平成8年版 通信白書

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第3章 情報通信が牽引する社会の変革―「世界情報通信革命」の幕開け―

(4)  情報通信産業の成長の要因分析

 ここでは、情報通信産業の成長が、我が国経済の規模の拡大、産業構造の変化等といったいくつかの要因のうち、どのような要因に起因しているのかを、産業連関分析により明らかにする。また、情報通信産業の中核部門である国内電気通信、国際電気通信及び放送については、個別に要因分析を行った。
 要因分析の方法としては、情報通信産業の需要構造から、情報通信産業の国内生産額の変化を第3-2-51表のとおりの要因に分解して分析することとした。

ア 情報通信産業の成長の要因分析

 情報通信産業の成長を要因分解した結果は、第3-2-52図のとおりである。
 情報通信産業の国内生産額の成長の要因は、昭和55年から6年まで一貫して中間需要要因の方が最終需要要因に比べ大きく、特に2年から6年にかけては、ほとんどが中間需要要因であった。
 中間需要要因の内訳を見ると、中間投入係数変化要因は一貫して高い寄与率を見せており、特に2年から6年にかけては、73.7%と成長に大きく寄与している。これは、我が国産業全体が、情報通信産業の産出する財・サービスに依存する度合いが高まってきていることを表していると考えられる。
 中間需要規模要因について見ると、昭和60年から2年にかけて寄与率が大きくなっているが、この時期はバブル経済期で、我が国経済の規模が大きく拡大しており、その影響を受けていたことがわかる。2年から6年にかけてはバブル経済の崩壊とともに、中間需要規模要因の寄与率は大きく落ち込み、むしろマイナスの寄与率となっている。
 産業構造変化要因について産業別に見ると、素材型製造業の寄与率は一貫してマイナスであり、産業構造変化要因全体がプラスで寄与しているにもかかわらず、素材型製造業からの需要は大きく減少し続けている。また、情報通信関連以外の加工型製造業の寄与率が、2年から6年にかけてはマイナスに転じており、加工型製造業からの需要が急激に減少している。その一方で、第3次産業の寄与率が2年から6年にかけて大きく増加しており、第3次産業の成長に伴い情報通信産業も成長している。
 最終需要要因の内訳を見ると、その中で民間最終消費のみが安定してプラスの寄与をしている。特に2年から6年にかけては、他の最終需要要因がマイナスの寄与である中で、17.6%の寄与率となり、景気後退の中でも民間最終消費が情報通信産業の生産を下支えしている様子が伺われる。これは、価格・料金の低下等から、生活の中に情報通信が浸透してきていることを反映したものと考えられる。

イ 国内電気通信業の成長の要因分析

 国内電気通信業の成長を要因分解した結果は、第3-2-53図のとおりである。
 昭和55年から昭和60年にかけては、国内電気通信業の成長の62.8%が最終需要要因による寄与であった。しかし、昭和60年以降は中間需要要因の寄与率が最終需要要因を逆転し、昭和60年から2年にかけては76.7%、2年から6年にかけては60.5%となった。これは、昭和60年の電気通信自由化を境として、産業の情報化が大きく進んだことを表している。
 最終需要要因の内訳を見ると、そのほとんどが民間最終消費による要因であり、国内電気通信業の成長において重要な役割を果たしていることが分かる。

ウ 国際電気通信業の成長の要因分析

 国際電気通信業の成長を要因分解した結果は、第3-2-54図のとおりである。
 国際電気通信業の成長は、大部分が中間需要要因によるもので、寄与率は昭和55年から昭和60年にかけてが93.2%、昭和60年から2年にかけてが83.6%、2年から6年にかけてが 129.2%であった。これは、企業のグローバル化に伴って、産業における国際電気通信サービスの利用が増大してきたことを表している。
 一方、最終需要要因の内訳を見ると、民間最終消費は、昭和55年から昭和60年まで寄与率は 5.1%と小さかったが、昭和60年から2年にかけてが24.8%、2年から6年にかけてが16.8%と寄与率が高くなっている。これは、昭和60年の電気通信自由化後、通信料金の大幅な低廉化により個人の利用が増加したことを表している。

エ 放送業の成長の要因分析

 放送業の成長を要因分解した結果は、第3-2-55図のとおりである。
 放送業の成長は、2年以前は9割近くが中間需要要因であったが、2年から6年にかけては最終需要要因が39.5%を占めるに至っている。
 このうち、中間需要要因の内訳を見ると、特に産業構造変化要因は、2年から6年にかけて寄与率が 121.0%となり、大きく上昇している。これは、産業構造変化要因のうち情報関連サービスにかかる要因がこの期間に急激に伸びていることによるものであり、情報関連サービス業の成長が放送業の成長に貢献していることを表している。また、中間投入係数変化要因は一貫してマイナスの寄与が続いている。これは、情報関連サービスの多様化・拡大により、広告業の費用構造における放送業のウェイトが低下したこと、つまり、広告代理店等において広告以外の、情報関連サービスに関連する業務が拡大していることを反映している。
 最終需要要因については、そのほとんどが民間最終消費による要因であるが、2年から6年にかけて、その寄与率は38.3%と大きく増大した。これは、衛星放送やケーブルテレビの普及により、有料放送という放送業への消費が増加したためで、放送業の需要構造が2年から6年にかけて変化してきていることを表している。


第3-2-51表 情報通信産業の成長の各種要因

第3-2-52図 情報通信産業の国内生産額の成長の要因分解

第3-2-53図 国内電気通信業の国内生産額の成長の要因分解

第3-2-54図 国際電気通信事業の国内生産額の成長の要因分解

第3-2-55図 放送局の国内生産額の成長の要因分解

 

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