デジタルテクノロジーを国民一人ひとりが安心して活用していくためには、サイバーセキュリティの確保も重要となる。近年、国際情勢の複雑化により、我が国を含む各国において政府機関等を狙ったサイバー攻撃が多く発生している状況にあることに加え、生成AI等のテクノロジーの登場により、利便性が増す一方で、それらの悪用によるリスクの拡大も指摘されている。
従来、サイバーセキュリティは主にシステムの可用性や機密性を確保する、つまり、システムが停止しないようにすることや、データの窃取や漏洩を防ぐことに焦点が当てられ、ビジネスの連続性や利便性を確保してきた。これとともに、近年では情報の改ざん、偽・誤情報の拡散など、情報の中身の完全性、信頼性に関わる様々なリスクについても顕在化している。偽情報やディープフェイクの拡散、情報の改ざんや流出は、社会の信頼を揺るがし、社会の安定性や国家の安全保障にも影響を及ぼすだけでなく、政治的なプロセスや意思決定において深刻な影響を及ぼし、民主主義の健全性にとっても大きな脅威となる可能性がある。
国家安全保障戦略(2022年12月)において「民間の重要インフラ等への国境を越えたサイバー攻撃、偽情報の拡散等を通じた情報戦等が恒常的に生起し、有事と平時の境目はますます曖昧になってきている」 と指摘するように、サイバー空間を巡る脅威はますます深刻化しており、いわば「常時有事」の状況となっているとも言える。
こうした状況を踏まえ、さらなる情報通信ネットワークの安全性・信頼性の確保、サイバー攻撃への自律的な対処能力の向上、偽・誤情報への対応、国際連携の推進、普及啓発の推進に向けた取組が進められているところである5。
5 国家安全保障戦略(2022年12月),<https://www.cas.go.jp/jp/siryou/221216anzenhoshou/nss-j.pdf>