国連の専門機関の一つである万国郵便連合(UPU)では、世界の郵便ネットワーク・サービスの発展を実現し、国際郵便に係る利便性の一層の向上を図ることによって文化、社会及び経済の分野における国際協力に寄与することを目的として1874年(明治7年)に設立され、2024年(令和6年)に150周年を迎える。近年では、新型コロナウイルスのパンデミック後も国際郵便物の取扱総量が回復していない厳しい状況の中、越境電子商取引の拡大に対応した適切な国際郵便の枠組の策定を担う機関として、国際物流の発展に大きな役割を果たすことがより期待されている。
このような中、2022年(令和4年)1月から、我が国の目時政彦氏がUPUの事務局長(任期:1期4年間、最大で2期まで可能)を務めており、UPUにおける様々な取組を牽引していくことが期待されている。
総務省としても、目時事務局長のリーダーシップを積極的に支え、UPUへの更なる貢献を図る観点から、UPUとの間の協力覚書に基づき、災害に強い郵便ネットワーク構築の取組や、郵便ネットワークの経済的、社会的活用等への取組支援、環境への負荷の少ない郵便ネットワーク構築を通じた気候変動対応の取組など、UPU加盟国における協力プロジェクトの実施を支援している。2023年(令和5年)6月にこの協力覚書を更新し、外部機関との連携強化等、実施プロジェクトの拡充を行った。
また、協力プロジェクトの一つとして、2023年(令和5年)10月には、UPUが設置する緊急連帯基金(ESF:Emergency Solidarity Fund5)への拠出を通じて、地震による影響を受けたモロッコの郵便分野への支援も行った。このような支援を通じて、我が国として、世界の郵便ネットワーク・サービスの一層の発展に貢献するとともに、UPUにおける国際郵便に関する公正で開かれたルールの策定にも積極的に貢献している。
2023年(令和5年)10月にはサウジアラビアのリヤドにおいて第4回臨時大会議が開催され、 目時事務局長のリーダーシップのもと、より多様な郵便関係者(民間事業者等)の郵便セクターへの関与・連携の拡大等についての議論がなされるとともに、年次予算の上限額の引き上げが実現された。日本はこれらの審議に積極的に参加し合意形成に貢献したほか、第一委員会の議長として同委員会の議論を取りまとめ、その結果を大会議の本会議において報告するなど、大会議の運営にも大きく貢献した。
さらに、UPUは世界税関機構(WCO)とも緊密な関係を構築しており、2023年(令和5年)6月には、UPUとWCOの共催によるWCO-UPUグローバルカンファレンスが東京で開催された。越境電子商取引の拡大を踏まえ、国際郵便の適正かつ円滑な流通を確保するため、通関電子データ(EAD(Electronic Advanced Data):郵便物の発送前に郵便事業体経由で相手国の税関当局に送信する郵便物に関するデータ)等のデータやデジタル技術を活用した水際検査の高度化など、郵便と税関の連携強化のあり方について、各国の郵便事業体や税関当局等の間で議論が行われた。総務省は、UPUに対する任意拠出金を通じて各国における郵便と税関の連携を促進するためのプロジェクトが実施される旨を表明するとともに、議論の成果である「共同宣言(東京宣言)」の取りまとめに貢献した。
5 災害等により被害を受けた加盟国に対する緊急援助を行うためのUPUの基金。