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特集② 進化するデジタルテクノロジーとの共生
第2節 AIの進化に伴い発展するテクノロジー

(2) ロボティクス

ロボットの開発は、1960年代に産業用として始まり、人間の手助けや危険な作業の代替として工業用途や軍事目的に利用された。1990年代からは、工場等における産業用途だけでなく、介護や清掃、配達など一般社会におけるサービス用途での開発・活用や、家庭や個人の生活においても、掃除ロボットやコンパニオンロボットなど、さまざまな用途のロボット普及が進んできた(図表Ⅰ-3-2-4)。

図表Ⅰ-3-2-4 ロボティクスの研究開発のトレンド
(出典)CRDS国立研究開発法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター 研究開発の俯瞰報告書 システム・情報科学技術分野(2023年)

世界のロボットの市場は大幅な収益増が見込まれ、2024年には428億2,000万ドルに達すると予測されている。市場内の様々なセグメントの中でも、サービス・ロボティクスは同年の市場規模が335億ドルと予測され、優位を占めると予想される。この分野は、2024年から2028年までの年平均成長率(CAGR)が11.25%と、安定した成長が見込まれ、市場規模は2028年までに655.9億ドルに達すると推定される(図表Ⅰ-3-2-5)。

図表Ⅰ-3-2-5 ロボティクスの市場規模
(出典)Statista「Statista Market Insights」5

ロボットの開発・利用の拡大と人工知能(AI)の発展は相互に関わり合いながら進展してきた。ロボットは、センサ(感知/識別)、知能・制御系(判断)、駆動系(行動)の3つの要素技術を有する知能化した機械システムと捉えられており、AIのディープラーニングをベースに強化学習を組み合わせることで、識別の能力が飛躍的に上がり、ロボットに備わっているカメラやセンサから大量のデータを収集し、分析することが可能になった。生産工場などの現場では、品質検査や設備の予知保全などにすでにAIが活用されている。また、介護ロボットや接客ロボットの実用化も進んできている。音声認識技術と自然言語生成技術により、家庭用ロボットなどで人間がロボットと自然に対話を行えるようにもなってきた。

さらに、生成AIを行動生成AIとして、判断や駆動系にも使う試みがなされている。言語や画像などマルチモーダルな情報を解釈できる生成AIが、ロボットのカメラ映像などから周囲の状況を判断し、ユーザーからの指示を達成できるよう、ロボットの物理的な動作を繰り出すというものである。ただし、ロボットのフィジカルな動きにはまだ課題があり、触覚フィードバック、柔らかいハードウェアの開発や安全な力制御などの研究が重要になると考えられ、社会での実用化にはまだ時間がかかる67

通常、ロボットを動かすにはプログラミングが必要であるが、今後、生成AIが人との対話を通じて自らプログラミングができるようになれば、人の言葉を理解して即座にプログラミングし、ロボットを制御する未来も期待される。



5 https://www.statista.com/outlook/tmo/robotics/worldwide別ウィンドウで開きます

6 NIKKEI Tech Foresight,「基盤モデルはマルチモーダルに、ロボと融合 24年展望」2024年1月24日,<https://www.nikkei.com/prime/tech-foresight/article/DGXZQOUC239XV0T20C24A1000000別ウィンドウで開きます>(2024/3/22参照)

7 進藤 智則,「編集長が展望する2024年(第11回)ロボットは大規模言語モデルで変わるのか-2024年の「ロボットとAI」-」,『日経クロステック』2024年1月19日,<https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02668/112800011/別ウィンドウで開きます>(2024/3/22参照)

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