我が国では他の国と比較しても急速に少子高齢化が進行している。生産年齢人口は1995年をピークに、総人口も2008年をピークにそれぞれ減少に転じている。総務省「国勢調査」によると、2015年の総人口(年齢不詳人口を含む)は1億2,709万人、生産年齢人口(15歳〜64歳)は7,629万人である。14歳以下の推計人口は1982年から連続して減少が続いており、少子化に歯止めがかからない実態が改めて浮き彫りになっている。
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(出生中位・死亡中位推計)によると、総人口は2030年には1億1,662万人、2060年には8,674万人(2010年人口の32.3%減)にまで減少すると見込まれており、生産年齢人口は2030年には6,773万人、2060年には4,418万人(同45.9%減)にまで減少すると見込まれている
少子高齢化やこれに伴う人口減少は、我が国経済の供給面と需要面の双方に負の影響を与え、我が国の中長期的な経済成長を阻害する可能性がある。
人口減少下において経済を持続的に成長させるためには、労働参画の拡大のほか、教育・人材育成の充実による労働の質の向上等を通じイノベーションを促進し、生産性を上昇させることが重要である。
労働参画の促進に関し、労働力調査における労働力の分類は下記のとおりである。
近年は、失業率が低水準で推移しており、労働供給の制約が厳しい状況にあることからも、女性や高齢者を含めた労働参画の促進、生産性を高めるための労働の質向上の重要性が高まっていると考えられる。
先述の2030年までのIoT・AIの経済成長へのインパクトに関して、就業者数についても推計を行った。
ベースシナリオでは、人口減少に伴い就業者数は2030年に5,561万人まで減少すると見込まれる10。
経済成長シナリオでは、2030年の就業者数11を6,300万人と推計している。人口減少が進むことは避けられないものの、IoT・AIの導入による労働参画の促進、労働の質向上やイノベーション等による一人当たりの生産性向上によってマクロ的な人手不足は避けられると考えられる。
IoT化(IoT・AIの導入を含むICT投資)及び阻害要因の解消並びにデータ流通時代に対応した企業改革(業務見直し、組織改革、人材育成など)が進めば、2030年に実質GDPを132兆円押し上げ、人口減少下でも持続的な経済成長は可能と考えられる。
経済は供給と需要とが相互に影響を与えあう関係にある。人口減少が進むと労働力不足により供給が減少し、所得の減少を通じて需要も減少するおそれがある。IoT・AIなどのイノベーションは生産性向上を通じ人手不足を解消するとともに一人当たりの所得を増加させるほか、新需要を創出する効果が期待される。
10 ベースシナリオの就業者数は、労働政策研究・研修機構「平成27年労働力需給の推計」の2030年予測値に基づく。
11 産業連関分析では、労働誘発数と表記することが一般的だが、ここではわかりやすさを考慮し就業者数と表記している。