平成8年版 通信白書

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第1章 平成7年情報通信の現況

2 国際情報通信の動向

 (1)  電気通信サービス

 ア 国際電話サービス
 (ア)  取扱地域
 我が国における国際電話サービスの取扱地域(注3)は、7年度末現在で 232地域である。
 このうち国際ダイヤル通話サービスの取扱地域は、7年度に新たにチャード、中央アフリカ及びアルバニアが加わり、7年度末現在 224地域に拡張され、国際ダイヤル通話の取扱率は国際電話サービスの全取扱地域の96.6%に達している。
 国際VPNサービスは、KDDにより3年度から企業等に向け取扱が開始され、一般の国際電話網上で我が国と海外の拠点を国際内線番号で結び、利用者独自の国際通信網を構築するサービスである。7年度末現在、本サービスはKDDのほかITJ、IDCにより提供されており、取扱地域は7年度に新たに3地域が加わり、26地域に拡張されている。
 海外から日本への国際電話をプリペイドカードの利用、クレジットカード払い又は着信人払いにより提供するサービスは、国際電話の利用機会の促進や利便性の向上に資するため、海外旅行者や出張者等を対象に提供されている。7年度末現在、このサービスのうち、オペレータが接続するサービスについてはKDD、IDCにより提供されており、取扱地域は73地域に、ダイヤル直通によるサービスについてはKDD、ITJ、IDCにより提供されており、取扱地域は49地域に拡張されている(第1-1-37表参照)。
 (イ)  トラヒック
 6年度における国際電話サービスの発着信合計分数(KDD、ITJ及びIDCの合計)は、26億 6,540万分(対前年度比11.4%増)となっている。
 これを発着別に見ると、我が国からの発信分数は15億 2,480万分(同 8.0%増)であり、また、我が国への着信分数は11億 4,060万分(同16.2%増)である。発着信分数の比率は57:43であり、5年度に引き続き発信分数が着信分数を上回っているが、対前年度伸び率では、5年度に引き続き着信が発信を上回っている。
 取扱地域別に全体に占める割合を見ると、発着信合計分数では、5年度に引き続き米国との通話が全体の28.6%と最も大きな割合を占めている。以下、アジアNIEs、ASEAN諸国等が上位を占め、また、それぞれの割合も5年度とほぼ同様となっており、これらの国等と我が国の関係の深さが読み取れる。また、第3位の中国が全体に占める割合で対前年比 1.1ポイント増と大きく割合を伸ばしており、特に、発信では韓国を抜いて2位に、着信では台湾を抜いて3位となっている。また、フィリピンが台湾を抜いて第4位となっている(第1-1-38図参照)。
 イ 国際ISDNサービス
 国際ISDNサービスは、デジタル回線により大量かつ高品質の情報を伝送できるため、電話、ファクシミリ、パソコン等様々な端末を接続し、海外の利用者端末との間で、音声伝送、G4ファクシミリ、LAN間通信、テレビ会議等に利用されているサービスである。
 国際ISDNサービスの提供は、元年10月KDDにより、4年12月ITJにより、5年7月IDCによりそれぞれ開始されている。
 取扱地域は、7年度に新たに7地域が加わり、7年度末現在34地域に拡張されている。
 ウ 国際専用サービス
 (ア)  国際専用回線サービス
 国際専用回線サービスの取扱地域は、7年度末現在 103地域である。
 7年8月、KDDにより稼働率保証付きの国際専用回線サービスが導入された。本サービスでは、高水準のネットワーク稼働率を保証し、月ごとの累積稼働時間が一定の保証稼働率を下回る場合、現行の料金返還に加え特別条件での料金返還を行っており、より一層の利用者の利便性の向上が図られている。
 また、7年10月、パシフィック・センチュリー・コーポレイト・アクセス・プライベート・リミテッド(現ハチソン・コーポレート・アクセス・プライベート・リミテッド)が、新規に本サービスの提供を開始した。
 国際専用回線サービスの6年度末総提供回線数(KDD、ITJ及びIDCの合計)は、 1,644回線(対前年度末比 1.9%減)となっている。これを品目別にみると、音声級回線(帯域品目で電話等に利用)は 285回線(同13.1%減)、電信級回線(速度200b/s以下の符号品目でテレタイプ通信等に利用)は 212回線(同13.5%減)と、音声級回線は昭和62年をピークに、電信級回線も昭和56年をピークに引き続き減少傾向となっている。これに対し中・高速符号伝送用回線(通信速度1,200b/s〜6Mb/s の回線で、ファクシミリ、データ伝送、高速ファイル転送、テレビ会議等に利用)は、 1,147回線(同 4.0%増)と前年に引き続き増加し、総提供回線数に占める割合も対前年度比 4.0ポイント増の69.8%となっている。以上のように国際専用回線サービスにおいては、企業等の利用者による海外との高速ファイル転送、データ伝送等の需要増に呼応する形で、大容量回線への需要のシフトが近年の顕著な傾向として定着している(第1-1-39図参照)。
 回線数が増加している中・高速符号伝送用回線の6年度末の回線数について、取扱地域別に見ると、米国との回線数が最も多い点は前述の国際電話サービスで見られた傾向と同様であるが、全体に占める割合は35.0%と、対前年度比 2.3ポイント減となっている。以下、全体に占める割合で上位を占める6地域の構成は5年度に引き続き変わらないものの、香港及び英国がわずかながらその割合を減少させている。一方、シンガポール、韓国、オーストラリアが占める割合は増加していることがわかる。また、中国が大幅に増加(対前年度末比 164.3%増)し、第7位となっている(第1-1-40図参照)。
 (イ)  国際映像伝送サービス
 国際映像伝送サービスは、高品質のテレビジョン映像を通信衛星経由で伝送するサービスであり、これを利用して放送局の衛星中継等が行われている。
 本サービスはKDDがインテルサット衛星により提供してきたが、5年10月、ITJが初めて民間衛星により本サービスの提供を開始し、7年4月には、KDDも民間衛星の利用によるサービスの提供を開始している。また、7年には民間衛星を利用し本サービスの提供を新規に開始する事業者が相次ぎ、7年7月に(株)日本サテライトシステムズ、7年8月に宇宙通信(株)、7年11月にパン・アム・サット・コーポレーション、7年12月にIDCが、それぞれ提供を開始している。
 取扱地域は、7年度末現在、 136地域となっている。
 エ 国際デジタルデータ伝送サービス
 (ア)  国際フレームリレーサービス
 国際フレームリレーサービスは、フレームリレー方式により、64kb/s〜 1.5Mb/s までの通信速度に対応した、国際間のLAN間通信等に用いられるデジタルデータ伝送サービスである。
 国際フレームリレーサービスの提供は、第二種電気通信事業者では、5年2月、ネットワーク情報サービス(株)により開始され、8年3月末現在、8社により行われている。第一種電気通信事業者では、KDDにより6年4月、試験役務の提供が、続いて7年4月には本サービスの提供が開始され、また、IDCにより7年12月、サービスの提供が開始された(第1-1-20図参照)。
 (イ)  インターネット接続サービス
 インターネット接続サービスは、インターネットプロトコルにより、米国を中心に発展してきたインターネットへのアクセスを提供するサービスである。
 インターネット接続サービスの提供は、第二種電気通信事業者では、4年11月、日本イーエヌエス・エイティアンドティ(株)により開始され、7年12月末現在、 278社により行われている。第一種電気通信事業者では、7年4月、KDDにより試験役務で行われている。
 オ インマルサット海事衛星通信サービス
 海事衛星通信サービスは、船舶に船舶地球局設備を搭載し、赤道上に打ち上げられたインマルサット衛星と海岸地球局を通じて、船舶と陸地間又は船舶相互間の通信を行うサービスであり、KDDにより提供されている。
 本サービスにより、船舶との間の通信の充実、船舶の航行安全、運行管理の効率化等が図られている。また、海上における人命及び船舶の安全の確保を目的に、遭難・緊急通信料金及び安全通信料金(船舶発)の無料化が図られている。
 本サービスには、通信方式及び使用する設備により、利用可能なサービスが異なるインマルサットA・B・C・Mサービスシステムがある。
 また、7年度には次のような新サービス・機能が追加された。
 (ア)  インマルサットCサービスの新機能の追加
 8年1月、あらかじめ登録したインマルサットC設備に対し、陸側の設備から信号を発信すると、当該インマルサットC設備から自動的に陸側の設備にメッセージを返信させることができるポーリング/データレポーティング機能及び陸側の設備からメッセージを一斉同報するフリーネット機能の取扱いが開始された。
 (イ)  インマルサットA-HSDサービス
 8年2月、インマルサットAサービスシステムのうち、ISDNを利用して高速データ通信を可能とするインマルサットA-HSDサービスが開始された。
写真
 カ 国際テレックスサービス及び国際電報サービス
 国際テレックスサービス及び国際電報サービスは、KDDにより提供されている。世界中のほとんどすべての国との通信が可能であること、専用網による記録通信として確実な通信手段であることから、企業を中心として利用されている。
 6年度における取扱数は、それぞれ国際テレックスサービスが 707万回(発着信合計、対前年度比21.3%減)、国際電報サービスが27万通(同、対前年度比18.2%減)となっており、いずれも減少傾向である。
 キ 国際ファクシミリ通信サービス
 国際ファクシミリ通信サービスは、利用者のファクシミリ端末から送信された情報を、事業者設備を経由し独自の通信網を通じて相手先に送達する蓄積型サービスであり、課金を送信ページ単位とした料金体系により経済的な利用が図られるばかりでなく、自動再送信・同報通信・時間指定送信等の付加機能も利用することができる。
 取扱地域は、昭和62年7月にKDDにより取扱いが開始されて以来順次拡張され、7年度末現在 128地域である。
 ク 国際電気通信回線設備
 我が国と米国西海岸を太平洋上でループ状に結ぶTPC-5CNの全区間のうち、7年7月には日本-グアム間及びハワイ-米国本土間が、続いて7年12月にはグアム-ハワイ間が開通し、南回りの全区間について運用が開始された。このように、我が国と世界を結ぶ国際電気通信網は、年を追うごとに拡充されてきている(第1-1-41図参照)。
 ケ 国際電気通信料金
 国際電気通信サービスにおいては、事業者間の競争、通信量の増加、技術革新等の企業努力によるコスト削減効果等により、継続的に料金の低廉化が進んでいる。7年度においても、国際電話サービス、国際専用サービスはもとより、その他の多様なサービスについても料金値下げが実施されている。
 日本銀行が発表した「物価指数月報」によると、2年の全サービス業の総平均を 100とすると、7年7月〜9月においては、全サービス業平均の指数は 102.8であり、 2.8ポイント上昇しているのに対し、国際電気通信全体の指数は89.9であり、10.1ポイント低下している。特に、国際専用回線(7年7月〜9月平均の指数87.5)、国際電話(同89.1)の指数が大きく低下している(第1-1-42図参照)。
 (ア)  国際電話サービス
 国際電話サービスの料金については、7年4月、主に個人等小口利用者を対象とし、月間利用額に応じて定額が還元されるサービスがKDDにより導入され、利用者の通信量及び利用形態に応じた料金選択の幅が広げられた。
 また、料金の値下げが7年11月、KDDによる国際ダイヤル通話及びオペレータ通話(うち我が国発信の国際ダイヤル通話の平均値下げ率 6.5%)について、12月にはITJによる国際ダイヤル通話(同 6.3%)並びにIDCによる国際ダイヤル通話及びオペレータ通話(同 7.0%)について、それぞれ実施された。
 さらに、主に個人を対象として提供される特定通話先に係る割引サービスについて、基本料金の引下げ及び割引率の拡大が、8年1月、KDDにより、8年2月、ITJ及びIDCにより、それぞれ実施された。
 (イ)  国際専用サービス
 国際専用回線サービスの料金については、7年5月、KDDにより回線使用料の値下げ(平均値下げ率 4.6%)が実施された。
 国際映像伝送サービスの料金については、KDDにより、テレビジョン伝送サービスについて、7年10月、値下げ(平均値下げ率14.0%)及び国際テレビジョン長期サービスの利用者に対する本サービスの伝送料の割引き制度の導入が実施され、国際テレビジョン長期サービスについては、7年4月及び6月、値下げが実施された。
 (ウ)  国際デジタルデータ伝送サービス
 国際公衆データ伝送サービスの料金については、7年11月、KDDにより固定料金制の導入等料金体系の変更が実施された。
 国際フレームリレーサービスの料金については、8年1月、KDDにより国際加入ポート料の値下げ(平均値下げ率25.0%)が実施された。
 (エ)  インマルサット海事衛星通信サービス
 インマルサット海事衛星通信サービスの料金については、8年3月、KDDにより、料金体系の簡素化及び料金の値下げ(平均値下げ率 6.0%)が行われた。
 (オ)  国際ファクシミリ通信サービス
 国際ファクシミリ通信サービスの料金については、7年11月、KDDにより月ぎめ割引制度が導入されると同時に、 112地域につき料金の値下げ(値下げ率は地域により 7.0〜11.0%)が実施された。続いて8年1月、KDDにより16地域につき料金の値下げ(平均値下げ率11.0%)が実施された。


第1-1-37表 主な国際電話サービスの取扱地域拡張状況(7年度)

第1-1-38図 取扱地域別国際電話取扱量比

第1-1-39図 国際専用回線サービス回線数の推移

第1-1-40図 取扱地域別国際専用回線数比(中・高速符号伝送用回線)

第1-1-41図 世界の国際電気通信網

第1-1-42図 企業向けサービス価格指数の推移(国際電気通信)

インマルサットA-HSD可搬設備

 

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