平成8年版 通信白書

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第2章 情報通信政策の動向

(5)  電波環境保護の促進

 ア 不法無線局未然防止策の制度拡充
 不法無線局の未然防止対策の強化を目的に、5年6月電波法の改正により、免許情報告知制度が導入された。本制度は、「指定無線設備(不法無線局に使用されるおそれの高い無線設備として郵政大臣が指定するもの)」の小売業者に対して、無線局の免許取得が必要な旨等を指定無線設備の購入者に対して告知する義務を課すことにより、無線局の不法開設を未然に防止しようとするものである。郵政大臣は、小売業者の告知義務違反を是正するための指示を行うことができ、また、この指示に必要な限度で、報告徴収及び立入検査ができることとなっている。
 本制度は、6年4月から施行され、当初は、指定無線設備として27MHz 帯又は 900MHz 帯、つまり不法市民ラジオ又は不法パーソナル無線として使用されるおそれの高い無線設備のみが対象であった。
 これに、最近、設備の改造等により重要無線通信等への混信・妨害が多発している 144MHz 帯又は 430MHz 帯の不法アマチュア無線に使用されるおそれの高い無線設備を新たに指定するため、8年3月、電波法施行規則の改正を行った。改正規則は、8年6月から施行することとしている。
 イ 電波監視施設の整備
 電波利用の拡大とともに、免許を取得せずに開設・運用する不法無線局や免許は受けているものの電波法に違反して運用している無線局が、電気通信業務、放送業務又は人命若しくは財産の保護に係る無線通信業務等の重要な無線通信等に妨害を与える事例や不要な電波による障害が多発している。
 このような状況から、多発する混信・妨害をなくし、安心して電波が利用できる環境を実現するため、5年4月から施行された電波利用料制度による電波利用料を財源として、5年度から電波の監視及び規正並びに不法に開設された無線局の探査等を効率的・効果的に行うための電波監視施設を整備している。
 (ア)  遠隔方位測定設備
 遠隔方位測定設備は、地方電気通信監理局に設置されるセンタ局及び複数のセンサ局から構成され、不法な電波の発射地点を測定しセンタ局の地図上に表示する設備である。センサ局は6年度までに29局が整備されており、7年度は、当初予算により、千葉市及び神戸市に整備され、さらに、7年度第二次補正予算により、仙台市、長野市、金沢市、広島市、松山市、北九州市及び熊本市等に整備された。8年度は、関東平野、大阪周辺及び那覇市等、合わせて12か所に整備される予定である。また、遠隔方位測定設備と衛星通信回線で接続し不法無線局を探索する不法無線局探索車は、6年度までに4台が整備されており、7年度は、当初予算により近畿地方に、さらに、7年度第二次補正予算により、東北、信越、北陸、中国及び四国地方に各1台整備された。8年度は、沖縄地方に1台が整備される予定である。
 (イ)  遠隔受信設備
 遠隔受信設備は、遠隔方位測定設備の電波監視区域を補完し、不法な電波の発射を確認する設備である。6年度までに、24か所に整備されており、7年度は、当初予算により、釧路市(北海道)、盛岡市、山形市、甲府市、大津市、松江市に、さらに、7年度第二次補正予算により、福島市、日立市(茨城県)、鳥取市、山口市及び延岡市(宮崎県)に整備された。8年度は、引き続き、遠隔方位測定設備の整備が遅れる地域を対象として14か所に整備される予定である。
 (ウ)  短波監視施設
 短波監視施設は短波帯以下の周波数の電波の到来方向を測定する設備であり、現有設備の更改及びネットワーク化により電波監視機能を向上することとしており、7年度は熊本市のセンタ局及び阿蘇町(熊本県)のセンサ局の設備が整備された。8年度は、札幌市にセンタ局及び千歳市(北海道)にセンサ局が整備される予定である。
 (エ)  宇宙電波監視施設
 近年における静止衛星軌道及び周波数の使用状況等の高密度化とともに、我が国の衛星通信システムに対する混信発生等の問題も現実的なものとなってきており、衛星通信系に対応した電波監視システムを整備することが必要となっている。
 そこで、郵政省では、7年5月に電気通信技術審議会から出された答申「宇宙電波監視システムの在り方」を基に、8年度から宇宙電波監視施設の整備に着手することとしている。
 ウ 電磁環境に関する対策
 無線機器、電子機器等から放射される電磁波により、電子機器に影響を及ぼす事例が増加しており、電子機器から放射される電磁波の抑制、電磁波に対する妨害排除能力の向上が重要な課題になっている。
 (ア)  妨害波等に対する国際的な規格等の検討
 電子機器等の製品からの妨害波等の規格、測定法については、CISPRにおいて検討されており、7年10月に南アフリカ共和国のダーバンで開催されたCISPRダーバン会議においては、各小委員会ごとに機器、装置について妨害波の許容値、妨害排除能力の基準及び測定方法を審議し、委員会原案等の作成を行った。
 (イ)  医療機関等における携帯電話の使用に関する暫定指針の公表
 近年、特に携帯電話等の急速な普及に伴い、携帯電話等から発射される電波によって医用電気機器の性能に影響を与える事例が報告されているため、その影響を明らかにするとともに、医療機関等における携帯電話の使用の在り方を検討することが緊急の課題となっている。
 こうした背景から、学識経験者、郵政省・厚生省をはじめとする関係省庁、電気通信事業者、関連工業会等で構成される不要電波問題対策協議会では、上記の課題を専門に検討する医用電気機器作業部会を7年12月に設け、検討を行ってきたが、8年3月、「携帯電話等の使用に関する暫定指針」を取りまとめた。本指針は、暫定指針であるが、今後、本協議会等を通じ、携帯電話等の使用者及び医用電気機器の使用者に十分周知させ、9年3月を目途に広範な実証試験等に基づいた詳細な指針を検討していくこととしている。

 

 

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