平成8年版 通信白書

本文へジャンプ メニューへジャンプ
トップページへ戻る
操作方法


目次の階層をすべて開く 目次の階層をすべて閉じる

第3章 情報通信が牽引する社会の変革―「世界情報通信革命」の幕開け―

(4)  情報通信の利用による企業の機能分散及び地域での起業

ア 企業の地方展開の可能性

 国土庁の「就業環境の変化と企業の対応等を踏まえた人口の社会移動の展望に関する調査」(注65)(6年3月)によると、「事業所の立地、人材配置」に関して「首都圏以外を現在より重視する」と回答した企業が34.2%あり、そのうち、首都圏以外で重視する地域は、「地方中枢都市」(札幌、仙台、広島、福岡)が32.3%、「その他の地域」(3大都市圏と地方中枢都市以外)が38.5%となっている。また、「事業所の立地の見直し」に関して、「見直す」と回答した企業が31.7%あり、そのうち、本社機能移転の可能性について、「移転する可能性がある」企業が、25.8%、「一部のみ移転する可能性がある」企業が33.7%ある。さらに、「事業所の地方展開に最も必要な社会資本」としては、「地方都市での都市基盤整備」に次いで「全国規模での高度情報通信網の整備」が多くなっている(第3-3-25図参照)。 

イ テレワークセンターへの期待

 情報通信を活用して仕事を行うテレワークが最近注目されており、テレワークによる在宅勤務等を利用して企業の機能分散も可能となる。郵政省の委託調査による「地方公共団体に対するテレワークセンターのニーズ調査」(注66)(6年6月)によると、テレワークセンターに関心がある地方公共団体は、73%にのぼっている(第3-3-26図参照)。また、地域においてテレワークセンターが必要だと思われる理由として、雇用機会の拡大、地域経済・産業の活性化を期待する回答が多くなっている(第3-3-27図参照)。

ウ 利用事例

 東京都のある日用品製造業の会社は、国内9か所に分散する工場の操業を1か所でコントロールし、あたかも一つの工場として機能しているようなバーチャルファクトリーの構想を持っている。7年4月から和歌山工場(和歌山県)と九州工場(福岡県)を高速デジタル回線で結び、和歌山工場から九州工場を遠隔制御し、製造工程において、バルブやポンプの開閉等をコントロールする実験を行っている。この会社では、9年3月まで実験を行い、以後全国の各工場をネットワーク接続する計画である(第3-3-28図参照)。
 広島県のある家電小売業の会社は、インターネットを利用した洋書の販売事業を6年2月から開始している。この会社では、洋書販売において無在庫販売の形態をとり、5名で事業を行っている。注文を受けた洋書は、提携している米国の書店から直接顧客に届ける仕組みで、決済もクレジットカードが中心になっている。この会社が行うのは、インターネット等による注文を取次ぎ米国の書店に発注するというオペレータ的な役割である。インターネットを利用することにより、広島県にいながら全国規模の展開が可能となっている。
 郵政省の補助金を受け設立された山形県のあるテレワークセンターでは、6年8月から電話回線を利用したパソコン通信によりモンゴルとの間での翻訳業務を行っている。この翻訳業務は、日本国内からの依頼原稿をパソコン通信、ファクシミリ、郵便で受け付け、その原稿をパソコン通信でモンゴルへ送り、モンゴルの現地スタッフが翻訳するものである。今後は、モンゴルのみならず韓国、中国等ともネットワークを広げ、翻訳業務の拡大を図っていくこととしている。この地域は過疎地域等に指定されており、テレワークという勤務形態をとることにより、都心で仕事をするのと変わらない就労環境が整うことになる。また、このような条件不利地域における起業により地域活性化、人材確保が期待されている。

第3-3-25図 事業所の地方展開にもっとも必要な社会資本

第3-3-26図 地方公共団体のテレワークセンターに関する関心度

第3-3-27図 地域においてテレワークセンターが必要だと思われる理由

第3-3-28図 バーチャルファクトリーのシステム概要

山形県のテレワークセンター

 

(3) インターネットを利用した地域からの情報発信 に戻る (5) 非常災害・緊急事態における情報通信の役割 に進む