AIの進化に伴い、デジタルテクノロジーがもたらすリスク・課題も深刻になることが想定されるため、AIのガバナンスや規制のあり方については、国際的な協調のもとでのルール整備とその遵守が必要不可欠となる。第4章でも触れたように、我が国では既に、AI事業者ガイドラインが策定され、民間事業者による自主的な取組が浸透し遵守されるよう、本ガイドラインの周知活動を実施しているところである。このAI事業者ガイドラインの履行とともに、AI戦略会議を中心とし、今後政府全体として制度の在り方についての検討を進めていく予定である26。
また、G7、OECD、GPAI及び国連等の多国間の場における協調と協力の強化も必要である。2023年5月のG7で立ち上がった広島AIプロセスについては、我が国が議長国として議論を主導しつつG7国間での集中的な議論を行い、同年12月には生成AI等の高度なAIシステムへの対処を目的とした初の国際的政策枠組みである「広島AIプロセス包括的政策枠組み」及びG7の今後の取組について示した「広島AIプロセスを前進させるための作業計画」について合意に達した。その中では、AIガバナンス枠組み間の相互運用性の重要性が強調されている。また、2024年のG7議長国イタリアは、広島AIプロセスの継続的な推進を表明しており、2024年3月に採択された「G7産業・技術・デジタル閣僚宣言」では、開発途上国・新興経済国を含む主要なパートナー国や組織における広島AIプロセスの成果の普及、採択、適用を促進するためのアクションが歓迎されたところである。
また、2024年5月にパリで開催されたOECD閣僚理事会で我が国は議長を務め、広島AIプロセスの成果を踏まえ、2019年に採択された「OECD AI原則」の改定に貢献した。併せて、生成AIに関するサイドイベントにおいて、岸田総理大臣が、49か国・地域が参加する、広島AIプロセスの精神に賛同する国々の自発的な枠組みである「広島AIプロセス フレンズグループ」の立ち上げを表明した。松本総務大臣は、「AIの国際的なルールづくりを日本が主導することにより、我が国のビジネス環境への信頼性が高まり、日本への投資促進にもつながる。また、デジタル分野に係るルールについて、日本中心の標準化を目指したい。」と述べ2728、今後も国際指針等の実践に取り組み、世界中の人々が安全、安心で信頼できるAIを利用できるよう協力を進めていくこととしている。
26 「AI戦略の課題と対応」(2024年5月22日第9回AI戦略会議資料1-1)https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/ai_senryaku/9kai/shiryo1-1.pdf
27 令和6年第5回経済財政諮問会議議事要旨(令和6年5月10日)
<https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2024/0510/gijiyoushi.pdf>
28 樫葉さくら「米マイクロソフト、日本のAI・クラウド基盤強化に29億ドル投資、AI分野での日米協力進む」,『JETROビジネス短信』2024年04月16日,<https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/04/34ae6386dcb01c5b.html>