我が国は、前述した人口減少、少子高齢化といった人口構造に関する課題のほか、経済構造の変化、インフラの老朽化、自然災害リスクの増大等の社会課題を抱えている。特に地域社会は、人手不足、地域産業の衰退、公共・準公共サービスの維持といった課題を抱えており、これらの解決に向けてデジタル技術の活用が期待される。
総務省はこれまで、「デジタル田園都市国家構想」や「デジタル行財政改革」を踏まえ、地域社会DXの推進を支える情報通信環境の整備や、地域経済の活性化等に取り組んできた。一方で、必ずしもこれまでの地域社会DXに向けた取組の全てが地域課題の解決に結びついているわけではないとの問題意識から、2023年12月より「活力ある地域社会の実現に向けた情報通信基盤と利活用の在り方に関する懇談会」を開催し、活力ある多様な地域社会を実現するために必要な情報通信基盤とその利活用に関する政策の方向性を検討している。この懇談会の検討項目の一つとして、地域社会の交通維持のための自動運転、地域産業維持のためのスマート農業など、ユースケースに応じた最適な情報通信利用環境をどのように整備し、普及させていくべきかとの観点から、「ユースケースごとに求められる情報通信利用環境整備の在り方」について議論が行われた。2024年5月の「報告書(案)」においては、「地域の産業振興や社会課題解決に向けた、農産物の自動管理、災害対策、モビリティ等の領域でDXを進める上で不可欠な要素となっているAI、メタバース等を含む先端技術の活用モデルの検証・確立を推進すべきことや、利用用途に応じた通信技術等の最適な組み合わせの検証・類型化を進めるべきことが示された。この懇談会は7月に取りまとめの予定であり、総務省としては、これを踏まえ、活力ある多様な地域社会の実現に必要な政策を推進していくこととしている。