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第Ⅱ部 情報通信分野の現状と課題
第6節 ICT利活用の推進

2 地域社会・経済の活性化に資するDX化の推進

(1) 活力ある地域社会の実現に向けた検討

総務省では、「デジタル田園都市国家構想」や「デジタル行財政改革」に資する取組を実施してきた。一方で必ずしも、各種取組が地域課題の解決に結びついていない、という指摘がある。

このような背景のもと、総務省では、地域住民の生活の質を向上させ、活力ある多様な地域社会を実現するために必要な情報通信基盤とその利活用に関する政策の方向性を検討するため、2023年(令和5年)12月から「活力ある地域社会の実現に向けた情報通信基盤と利活用の在り方に関する懇談会」2を開催している。本懇談会では、地域におけるエンド・ツー・エンドを含めた通信・放送サービスの利用実態を踏まえた利用環境整備の方向性、地域で育成されたデジタル人材が活躍できる環境づくり、地域に整備されたデジタル基盤を活用した産業振興やデジタル技術を活用した人手不足等の社会課題への対応、地域DX推進に向けた関係者の連携体制の構築・強化等について課題を整理し、活力ある多様な地域社会の実現に必要な政策の方向性を検討している。

ア 地域のデジタル基盤を活用した課題解決
(ア)ローカル5Gの推進

2019年(令和元年)に制度化されたローカル5Gは、携帯電話事業者による5Gの全国サービスと異なり、地域や産業の個別ニーズに応じて、地域の企業や地方自治体などの様々な主体が自らの建物内や敷地内でスポット的に柔軟に構築できる5Gシステムである。

ローカル5G普及のための取組として、総務省では、2020年度(令和2年度)から2022年度(令和4年度)までの間、現実の様々な利用場面を想定した多種多様な利用環境下で電波伝搬などに関する技術的検討を実施するとともにローカル5G等を活用したソリューションを創出する「課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」を行ってきた。

さらに、安全で信頼できる5Gの導入を促進し、5Gを活用して地域が抱える様々な社会課題の解決を図るとともに、我が国経済の国際競争力を強化することを目的として2020年度(令和2年度)に5Gの導入を促進する税制が創設され、令和4年度税制改正では、「デジタル田園都市国家構想」の実現に向け、地方での基地局整備促進に向けた見直しが行われた。法人税・所得税の税額控除又は特別償却と固定資産税の特例措置とがあり、いずれも2024年度(令和6年度)末まで適用期限が延長されている。

(イ)地域のデジタル基盤を活用した先進的なデジタル技術の実装

「デジタル田園都市国家構想」の実現に向け、地域のニーズに応じたデジタル技術を住民がその利便性を実感できる形で社会に実装させていくためには、地域のデジタル基盤の整備と、そのデジタル基盤を活用する先進的ソリューションの実用化を一体的に推進することが重要であることから、地方公共団体等によるデジタル技術を活用した地域課題解決の取組を総合的に支援するため、2023年度(令和5年度)から「地域デジタル基盤活用推進事業」を開始した。本事業では、①デジタル技術の導入計画の策定支援、②先進的なソリューションの実用化支援(実証事業)、③地域のデジタル基盤の整備支援(補助事業)を通じて、地方公共団体等によるデジタル技術を活用した地域課題解決の取組を総合的に支援している。さらに、2024年度(令和6年度)からは、デジタル行財政改革が目指す社会課題解決に資するため、市町村等の連携によるDX推進体制の構築や、安全な自動運転のために必要な通信の信頼性確保等の検証にも取り組んでいる。

(ウ)スマートシティの推進

総務省では、2017年度(平成29年度)から、デジタル技術やデータの活用によって地域課題を解決し、地域活性化につながる新たな価値を創出するスマートシティを推進している。都市OSの導入やサービスアセットの整備等に取り組む地方公共団体等を支援する「地域課題解決のためのスマートシティ推進事業」を内閣府等の関係府省と連携して実施しており、2023年度(令和5年度)は8団体の事業を支援した。

2023年度(令和5年度)には、「スマートシティリファレンスアーキテクチャ(ホワイトペーパー)及びスマートシティガイドブック」3を関係省庁とともに改訂し、それぞれ第2版として公開、また、スマートシティのさらなる発展と実装を目指し、2030年以降を見据えた「スマートシティ施策のロードマップ」を策定した。また、2024年(令和6年)には、こうした動向も踏まえて、「スマートシティセキュリティガイドライン」の改訂を行った。

(エ)情報銀行の社会実装

個人情報を含むパーソナルデータの適切な利活用を推進する観点から、総務省及び経済産業省は、情報信託機能の認定スキームの在り方に関する検討会を立ち上げ、2018年(平成30年)6月に、民間団体などによる情報銀行の任意の認定の仕組に関する「情報信託機能の認定に係る指針ver1.0」を取りまとめた。この指針は、利用者個人を起点としたデータの利活用に主眼を置いて作成されており、①認定基準、②モデル約款の記載事項、③認定スキームから構成されている。この指針に基づき、認定団体である一般社団法人日本IT団体連盟が、2018年(平成30年)6月に第一弾となる「情報銀行」認定を決定し、2024年(令和6年)3月時点で、2社が「情報銀行」認定を受けている。

継続的に指針の見直しや情報銀行の活用に向けた検討を行っており、2023年(令和5年)7月には、情報銀行が健康・医療分野の要配慮個人情報を取り扱うに当たっての要件等を定めた「情報信託機能の認定に係る指針Ver3.0」を公表した。2024年度(令和6年度)は、スマートシティでのデータ連携に情報銀行が関与することにより、健康・医療分野の要配慮個人情報を安全・安心に流通させることで地域課題の解決を実現するユースケースを実証し、認定指針の課題を検証している。

イ 地域社会のDXを支える人材確保・育成
(ア)外部人材確保支援事業

総務省では、2022年(令和4年)9月、自治体が外部人材を確保する際の参考となるよう、外部人材が備えておくことが望ましいスキルや経験を類型化した「自治体DX推進のための外部人材スキル標準」を策定した。また、同スキル標準に基づき、一定のスキルや経験を有する民間等の人材を公募し、有識者による評価を経て選定した民間等の人材が自治体において活躍できるよう、自治体の業務や情報システム等について研修を実施した上で、研修受講まで修了した者に関する情報をとりまとめ、「外部人材リスト」として、自治体に情報提供を2023年(令和5年)6月から実施している。

(イ)地域情報化アドバイザー派遣制度

総務省では、2007年度(平成19年度)から、ICTを地域の課題解決に活用する取組に対して、自治体等からの求めに応じて、ICTの知見、ノウハウを有する専門家(「地域情報化アドバイザー」)を派遣し、助言・提言・情報提供等を行うことにより、地域におけるICT利活用を促進し、活力と魅力ある地域づくりに寄与するとともに、地域の中核を担える人材の育成を図っている。

「地域情報化アドバイザー」は、2023年度(令和5年度)、大学での研究活動や地域における企業活動、NPO活動等を通じた地域情報化に知見・ノウハウを持つ民間有識者等196名に委嘱しており、2023年度(令和5年度)には363件の派遣を行った。



2 活力ある地域社会の実現に向けた情報通信基盤と利活用の在り方に関する懇談会
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/chiikikon/index.html別ウィンドウで開きます

3 スマートシティリファレンスアーキテクチャ(ホワイトペーパー)及びスマートシティガイドブック等の改訂版の公開
https://www8.cao.go.jp/cstp/stmain/20230810smartcity.html別ウィンドウで開きます
事例紹介動画・インタビュー記事 https://www.mlit.go.jp/scpf/efforts/index.html別ウィンドウで開きます
スマートシティサービスの事例集 https://www.soumu.go.jp/main_content/000808085.pdfPDF

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