総務省の「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」が2023年7月に取りまとめた報告書においては、メタバースに関する課題は、「メタバース空間内に係る課題」と「メタバース空間外と関連する課題」の2つに大別されている。
メタバース空間内に係る課題については、①アバターに係る課題、②プラットフォーム間の相互運用性、③メタバース構築時・利活用時に係る課題、④データの取得・利用に係る課題が、メタバース空間外と関連する課題については、⑤ユーザーインターフェース(UI)/ユーザー体験(UX)に係る課題、⑥メタバースの動向/社会的な影響が挙げられた。同研究会ではこれらの課題について検討し、①〜④の課題に対する取組の方向性としてメタバースの理念に関する国際的な共通認識の形成、相互運用性確保に向けた取組(標準化等)及びメタバース関連サービス提供者向けガイドライン(仮)の策定を、⑤〜⑥の課題に対する取組の方向性としては市場、技術、ユーザー動向の継続的フォローアップ及びメタバースとUI/UXの関係等についての調査研究が挙げられる旨を整理した1。また、2023年10月からは、同研究会の報告書において継続的なフォローアップが必要とされたものについての検討等を行う「安心・安全なメタバースの実現に関する研究会」を開催している。2023年4月の「G7群馬高崎デジタル・技術大臣会合」や同年5月の「G7広島サミット」において確認された民主的な価値に基づくメタバースの発展を念頭に、ユーザーにとってより安心・安全なメタバースを実現することを目的として、①メタバースの自主・自律的な発展に関する原則(オープン性・イノベーション、多様性・包摂性、リテラシー、コミュニティ)及び②メタバースの信頼性向上に関する原則(透明性・説明性、アカウンタビリティ、プライバシー、セキュリティ)からなる「メタバースの原則(1次案)」の検討等が行われてきたところである2(本研究会については、本年夏頃に報告書を取りまとめ予定)。
国際機関においてもメタバース等の没入型技術に関する検討が行われており、例えばOECDでは、2022年12月にGlobal Forum on Technology(GFTech)3の設置を公表し、没入型技術等についてフォーカスグループ(FG)を設置して議論をしている。没入型技術に関するFGでの議論は2023年12月から開始しており、2024年秋頃に報告書を取りまとめる予定となっている。また、総務省では、2023年10月に国連が主催した「インターネット・ガバナンス・フォーラム(IGF)京都」において、「民主的価値に基づくメタバースの実現」をテーマとしたセッションをOECDと共同開催するなど、国際的な議論に貢献する取組を進めている。
1 総務省,「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会 報告書」,<https://www.soumu.go.jp/main_content/000892205.pdf>
2 総務省,「安心・安全なメタバースの実現に関する研究会,<https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/metaverse2/index.html>
3 OECD,Global Forum on Technology,<https://www.oecd.org/digital/global-forum-on-technology/>