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第1部 特集 データ主導経済と社会変革
第3節 IoT化する情報通信産業

(4)ネットワーク

次に、ネットワークレイヤーのトレンドについて、サービス市場及びネットワークを支えるインフラ(機器)市場について整理する。

ア 固定・移動体通信サービス市場

世界の固定ブロードバンドサービス合計加入者数は、ここ数年5-7%程度の堅調な増加が続いている。ARPU4はゆるやかな低下傾向にあると指摘されるが、欧米を中心としたオンラインコンテンツの拡充や、新興国における加入者の増加により、今後も3-4%程度の成長率で堅調に増加することが予測されている。世界の固定ブロードバンドサービス(xDSL・CATV・FTTx)契約数は、2016年時点で約8.6億契約であり、2020年頃までに10億規模に達するまで堅調に拡大することが予想される。地域別でみると、主として中国等のアジア太平洋地域が市場をけん引し、2020年時点で同地域が全体の約半分を占めると予想される(図表3-3-3-9)。

図表3-3-3-9 世界の固定ブロードバンドサービス契約数の推移及び予測
(出典)IHS Technology

携帯電話およびスマートフォン(後述)等の移動体通信サービスの契約件数はここ数年間で中国をはじめとした新興国を中心に大きく増加した。世界の移動体通信サービス契約数は、2016年時点で約75億契約である。今後は成長率が鈍化し、緩やかに成長していくことが予想される。地域別でみると、固定ブロードバンドサービスと同様にアジア太平洋地域がけん引していくことが予想される(図表3-3-3-10)。

図表3-3-3-10 世界の移動体通信サービス契約数の推移及び予測
(出典)IHS Technology
イ 固定系ネットワーク機器市場

通信インフラは、様々なネットワーク機器・設備やそれを支える技術によって成り立っている。例えば、前述した固定ブロードバンドサービスなど、光ファイバー網を介した大容量の通信が増大しており、こうした大容量の伝送の要求に応えるためにWDM5などの光ネットワーク技術の高度化への取組が続いている。近年では、固定ブロードバンドアクセスや後述する移動体通信サービスの拡大に伴い、それを支える基盤としてこうした光ネットワーク技術の利用が進展している。

その代表的な製品である光伝送機器の市場規模についてみてみると、IHS Technologyによれば、近年は横ばいで推移してきたところ、今後はアジア太平洋地域を中心とする通信インフラ整備の進展に伴い、拡大していくと予想されている(図表3-3-3-11)。

図表3-3-3-11 世界の光伝送機器市場(出荷金額)の推移と予測
(出典)IHS Technology

次に家庭宅内・建物内にネットワークとの接続点となる家庭用ゲートウェイについてみてみる。IHS Technologyによれば、これまで拡大してきた市場は、2020年に向けては成長が鈍化し、約80億ドルの市場規模で横ばいで推移していくと予想される(図表3-3-3-12)。

図表3-3-3-12 世界の家庭用ゲートウェイ市場(出荷金額)の推移と予測
(出典)IHS Technology

世界のFTTH機器市場も同様に、これまで拡大してきた市場は、2020年に向けては成長が鈍化し、約50億ドルの市場規模で横ばいで推移していくと予想される(図表3-3-3-13)。

図表3-3-3-13 世界のFTTH機器市場(出荷金額)の推移と予測
(出典)IHS Technology
ウ 移動体系ネットワーク機器市場

移動体通信サービスの成長が鈍化することが予想されるなか、移動体通信インフラ市場を形成してきたマクロ基地局6市場(2G/3G/LTE)も、2G/3G機器のライフサイクルの終焉とともに、2015年をピークに年平均成長率6%で縮小していき、2020年には2015年時点の約3割減の規模になると予想される(図表3-3-3-14)。

図表3-3-3-14 移動体通信機器(マクロ基地局)市場の推移及び予測
(出典)IHS Technology

他方、今後LTE-Advancedの本格化及び5Gの導入に向けては、主としてカバレッジを確保するためのマクロ基地局を補完し、システム全体において超高速・大容量のサービスを提供するためのインフラとして、スモールセルの整備展開が進展する見込みである。既に、LTE-Advancedのネットワークにおいても導入されつつある。グローバルでみると、スモールセルは、現状はルーラルエリアや遠隔地における整備が主であるが、エンタプライズ向け需要による押し上げ効果により、2016年には約15億ドルに達すると予想される。地域別でみると今後アジア太平洋地域を中心に大きく成長し、2020年には約22億ドル規模まで拡大すると予想される(図表3-3-3-15)。

図表3-3-3-15 世界のスモールセル市場(出荷金額)の推移
(出典)IHS Technology

IoTの普及により幾何級数的にデータ流通量が増加する他、M2M通信のように少量のデータが断続的に発生するケースや、逆に特定の地域や領域において一時的に大量のデータが発生・流通するバーストトラフィックの可能性等、データ流通量の可変性にも耐えられるネットワーク特性や、ビッグデータの処理を司るコンピューティング能力も柔軟な対応が求められる。基本的にはクラウドサービスによるデータ処理を原則としつつ、特に迅速なデータ処理が求められる場合にはエッジコンピューティングによる処理を組み合わせるなど柔軟なリソース配分が求められる。



4 Average Revenue Per User:加入者あたり収入

5 Wavelength Division Multiplexing(波長分割多重)の略。1本の光ファイバー上に波長の異なる複数の光信号を多重化して大容量データを伝送する技術であり、これにより既存の光ネットワークを有効活用してコストを抑えながら大容量トラヒックへ柔軟に対応することができる。

6 半径数百メートルから十数キロメートルに及ぶ通信エリアを構築するための基地局であり、移動体サービスのカバレッジを確保するために利用されてきている。

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