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第1部 特集 データ主導経済と社会変革
第2節 データ流通・利活用における課題

(3)国内の議論の状況及び政府の方針

上述の法整備と合わせ、わが国では政府各機関においてデータ流通・利活用に関する議論が進められている。主なものの概要を以下に取り上げる。

ア 世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画

2016年5月に改定された世界最先端IT国家創造宣言では、「安心・安全なデータ流通を促進し、超少子高齢化社会における諸課題の発見・解決や、データを利活用した新サービスの創出等を通じ、国民生活の質の向上等を図る」ことを求めており、こうした認識の下、各省庁で関連する様々な分野についての議論が行われている(図表2-2-1-4)。

図表2-2-1-4 国内の関連省庁における議論の状況
(出典)総務省「安心・安全なデータ流通・利活用に関する調査研究」(平成29年)

2017年5月30日には「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」が策定された。これは、従前の「世界最先端IT創造宣言」と、官民データ活用推進基本法に規定された「基本的な計画」とを内容に含むものである。

その中では「近年、ネット上のデータ流通量の飛躍的な増大(データ大流通時代の到来)を背景に、多種多様かつ大量のネット上のデータ、特に、画像・映像等の処理による人工知能(AI:Artificial Intelligence 以下「AI」という。)ブームが再到来、さらにはAIやネット上のデータ利活用を備えたロボットや小型無人機(ドローン)等の開発も活発化しており」、「今後、このような「ネットワーク化された」AIやロボット、ドローン等の開発は、(中略)あらゆる場面で、かつ、これまでのIT技術の進歩の早さを上回るスピードで、我々の生活を一変させていくものと考えられる。」との認識が示されている。即ち、データ利活用は、引き続き政府の重要な施策の柱の一つとなることが想定されている。

官民データ活用推進基本計画においては、電子行政、健康・医療・介護、観光、金融、農林水産、ものづくり、インフラ・防災・減災等、移動の8つを重点分野に指定し、将来的には分野横断的なデータ連携を見据えつつ、2020年を一つの区切りとした上で、分野ごとに重点的に構ずべき施策を推進することとしている。

こういった施策の実施により得られる成果については、我が国全体に展開することとし、「国から地方へ」、「地方から全国へ」の横展開を基本的な方針としつつ、「一億総活躍」、「働き方改革」、「地方創生」、「女性の活躍促進」、「国土強靭化」などの諸課題の解決に官民データの利活用に関する取組を強化することとしている。

イ 未来投資戦略2017

2017年6月9日、新たな成長戦略である「未来投資戦略2017」が閣議決定された。その中では、「第4次産業革命等の技術革新の成果を社会に取り入れていくことによる生産性の飛躍的な向上が求められるが、データの徹底的な利活用は重要なカギの一つ」であり、「新しい社会インフラ」である「データ基盤」づくりへの未来投資を加速する必要がある」として、データ利活用基盤の構築・制度整備を進めることとしている。合わせて、官民データ活用推進基本法及び官民データ活用推進基本計画に言及しており、上述の8つの重点分野を中心に、官民データ活用の推進を総合的かつ効果的に推進していくこととしている。

その上で、新たに講ずべき具体的施策として「公共データのオープン化の推進」、「事業者間のデータ流通」、「パーソナルデータの利活用」、「地域におけるデータ利活用」、「データの越境移転等」等を挙げている。特に「パーソナルデータの利活用」については、PDS(Personal Data Store)や情報銀行、データ取引市場等を挙げ、「個人の関与の下で信頼性、公正性、透明性を確保するための制度の在り方等について検討」を行い、2017年中に結論を得ることを目指している。

ウ その他3

総務省の情報通信審議会では、2017年1月に「IoT総合戦略4」を取りまとめた。その中で、我が国は第3次産業革命にあたる「ICT革命」の波に乗り遅れ、米国のようなICT投資拡大等による経済成長を実現できなかった経験を踏まえ、第4次産業革命が進む中、グローバル競争に勝ち残っていくために「可能なあらゆる政策手段を講じていかなければならない」と指摘している。その上で、端末、ネットワーク、プラットフォーム、サービス(データ流通)の4つの階層に分けて整理している。

ネットワーク層では、IoTの普及によるデータ流通量の爆発的な増加に対応できるネットワーク特性が求められる。具体的には、SDN/NFVの実装化、5Gの実現といった新たな技術の推進に加え、ICT人材の育成が急務だと指摘している。

データの結節点となるプラットフォーム層は、収集されたデータの解析や、その上でのサービス提供で重要な役割を果たす。我が国のICT産業の国際競争力低下は、プラットフォーム機能の弱さが一因とも言われており、その強化が最重要課題の一つである。同戦略では、具体的な施策として「認証連携基盤の構築」、「パーソナルデータの活用と個人の情報コントローラビリティの確保」、「システミックリスクへの対応」を挙げている。パーソナルデータの活用に関しては、第3節で取り上げる。

サービス(データ流通)層に関しては、IoTの活用で収集されたデータを様々な実世界のサービスの利便性向上に活かしていくため、主に制度面の環境整備の必要性を指摘している。具体的には、データ利活用の促進等に必要なルールの明確化等、データ取引市場に関わるルール整備、分野横断的なデータ連携環境の整備の3つを挙げている。

加えて、レイヤー縦断(垂直)型施策の必要性も指摘しており、地域におけるIoTの普及促進、AIネットワーク化の推進、国際的な政策対話と国際標準化の推進を挙げている。国際的な議論の動向については本章第3節で取り上げる。



3 この他、経済産業省の産業構造審議会では、2016年11月の情報経済小委員会分散戦略ワーキンググループの中間取りまとめにおいて、「データポータビリティ・情報銀行等のアプローチによるハイブリッドなデータ流通システムの実現」を主要な論点の一つに挙げ、今後の方向性として「個人起点の新たなデータ流通構造の創成」及び「データオーナシップの明確化によるデータ協調の促進」に関する取組を進めることとしている。

4 「IoT/ビッグデータ時代に向けた新たな情報通信政策の在り方」(2015年諮問第23号)に関する情報通信審議会からの第三次中間答申
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin01_02000216.html別ウィンドウで開きます

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