円)で、米国は我が国の約 1.9倍である。情報通信産業の国内生産額、粗付加価値が産業全体に占める比率は、若干米国におけるウェイトが高い(第3-2-44表参照)。
 また、情報通信産業における各部門の産業全体に占める比率を比較すると、我が国においては「ラジオ・テレビ受信機」等の情報通信機器に関する部門の比率が総じて米国より高い。一方、米国においては、「通信」(電気通信)の比率が極めて高く、我が国の倍以上であり、また「教育・研究」の比率も我が国よりも高い。これらのことから我が国と比べ米国は、情報通信産業がハード部門よりソフト部門に傾いており、また、情報通信産業の中では特に「通信」部門がリードしている構造であることがわかる(第3-2-45図参照)。


第3-2-36図 情報通信産業の実質国内生産額の推移

第3-2-37図 情報通信産業の名目粗付加価値の推移

第3-2-38表 情報通信産業の部門別の実質国内生産額

第3-2-39表 情報通信産業の部門別の名目粗付加価値

第3-2-40図 情報通信産業の雇用者数の推移

第3-2-41表 情報通信産業の部門別の雇用者数

第3-2-42図 情報通信産業の労働生産性の推移

第3-2-43表 情報通信産業の部門別の労働生産性

第3-2-44表 情報通信産業の日米比較

第3-2 -45図 情報通信産業の部門別の日米比較

 

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