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第2部 基本データと政策動向
第5節 ICT利活用の推進

(2)医療・介護・健康分野におけるICT利活用の推進

ア パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)の利活用推進

総務省では、国民が健康を少しでも長く維持するとともに、良質な健康・医療・介護サービスを享受できる社会を実現する観点から、本人による健康・医療・介護情報の管理・活用の在り方や、モバイル・8Kといった最新のICTを活用したサービスの在り方等について検討するため、平成27年6月から、厚生労働省とともに「クラウド時代の医療ICTの在り方に関する懇談会1」を開催し、同年11月に報告書がとりまとめられた。報告書では、本人の健康・医療・介護に関する情報であるPHRを、国民一人ひとりが自ら生涯にわたり、時系列的に管理・活用することで、自己の健康状態に合致した良質なサービスの提供が受けられることを目指すとしている。

総務省は、平成28年度より3年間、①妊娠・出産・子育て支援、②疾病・介護予防、③生活習慣病重症化予防、④医療・介護連携といった4つのライフステージに応じたPHRサービスモデルの開発と、本人に関する多種多様な情報の統合的な利活用を可能とする基盤的技術の確立を目的とした「パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)利活用研究事業」を国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)による研究事業として実施している。(図表7-5-1-2)。

図表7-5-1-2 PHRモデル構築事業
イ 医療情報連携基盤(EHR)の全国展開の推進

医療機関等の保有する患者・住民の医療・健康等の情報を、異なる医療機関等で共有することを可能とするEHRは、患者・医療機関等の負担を軽減するとともに、地域医療の安定的供給、医療の質の向上、さらには医療費の適正化にも寄与するものである。

現在、電子カルテの普及率は医療機関全体の3割程度であるとともに、EHRについては運用コストの負担が大きく継続的な運用が課題となっているほか、ベンダーごとに異なる仕様により情報連携が困難となっている。このため、中小の診療所も含めた医療情報連携を推進するためには、レセコン等電子カルテ以外からも情報収集を可能にし、標準化されたデータを共有する低廉なモデルの普及・展開が必要となる。

こうした状況を踏まえ、総務省は、クラウド技術を活用し、それぞれの地域において病院、医科診療所、歯科診療所、薬局や介護施設といった多職種の施設をネットワークでつなぎ、双方向の情報連携を実現するなどEHRの高度化を支援することで、効果的な地域包括ケアや、地域を越えた広域のデータ連携等を推進する「クラウド型EHR高度化事業」を、モデル1(二次医療圏内)、モデル2(複数の二次医療圏)、モデル3(三次医療圏)の合計16地域において実施している(図表7-5-1-3)。

図表7-5-1-3 クラウド型EHR高度化補助事業
ウ 8K技術の医療分野への応用の推進

8K技術は、高精細映像を高い臨場感と実物感とともに伝えることができるため、医療分野において活用することにより、様々な領域で革新的な医療サービスが実現する可能性を有している。総務省は「8K技術の応用による医療のインテリジェント化に関する検討会2」を開催し、8K技術の医療応用を現実に進めていく上での可能性や課題について具体的に検討を行い、平成28年7月に報告書がとりまとめられた。報告書では、8K技術の具体的な活用シーンとして、内視鏡(硬性鏡)、顕微鏡を用いた手術・ライフサイエンス、病理診断を挙げているほか、医学教育や診断支援への高精細映像データの活用可能性についても言及している。

報告書を踏まえ、大容量の高精細映像データを収集・伝送・蓄積するために必要なデータ共有基盤の実装に向けた実証や、AIを活用した診断支援システムの開発、8K技術を活かした内視鏡(硬性鏡)の開発、遠隔医療、病理診断等の実証を行っており、これにより高度な医療の実現とともに、医療分野における日本発技術の国際展開の推進を目指している(図表7-5-1-4)。

図表7-5-1-4 8K等高精細医療映像データ利活用事業


1 クラウド時代の医療ICTの在り方に関する懇談会:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/cloud-ict-medical/別ウィンドウで開きます

2 8K技術の応用による医療のインテリジェント化に関する検討会:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/8ktech/index.html別ウィンドウで開きます

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