平成8年版 通信白書

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第3章 情報通信が牽引する社会の変革―「世界情報通信革命」の幕開け―

(3)  日米欧のアジア・太平洋地域への展開

 アジア地域における近年の経済成長は目覚ましく、通信インフラの需要も高まってきている。しかし、開発途上国では政府による開発支出としては、エネルギー及び輸送分野への支出額が、依然大きくなっている。これに対して、情報通信分野への支出は、政府の開発支出に占める比率は概して増加傾向にあるものの、その額自体は依然小さい。
 そこで、通信インフラは独立採算事業として経済性に優れたインフラとなってきていることもあり、民間活力の活用による通信インフラの整備が注目されてきている。国営事業体の民営化の実施やBOT(Build Operate & Transfer)やBTO(Build Transfer & Operate)による通信網整備を行うケースが見られる (注39)。このような状況の中、有望な情報通信市場であるアジア・太平洋地域への日米欧キャリアの事業展開が活発となっている。 

ア BOT等によるプロジェクトへの展開事例

 (ア)  インドネシアにおける事例
 インドネシア政府は、国内を7地域に分割し、PTテレコムが運営するジャカルタ首都圏とスラバヤを除く5地域において外国資本を導入した国内電話網を整備することを決定した。これは、15年の運営期間終了後、PTテレコムが全ネットワークの所有と運用を引き継ぐものである。
 現在、国内電話回線敷設に関するコンソーシアムが各地域で作られており、日米欧からは、NTT、USウエスト、フランス・テレコムが参加している。なお、これらコンソーシアムには、シンガポール・テレコムが日米欧に対抗して参加している。
 (イ)  タイにおける事例
 タイでは、電気通信網建設に要する資金調達が年々困難となってきていることから、バンコク首都圏及び地方エリアでの増設がBTO方式により進められている。
 バンコク首都圏においては、1991年8月、タイの財閥CPグループとナイネックスとのコンソーシアムであるテレコムアジア社にライセンスが与えられ、1993年から1997年にかけて順次建設を行う計画である。
 また、1992年7月、NTTが一部出資しているTT&Tにライセンスが与えられ、1994年から1997年にかけて順次建設を行う計画である。 

イ その他の日米欧キャリアのアジア・太平洋地域への展開事例

 ニュー・ジーランドでは、1990年のテレコム・ニュー・ジーランドの民営化に際し、アメリテックとベル・アトランティックがコンソーシアムを組み落札し、1995年現在、同コンソーシアムは、テレコム・ニュー・ジーランドの株式の約25%を保有している。
 インドでは、地域電話サービスへの競争導入のため地域電話の新規免許の入札に対し、AT&T及びナイネックス等のRHCを中心とする各国の企業が応札している。また、GSMサービスについて、ベル・サウスがマドラス地域で、フランス・テレコムがボンベイ地域で各合弁会社に資本出資するなど、欧米のキャリアの展開が見られる。なお、香港のハッチソン・テレコム、テレコム・マレイシアもGSMサービスの合弁会社に出資している。各社は、1995年7月から順次営業を開始している。また、同国は、ソフトウェア開発の上で充実した人材をもっており、情報通信のソフトウェアの輸出は高い成長率を示しており、オンラインでの輸出も行っている。バンガロールには、米国やカナダのメーカーがソフトウェア開発の拠点を置いている。
 アジア地域では、静止衛星を利用した移動通信サービスを提供するための合弁会社の設立がみられる。シンガポールテレコム、中国郵電部等がシンガポールで設置した合弁会社であるアジア太平洋移動体通信(APMT)サテライト社は、パキスタンから日本、中国、インドネシアまでをカバーする計画である。また、インドネシアのパシフィック・サテリット・ヌサンタラ社、フィリピン・ロング・ディスタンス・テレフォン社等の合弁会社であるACeSは、アジア全域をカバーするものであり、1998年からサービス開始の予定である。日本からも大手商社がこれらの計画に参加意向を示している。
 従来の固定電話網を敷設するためには膨大な経費と時間がかかるのに対し、PHS等の携帯電話は小型の基地局を設置すれば通信が可能となるため、開発途上国では通信インフラ整備の観点からその導入が進められている。これに対応して、1995年10月、NTTDoCoMoは、C&W等と日本の簡易型携帯電話の標準方式であるPHSを国際展開するための合弁会社の設立を発表した。このほか、オーストラリア、香港、シンガポールでもPHSが採用されることが決定されており、中国では清華大学が自国における実用性を探るための実験を行うため周波数使用許可を取得している。

 

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