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第1部 特集 データ主導経済と社会変革
第2節 スマートフォン経済の拡大をもたらす新サービス群

(2)シェアリング・エコノミー(C to Cサービス)

スマートフォンにより個人間の取引が拡大しつつある。ここでは、シェアリング・エコノミーや各種C to Cサービスについて取り上げる。

ア シェアリング・エコノミーとは

シェアリング・エコノミーとは、個人等が保有する活用可能な資産等を、インターネット上のマッチングプラットフォームを介して他の個人等も利用可能とする経済活性化活動である。ここで活用可能な資産等の中には、スキルや時間等の無形のものも含まれる。

シェアリング・エコノミーは個人や社会に対して新たな価値を提供し、我が国経済の活性化・国民生活の利便性向上に資することが期待されると共に、シェアリング・エコノミーを活用することで、遊休資産の有効利用・社会課題解決への寄与が期待され、国内シェアリング・エコノミーの市場規模も拡大傾向にある。

矢野経済研究所の実施した調査では、シェアリング・エコノミーの国内市場規模は、2015年度に約285億円であったものが、2020年までに600億円まで拡大すると予測している(図表1-2-2-11)。

図表1-2-2-11 シェアリング・エコノミーの国内市場規模推移と予測
(出典)矢野経済研究所「シェアリングエコノミー(共有経済)市場に関する調査」(2016年7月19日発表)
「図表1-2-2-11 シェアリング・エコノミーの国内市場規模推移と予測」のExcelはこちらEXCEL / CSVはこちら

シェアリングエコノミーは、資産やスキルを提供したいという個人と提供を受けたいという個人とをマッチングさせるもので、インターネット利用を前提としている。スマートフォンの普及によってそうした個人間マッチング取引がいつでもどこでもリアルタイムで行うことが可能になり、徐々に身近なものになろうとしている。シェアリングを一層後押しているのが、SNSである。

内閣官房「シェアリングエコノミー検討会議中間報告書−シェアリングエコノミー推進プログラム」5(以下「プログラム」)によれば、「実名利用のソーシャルメディアの普及に伴って、これまで顔が見えず、信用度を推し量りにくかったインターネットの向う側の個人等について、一定程度の信用度が可視化され、個人等によるサービスも、選別して利用することができるようになった」とあり、SNSがスマートフォンと相乗効果となってシェアリングサービスを促進することを示唆している。

イ シェアリングエコノミーのサービス類型

プログラムでは、次のとおりシェアリングの対象を「モノ」、「空間」、「スキル」、「移動」、「お金」の5類型に分けている(図表1-2-2-121-2-2-16)。

(1)モノに関するシェア(モノ×シェア)

個人間で利用していないモノを共有するサービスなどで、フリマアプリやレンタルサービスが代表例

図表1-2-2-12 シェアリング・エコノミーサービスの例(モノ×シェア)
(出典)内閣官房第1回 シェアリングエコノミー検討会議(2016年7月8日)一般社団法人シェアリングエコノミー協会提出資料の分類を基に各社資料等から作成
(2)個人の所有するスペースを共有するサービス(空間×シェア)

住宅の空き部屋等を宿泊場所として貸し出す民泊サービスをはじめたとしたホームシェアや、駐車場、会議室の共有

図表1-2-2-13 シェアリング・エコノミーサービスの例(空間×シェア)
(出典)内閣官房第1回 シェアリングエコノミー検討会議(2016年7月8日)一般社団法人シェアリングエコノミー協会提出資料の分類を基に各社資料等から作成
(3)個人に家事等の仕事・労働を依頼できるサービス(スキル×シェア)

家事代行、介護、育児、知識、料理などが代表例

図表1-2-2-14 シェアリング・エコノミーサービスの例(スキル×シェア)
(出典)内閣官房第1回 シェアリングエコノミー検討会議(2016年7月8日)一般社団法人シェアリングエコノミー協会提出資料の分類を基に各社資料等から作成
(4)移動に関するシェア(移動×シェア)

自家用車の運転者個人が自家用車を用いて他人を運送するライドシェアやカーシェアが代表例

図表1-2-2-15 シェアリング・エコノミーサービスの例(移動×シェア)
(出典)内閣官房第1回 シェアリングエコノミー検討会議(2016年7月8日)一般社団法人シェアリングエコノミー協会提出資料の分類を基に各社資料等から作成
(5)お金に関するシェア(お金×シェア)

クラウドファンディングが代表例

図表1-2-2-16 シェアリング・エコノミーサービスの例(お金×シェア)
(出典)内閣官房第1回 シェアリングエコノミー検討会議(2016年7月8日)一般社団法人シェアリングエコノミー協会提出資料の分類を基に各社資料等から作成
ウ シェアリング・エコノミーのサービス事例
(ア)「モノ×シェア」の場合

5類型中、日本で最も先行しているのが「モノ」のシェアリングである。そのサービスの多くは、インターネット上の仮想のフリーマーケット内で、出品者と購入者が個人間でのやり取りを通して物品の売買を可能としたスマートフォンアプリである、いわゆる「フリマ」で行われる。両者間でのやり取りがフリーマーケットに似ている為、フリマアプリと呼ばれている

フリマ上では、新品、中古品を含め、衣料品、雑貨小物、家具、家電等、多くの商品が取引されている。出品者は売りたい商品をスマートフォンで撮影し、そのまま出品することができるため、従来のオークション等の形態に比べても取引の利便性が高い。このような利点があるため、フリマアプリはスマートフォンからの利用者が多く、スマートフォンの普及率の高い若年層を中心に普及が進んでいる。以下では、若年層に多く利用されているフリマアプリとして、メルカリ社の事例を取り上げる。

なお、フリマは、所有権の移転を伴う点で同じく「モノ」を対象としているレンタル取引とは異なり、「お金」を除く他のシェアリングとも性格を異にする。また、シェア対象がハード資産(動産)である点で「スキル」と「移動」とも異なる。今後、スマートフォン・SNSが一層普及し、個々人から十分に活用されていない資産や時間、能力等の提供が進む中、シェアリングサービスの対象の多様化していく一方、フリマは引き続きシェアリング・エコノミーの中で大きな位置を占め続けると考えられる6

【シェアリング・エコノミー(モノ×シェア)の事例】:フリマアプリ

メルカリは、出品者と購入者がネット上でのやり取りを通じ、商品の出品や購入ができるフリマアプリである。スマートフォンアプリを通して利用することができ、2013年7月にサービスを開始して以来2017年6月までに、日本において5,000万件のダウンロードが行われている。

出品者はスマートフォンのカメラで商品を撮影し、説明と値段をつけるだけですぐに出品できる(図表1-2-2-17)。購入希望者は興味のある商品に対して出品者へ質問を行ったり、値段交渉をしたりすることができる。

図表1-2-2-17 メルカリの特徴
(出典)消費者庁「インターネット消費者取引連絡会」におけるメルカリ提供資料

同社は利用者に安心して個人間取引を行ってもらえるように様々なサービスを提供している。お金のやりとりはメルカリが仲介し、購入者が商品を受け取りその評価をしてから出品者に振り込まれるエスクロー方式を採用している。これにより、購入した商品が未着となることや、購入代金が未払いとなるような出品者、購入者間でのトラブルを回避している。

また、商品を配送する際には、利用者同士が自身の名前や住所を相手に伝えなくても商品のやり取りができる「らくらくメルカリ便」を提供する。これは配送の際に宛先住所等を盛り込み暗号化したQRコードを利用し、宅配会社の専用端末で読み取らなければ住所が分からない仕組となっている。

(イ)「スキル×シェア」の場合

「スキル×シェア」のサービスも近年日本において普及が進んでいる。その中で最も普及している形態が「クラウドソーシング7」である。ただし、発注者が主に一般企業であり、あくまでもB to Cのサービスにとどまっていることに留意を要する。

その一方で、スキルを提供したい個人とサービスを受けたい個人同士をマッチングさせるサービスが登場している。以下で紹介するエニタイムズ社のサービスは、個人間取引(C to C)にとどまらず、女性や高齢者の労働参画を促す働き方改革や地方創生をはじめとした社会的課題の解決につながるものとして注目を集めている。

【シェアリング・エコノミー(スキル×シェア)の事例】:エニタイムズ

エニタイムズはインターネットを通して近所の人と会って助け合うことができるシェアリングサービスである。サービス開始当初は8割がパソコンからの利用であったが、スマートフォンの普及やユーザーの女性比率の上昇とあいまって、2017年現在、同社の7割程度のユーザーがスマートフォンを利用するようになっている。同社によると、登録ユーザー数は2017年3月時点で約27,000人となっている。

個人の有する時間やスキルに焦点を当て、その供給と需要とをマッチングさせる画期的な事業である。エニタイムズ誕生のきっかけとなったのは、創業者の角田千佳氏の強い問題意識だ。「一人暮らしでは家具組み立ては難しいが、DIYが得意な人は近所にいそう」、「そうした人を簡単に見つけられないか」といった体験に加え、女性・高齢者の労働参画、待機児童問題等の社会課題解決のため地域のつながりや多様な働き方の実現が必要とも考えていた角田氏は、2013年にエニタイムズを起業した。

プロに頼むほどではないが家事や習い事を誰かに頼みたいという人と、自分の時間やスキルを有効活用したいという人を結びつけている。主な依頼ごとは、掃除、料理、子どもやお年寄りの見守りといった家事代行、その他に語学レッスンやダンスの振り付け、インテリアコーディネートといったユニークなものもある。現に自分の趣味のスキルをエニタイムズでチケットとして販売し収入を得る者や、起業の前に試しにサービス提供する者もおり、従来にはなかったマッチングを実現させ新しい働き方の形を具現化している。

エニタイムズの利用は、地方でも展開されている。同社は川上村(長野県)と日南市(宮崎県)とそれぞれ協定を締結し、地域の女性と高齢者の社会参画の仕組づくりに貢献している。

図表1-2-2-18 エニタイムズのサービス概要
(出典)株式会社エニタイムズ提供資料
エ シェアリング・エコノミーによる変化と意義

サービス提供者、サービス利用者、インターネット上のマッチングプラットフォームを提供する事業者の三者の中で、シェアリング・エコノミーの下でサービス開始が容易となり大きく変貌したのはサービス提供者の在り方である。今やスマートフォンさえあれば、いつでも誰でもサービス提供者になりうる。サービス提供者に着目すると、シェアリング・エコノミーによる変化を次のとおり整理することができる。

(1)C to C型の取引への移行

(2)個人所有の遊休資産等の有効活用

(3)事後レビューの下での適切なサービス提供

まず(1)について、従来のオンラインショッピングでは、企業をはじめとしたビジネス主体をサービス提供者としたB to C型が中心であった。他方、シェアリング・エコノミーでは、インターネット上のマッチングプラットフォームを活用することで、不特定多数の個人が不特定多数の個人にサービスを提供するC to C型の取引が可能となった。

次に(2)はシェアリング・エコノミーの本質である。自らの保有する家等の遊休資産や余暇時間、スキルを活用したいと思い立ち、個人が常日頃は本業としていない宿泊サービス、家事をはじめとしたサービスを行うことは、社会への参加や収入の多様化等の観点等からサービスの提供者と利用者の双方にとっての幸福度を上げることにつながる。

最後に(3)については、多くのシェアリングエコノミーサービスにおいては、サービス提供後、サービス利用者とサービス提供者が相互に評価しあう仕組みが導入されている。評価の低いサービス利用者・提供者は、サービスの利用が困難になることから、高い評価を得ようとするインセンティブが双方に生じ、サービス全体の質の向上に寄与している。

オ シェアリング・エコノミー(各種C to Cサービス)利用に関する3カ国比較

前述した代表的なサービス(1)個人の所有する住宅の空き部屋等を宿泊場所として貸し出す民泊サービス、(2)個人の所有する自家用車に乗って目的地まで移動できるサービス、(3)個人に家事等の仕事・労働を依頼できるサービス、(4)個人の所有する場所を駐車場として利用できるサービス、(5)個人間で利用していないモノを共有するサービスの5事例を対象に、日本・米国・英国の利用意向と利用率を調べた(図表1-2-2-19)。

図表1-2-2-19 シェアリングサービスの利用意向と利用率8
(出典)総務省「スマートフォン経済の現在と将来に関する調査研究」(平成29年)
「図表1-2-2-19 シェアリングサービスの利用意向と利用率」のExcelはこちらEXCEL / CSV(1)はこちら / CSV(2)はこちら
図表1-2-2-20 ネットオークションとフリマアプリの利用率
(出典)総務省「スマートフォン経済の現在と将来に関する調査研究」(平成29年)
「図表1-2-2-20 ネットオークションとフリマアプリの利用率」のExcelはこちらEXCEL / CSV(1)はこちら / CSV(2)はこちら

各シェアリングサービスの利用意向をみると、日本は米国・英国に比していずれのサービスも利用意向が低いという結果となった。また、米国・英国ではいずれのサービスにおいても同程度の利用意向が示されたのに対し、日本では「駐車スペースシェアサービス」の利用意向が他のサービスよりも高い結果となった。

各シェアリングサービスの利用率をみると、全般的に米国が日本・英国よりも高い傾向を示した。



5 内閣官房 シェアリングエコノミー検討会議 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon_bunka/kaikaku.html#shiea別ウィンドウで開きます

6 フリマアプリが登場したのは2012年頃とされているが、その市場規模は急拡大している。経済産業省が2016年に実施した電子商取引に関する市場調査では、2016年のフリマアプリの市場規模は3,052億円と推定しており、2017年以降も拡大傾向にあると予測している。

7 クラウドソーシングとは不特定の人(crowd=群衆)に業務委託(sourcing)するという意味の造語で、ICTを活用して必要な時に必要な人材を調達する仕組のことである。クラウドソーシング市場は近年大きな成長を見せており、矢野経済研究所によると、仕事依頼金額ベースでの国内市場は2020年度にはおよそ2,950億円に達すると見込まれている。

8 我が国の民泊サービスの利用率及び個人の所有する自家用車に乗って目的地まで移動できるサービスの利用率については未調査

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