モバイル通信網については、2021年(令和3年)、エチオピア政府から、同国の携帯電話事業について我が国企業を含む国際コンソーシアムへライセンスの付与が承認され、2022年(令和4年)10月に商用通信サービスを開始した。これを契機として、同国及びアフリカ地域へのデジタルソリューションの展開を推進する予定である。
光海底ケーブルについては、JICTを通じて東南アジアを中心とした地域における光海底ケーブル事業(総事業費約400百万米ドルのうち最大78百万米ドルの出資等を支援決定)を支援しているほか、2020年(令和2年)8月にインドのモディ首相から発表されたインド洋における光海底ケーブル敷設計画について、2021年(令和3年)9月から同地域のプロジェクトに我が国企業が参画し、2023年(令和5年)7月に完成している。さらに、通信環境が比較的整っていない太平洋島嶼国の通信環境の改善についても、有志国や関係省庁・機関とも連携し取り組んでいる。また、欧州委員会との間で安全で強靱かつ持続可能なグローバル接続性のための海底ケーブルに関する協力覚書1に署名した。
5Gについては、国際場裡で安心・安全な5Gネットワークの重要性が議論される中で、オープンでセキュアなネットワークを実現する技術として注目される「Open RAN」やそれを活用したシステムの海外展開に取り組んでいる。例えば、ベトナム及びフィリピンにおいては2022年度(令和4年度)に、オーストラリア、インドネシアにおいては2023年度(令和5年度)にOpen RAN展開可能性について調査を実施した。また、英国においては2022年度(令和4年度)にOpen RANに関する試験環境整備や、RAN機器におけるO-RANアライアンスが定めるインターフェース仕様への適合性の確認試験等を実施し、またフィリピンにおいては前年度の調査結果も踏まえ、2023年度(令和5年度)にOpen RAN機器の有用性を検証することを目指した実証を行った。
データセンターについては、2021年(令和3年)3月から、ウズベキスタンにおいて、同国の通信環境の改善に向け、データセンターなどの通信インフラ整備に係るプロジェクトに我が国企業が参画しているほか、JICTを通じてインドにおけるデータセンターの整備・運営事業(2022年(令和4年)10月に最大86百万米ドルの出資等を支援決定)を支援している。
地上デジタル放送日本方式については、中南米を中心に、日本を含む20か国が同方式を採用しており、2022年(令和4年)10月にはボツワナにおいて、海外での採用国として初めて全土でアナログ放送停波が完了し、コスタリカ(2023年(令和5年)1月)、チリ(2024年(令和6年)4月)においても全土でアナログ放送停波が完了した。今後も引き続きデジタル放送への円滑な移行にかかる支援を実施していく。
医療分野における利活用については、中南米地域を中心にスマートフォンによる遠隔医療システムを受注するとともに、2020年度(令和2年度)からは東南・南西アジア諸国への高精細映像技術を活用した内視鏡及び医療AIによる診断支援システムの普及展開に向け、現地病院における実証も通じて検討を進めており、2022年度(令和4年度)にはベトナムにおいて調査実証を実施した。
我が国の放送事業者等が、地方自治体等と連携し日本の魅力を発信する放送コンテンツを制作して海外の放送局等を通じて発信する取組や、国際見本市を通じた放送コンテンツの海外展開を継続的に支援してきており、地域産品の販路開拓などの経済波及効果や日本の魅力の浸透など、様々な効果が生まれている。また、令和5年度からは、海外事業者に対して日本の放送コンテンツの情報を発信するオンライン共通基盤の整備等に着手しており、放送コンテンツ関連海外売上高を令和7年度までに1.5倍(対2020年度(令和2年度)比)に増加させることを目標に、引き続き放送コンテンツの海外展開の推進及びそれを通じたソフトパワーの強化を図っていく。
2018年(平成30年)10月8日にベトナムとの間で「日本国総務省とベトナム社会主義共和国公安省との消防分野における協力覚書」を締結して以来、予防政策や消防用機器等の基準等についての意見交換等を行うことで、日本の消防用機器等の品質の高さをPRしてきた。また、2023年(令和5年)2月には火災予防技術に関する基礎研修を実施したところである。引き続き、ベトナムをはじめ幅広く東南アジア諸国等に対し働き掛けていくことで、日本の規格に適合する消防用機器等の海外展開を推進していく。
東南アジア、欧州、コーカサス地域などの主に新興国・途上国を対象に、郵便サービスの品質向上や郵便業務の最適化に関する課題やニーズを把握し、その解決や実現に資する我が国の知見・経験や技術・システムを提供するアプローチを通じて、官民一体となって日本型郵便インフラシステムの海外展開の取組を推進している。これまで、ベトナム郵便やスロベニア郵便などを対象に、業務効率化のためのコンサルティング契約の締結や区分機などの機材・システムの受注を実現している。近年では、スロバキアやアゼルバイジャンなどの新たな対象国への郵便業務の最適化支援のほか、郵便事業のデジタル・トランスフォーメーション(DX)、郵便事業に関する脱炭素化の推進への支援などの新たな取組を通じて、我が国企業のビジネス機会の拡大を図っている。
行政相談分野では、各国の公的オンブズマンとの連携・協力などが行われており、ベトナム、ウズベキスタン、イラン、タイの4か国とは、行政苦情救済に係る協力の覚書をそれぞれ締結している。これに基づき、例えば、ベトナムから研修生を計約310人受け入れるなどの取組が実施されてきた。
1 https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin08_02000155.html