無線LANは、IEEE(米国電気電子学会)において策定された標準規格が、スマートフォンやタブレット端末等に組み込まれ世界的に使用されている。駅・空港・観光スポット・商業施設・学校等の公共の場にアクセスポイントが設置され、オフィスや家庭のみならず、屋外のサービスや学校教育での利用、災害被災地での通信確保等、社会インフラとして国民の重要な通信インフラの一つになっている。
総務省では、諸外国での導入状況や国内のニーズ等を踏まえ、無線LANの高度化に係る検討を継続的に行っている。近年では世界的に無線LANに利用可能な周波数帯の拡張が進められる等、非常に利用密度が高い輻輳環境であっても安定して高速大容量通信ができるように、新たな技術の検討や導入が進められている。このような状況を受け、2022年(令和4年)には、2.4GHz帯や5GHz帯に加えて6GHz帯を利用可能とする制度整備を実施した。また、低遅延かつ超高速通信が可能となる次世代の無線LAN規格(IEEE 802.11be)の我が国での導入のための技術的条件について審議し、2023年(令和5年)12月に無線設備規則(昭和25年電波監理委員会規則第18号)等の改正を行った。これら6GHz帯への利用拡大や最新技術となるIEEE 802.11beの実現により、今後、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)/MR(複合現実)を使ったサービスやeスポーツ、工場内のロボットアーム制御といったリアルタイムの動作が要求される利用シーンにおいて、新たなサービスやアプリケーションの創出をもたらすことが期待される(図表Ⅱ-2-3-6)。
また、無線LANの技術を活用したドローン等の利用拡大により、無線LANを組み込んだ機器の屋外・上空利用のニーズが増えている。その一方で、屋外等で使用できる周波数チャネルの数が不足しているため、2023年(令和5年)から5GHz帯の屋外等での利用拡大に向けた検討を行っており、2024年度(令和6年度)にかけて、順次制度化に向けた検討を進めている。
さらに、将来のモバイル通信のトラヒック増や多様な利用ニーズに対応可能な無線LANシステムの実現に向けて、6GHz帯の更なる周波数拡張を目標に、屋外での利用も含め他の無線システムとの共用検討を進めている。