平成8年版 通信白書

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第3章 情報通信が牽引する社会の変革―「世界情報通信革命」の幕開け―

(3)  情報通信の高度化による産業の新たな展開

 以下では、特に、情報通信の高度化により高い成長が期待できる産業分野として企業活動支援関連分野、学習関連分野、医療関連分野及び余暇関連分野について取り上げる。

ア 企業活動支援関連分野

 企業活動支援関連分野では、特に、企業活動の海外展開にともなって、中小企業がインターネット等の情報通信を利用して海外の現地スタッフを活用した翻訳サービスを低コストで提供するなど、情報通信を利用した新しいビジネスが生まれてきている。
 (インターネットを利用した米国情報提供サービスの事例)
 千葉県のある通信社は、個人経営の中小企業であり、サイドビジネスとして、米国企業が発表した文書を毎日数本翻訳し、契約先のコンピュータにインターネットで届けるビジネスを行っている。提供される情報源は、米国のオンライン情報サービス会社がパソコン通信ネットに配信している企業リリースであり、インターネット関連の記事を中心とした情報通信関連ニュースを選び、翻訳して配信する。現在は、大手電気通信関連企業30社と契約している。

イ 学習関連分野

 学習関連分野では、人々の生涯学習に対する個別のニーズの高まり等から、パソコン通信等の情報通信を利用した在宅学習システム等の新しいビジネスが生まれてきている。
 (パソコン通信を利用した在宅学習システムの事例)
 東京都のある教育ソフトウェア会社は、パソコン通信を利用した在宅学習システムを開始した。同サービスは、会員制であり、会員の自宅にあるパソコンと講師がいる同社センターにあるホストコンピュータとをネットワークで結んでおり、会員は、自宅で好きな時間にパソコンに向かい学習に取り組むことができる(第3-2-14図参照)。
 講師は、1人で会員約70人を担当して、各会員の学習状況やデータをオンラインで把握できる。また、会員側も学習中に疑問がわけば電子メールで質問を講師に送ることができるようになった。また電子メールや電子掲示板を使って、会員同士が勉強の悩み事や学校の話題について情報交換を行っている。

ウ 医療関連分野

 医療関連分野では、少子・高齢化の進展にともない、情報通信を利用した遠隔画像診断支援等、医師の診断を支援する新しいビジネスが生まれてきている。
 (遠隔画像診断支援システムの利用事例)
 東京都のある警備会社では、主治医及び読影医の業務支援を行う遠隔画像診断支援システムを構築して医師向けに提供している。これにより、1台当たり数億円するMRI及びCT等の高額医療機器を有効に利用して質の高い医療サービスを行いたい主治医側のニーズ、信頼性の高い診療を受けたい患者側のニーズ、遠隔地の医療機関を毎日変えて訪問する手数を避けたい読影医側のニーズを満足させている(第3-2-15図参照)。
 本システムは、全国約60の医療機関及び共同クリニックから直接センタにISDNで接続する構成となっており、MRI、CTによる診察は、最大待ち時間が1週間から1日(最短2時間程度)に短縮された。また、MRI、CTは、従来、1日8時間しか利用できなかったが、24時間いつでも利用可能になった。

エ 余暇関連分野

 余暇関連分野では、人々の余暇時間の増加に伴う様々な余暇活動への参加が進みつつある中で、家庭用通信カラオケやインターネットを自由に利用できるインターネットカフェ等の情報通信を利用した新ビジネスが生まれてきている。
 (家庭用通信カラオケの事例)
 東京都のある通信カラオケメーカーは、7年10月から、家庭用通信カラオケ端末を利用したデータ配信サービスを開始した。
 同サービスは、カラオケサービスのほか情報サービス、ゲームサービスの提供も行っている。ユーザーは、アナログ公衆回線を利用して、最寄りのデータベースにアクセスする。このデータベースは、サービス開始当初は、全国10か所であったが、9年3月までに全国31か所に拡大する予定である(第3-2-16図参照)。


第3-2-14図 在宅学習システムの概要

第3-2-15図 遠隔画像診断支援システム図

第3-2-16図 家庭用通信カラオケの利用システム図

 

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