NTTが提唱するIOWN構想において、2019年(令和元年)にNTT、インテル、ソニーが設立した業界フォーラム「IOWN Global Forum」の国内外の参加団体数が順調に増加するとともに、日本の通信業界としても、楽天モバイルに加え、2023年(令和5年)3月にはKDDIが参加するなど、オールジャパンとしての取組になりつつある。
2023年(令和5年)3月には、NTT東西が、超低遅延を実現するオール光ネットワーク「IOWN 1.0」の商用サービスを開始したほか、KDDI及びソフトバンクも、オール光ネットワークを自社コア網に導入したことを発表した。また、低軌道衛星やHAPS等の非地上系ネットワーク(NTN)については、ソフトバンクが、あらゆる通信技術を1つに統合し、ユースケースに合わせて陸・海・空どこでも通信を提供するユビキタスネットワーク構想の実現に向けて、低軌道衛星とともに、「HAPSアライアンス」等を通じたHAPSの活用を推進しているほか、楽天モバイルは、2024年(令和6年)2月、AST SpaceMobile社との衛星と携帯端末の直接通信による国内サービスを2026年(令和8年)内に提供を目指す計画を発表している。
Beyond 5Gの実現に向けては、様々な民間事業者、団体等において社会実装に向けた取組を進めている。
IOWN Global Forumでは、IOWN構想の実現と普及に向け、2030年頃の将来を見据えたユースケースだけでなく、2025年頃の実用化・事業化を目標としたユースケースを各業界と連携して検討しており、2025年頃の初期導入事例として、金融業界向けデータセンター接続、放送業界向け遠隔・クラウドメディア制作等を挙げている。今後、商用化に向けて仕様策定や実証を進めていくとしている。
実際に、東急不動産では、2023年(令和5年)6月にNTT各社とIOWN構想に関連した技術・サービス等を活用した新たなまちづくりに向けた協業に合意し、最初の取組として、2023年(令和5年)12月に「Shibuya Sakura Stage」へIOWN 1.0を導入した。
また、国際標準化に向けては、NICTや「Beyond 5G 推進コンソーシアム」等を中心に、Beyond 5G に係る国際的なビジョン作りに貢献してきており、2023年(令和5年)11月にはITU-Rにおいて、我が国の提案も反映される形で、6Gを念頭においた「IMT-2030」の能力やユースケース等を含む全体像を示すフレームワーク勧告が承認された。
さらに、2023年世界無線通信会議(WRC-23)では、HAPS等の非地上系ネットワーク(NTN)を含めたBeyond 5Gの実現に向けた議題において周波数等が確保された。
Open RANについては、NTTドコモは、Open RANアーキテクチャをグローバル展開するためのブランドとしてOREXを発足し、2024年(令和6年)2月、これを海外通信事業者の要望に応じて提供するための合弁会社「OREX SAI」を日本電気(NEC)とともに設立することを発表した。また、楽天モバイルは、Open RANの推進と発展・普及を目指し、Open RAN技術の展示や要望に応じた柔軟な技術検証環境の施設を国内外に開設している。これらの取組を背景に、北米、欧州の主要通信事業者においても、我が国企業によるOpen RAN関連商品の採用が進展している(図表Ⅱ-2-7-1)。
Beyond 5Gに向けては、NTT各社は、IOWN Global Promotion Officeを設立する等してグローバル展開に取り組んでおり、NTT及びNTTデータグループが米国及び英国においてオール光ネットワークによるデータセンター間接続の実証を実施しているほか、2023年(令和5年)10月、NTTと台湾・中華電信との間で、IOWNによる国際ネットワーク接続の実現に向けた基本合意書を締結した。これに加え、富士通も、2024年(令和6年)2月、中華電信との間で、台湾におけるIOWN構想に基づくオール光ネットワークの構築に向け、共同検討することを発表している。また、光分野においては、我が国企業が特に北米を中心とする世界市場において主要な伝送装置のシェアを伸ばしている。
また、2023年(令和5年)4月に開催されたG7群馬高崎・デジタル技術大臣会合においては、我が国が目指すBeyond 5Gのビジョンを踏まえた形で無線のみならず有線も含めた次世代ネットワークの将来ビジョンを策定し、安全で強靱なデジタルインフラの構築に向けたG7アクションプランの合意を得た。