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特集② 進化するデジタルテクノロジーとの共生
第1節 AI進展の経緯と生成AIのインパクト

(1) 第1〜3次AIブームと冬の時代

ア 第1次AIブーム(1950年代後半〜1960年代):推論・探索の時代

AIという言葉は、1956年に開催されたダートマス会議にて、アメリカの大学教授であったJ. McCarthyにより提唱された。人工知能の概念が確立し、科学者たちにAIという言葉が認知されるようになり、「推論」と「探索」の研究を中心に1960年代からAIの研究開発が活発化した。「推論」は、人間の思考過程を記号で表現し実行するもの、「探索」は、目的達成のために手順や選択肢を調べ、最適な解決策を見つけ出すもので、解くべき問題をコンピュータに適した形で記述し、探索木などの手法によって解を提示するものである。しかしながら、コンピュータの性能面で計算能力やデータ処理には限界があり、人間の知能のモデル化が困難であったため、当時のAIは「トイ・プロブレム」と呼ばれる簡単なパズルや迷路のような問題しか解くことができず、その実用化には課題があり、次第に冬の時代を迎えた。

イ 第2次AIブーム(1980年代から1990年代):知識の時代

1980年代には、コンピュータの高性能化が進み、エキスパートシステム1の登場により、各国でAIの研究開発が再び活発化した。ただし、コンピュータに学習させるデータ量が膨大であったため、当時のコンピュータの性能では処理ができず、専門家の知識の一部を模倣するに留まり、複雑な問題への対処ができないなどの課題があった。さらに、学習データを人間の手でコンピュータが理解できるように記述する必要があり、大変な労力を必要とした。そのため、AIの研究は再び冬の時代を迎えた。

ウ 第3次AIブーム(2000年代〜):機械学習の時代

1990年代にウェブサイトが公開され、2000年代に入ると家庭向けにもネットワークが普及しはじめ、データ流通量が飛躍的に増加し、研究に使用できるデータを大量に入手することができるようになった。さらに、コンピュータの演算処理能力が向上したことにより、膨大な情報(ビッグデータ)の処理が可能となったことが大きな要因となり、機械学習が進化し、今日に至る第3次AIブームを迎えた2。機械学習の手法の1つであるディープラーニング(深層学習)は、AIのプログラムに人間の脳の仕組みをシミュレートさせるニューラルネットワークという考え方を発展させた技術である。ディープラーニングにより、画像認識や自然言語処理、シミュレーションなどができるようになり、カメラの画像から人間の顔を識別することや、ロボットの自律運転の最適化などへの活用が広がった34



1 エキスパートシステム:特定の問題に対して専門知識を持ち専門家のように事象の推論や判断ができるようになったコンピューターシステム。

2 亀田健司,「第三次人工知能ブームはなぜ起きたのか(第1回)第三次人工知能ブームを起こした3つの波」,『BIZ DRIVE』2018年2月28日,NTT東日本,<https://business.ntt-east.co.jp/bizdrive/column/dr00074-001.html別ウィンドウで開きます>(2024/3/22参照)

3 亀田健司,「第三次人工知能ブームはなぜ起きたのか(第3回)人工知能の常識を変えたディープラーニングとは何か」,『BIZ DRIVE』2018年4月16日,NTT東日本,<https://business.ntt-east.co.jp/bizdrive/column/dr00074-003.html別ウィンドウで開きます>(2024/3/22参照)

4 NTT東日本,「ディープラーニング入門|仕組みやできることから導入の流れまで解説」2022年8月3日,<https://business.ntt-east.co.jp/content/cloudsolution/column-306.html別ウィンドウで開きます>(2024/3/22参照)

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