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第2部 基本データと政策動向
第7節 ICT国際戦略の推進

(6)中国のICT政策の動向

2016年は中国における第13次5か年規画期間(2016-2020)の初年度にあたる。通信サービスの普及が一段と進んでいる中、政府はICTと社会・経済のあらゆる分野の融合を推進しており、一連の関連政策を打ち出している。特に情報化は現代化の過程において一貫して進めていく必要があると指摘しており、2016年7月に公表された「国家情報化発展戦略綱要」、同年12月に公表された「第13次5か年(2016-2020)国家情報化規画」等では、情報化の発展の方向性を示している。

中長期的な目標では、単に規模の大きな「ネット大国」ではなく、イノベーションレベルも高く、サイバーセキュリティも強化された「ネット強国」への転換を目指そうとしている。その一環として、2016年12月に「国家サイバー空間セキュリティ戦略」が公表されている。

ア 情報化発展戦略

中国政府は、「ネット大国」から「ネット強国」への転換を図る一環として、2016年7月、「国家情報化発展戦略綱要」(中国共産党中央弁公庁、国務院弁公庁)を公表した。同綱要は、今後10年間の国家情報化の方向性を示すロードマップであり、指導思想、戦略目標、基本方針、及び重要な取組を明記している。目標として、2020年までに、先進国レベルの固定ブロードバンド家庭普及率達成、3G/4Gによる都市部と農村部のカバー、5Gの技術開発と標準のブレークスルーの達成、2025年までに、世界トップレベルの固定ブロードバンド世帯普及率達成、2050年までに、ネット強国としての確固たる地位確立を掲げている。あわせて、ビッグデータの重要性とともに、情報リソースの計画・構築・管理の強化も指摘している。

さらに、同綱要の実行計画として、国務院は2016年12月に「第13次5か年(2016-2020)国家情報化規画」を公表し、2020年までに情報化発展のために取り組むガイドラインを示した。2020年までに、情報産業の市場規模を2015年時点の17兆1,000億元から26兆2,000億元に、ブロードバンド加入者に占めるFTTH契約率を56%から80%に、固定ブロードバンド家庭普及率を40%から70%に、モバイル・ブロードバンド普及率を57%から85%に、それぞれ引き上げる等の目標を掲げている。目標実現に向けた取組として、現代情報技術及び産業エコシステムの構築、情報化と工業化の融合したイノベーティブな情報経済体系の構築、国家ガバナンス体系の構築、ネット企業のグローバルなサービス体系の発展、サイバー空間におけるガバナンスの構築、サイバーセキュリティ保障体系の整備等が盛り込まれている。

イ 国家ネット空間安全戦略

インターネットの普及により、人々の生活の利便性が高まる一方、詐欺や情報漏えいといったトラブルも多発し、ネットの安全に対する監督管理のニーズが高まっている。このような背景から、2016年11月、全国人民代表大会(全人代)で「サイバーセキュリティ法」(2017年6月1日施行)が採択、公布された。同法では、セキュリティの基本原則を確立し、ネットワーク製品の国家規格等への適合義務、ネットワーク運営者によるユーザーの身元確認義務、重要情報インフラ設備の運営者による個人情報・重要データの国内保存の義務等が規定されている。

さらに、2016年12月に国家インターネット情報弁公室から「国家サイバー空間セキュリティ戦略」が公表され、サイバーセキュリティに関する取組み方針が示された。具体的には、①サイバー空間主権の維持、②国家セキュリティの防護、③重要情報インフラの保護、④ネット文化の発展推進、⑤サイバーテロ及び違法犯罪の取締り、⑥インターネットガバナンス体系の整備、⑦サイバーセキュリティ基盤の強化、⑧サイバー空間の防護能力の向上、⑨サイバー空間における国際協力の強化、の9つの側面における取組が明示されている。

ウ 戦略性新興産業の発展促進

中国はこれまで、重点育成を図る分野を戦略性新興産業と位置付け、一連の関連政策を打出してきた。最新の戦略性産業の発展促進政策として、2016年12月に国務院は「第13次5か年規画期間(2016-2020)における国家戦略性新興産業発展規画」を発表した。同規画は、2020年までの新世代情報技術やデジタル・クリエイティブ分野を含む戦略性新興産業の発展目標、重要取組み、政策措置等を示したものである。目標として、2020年までに、戦略性新興産業の付加価値が国内総生産(GDP)に占める比率を2015年時点の約8%から15%に高めるとしている。

新世代情報技術分野では、ブロードバンド中国戦略の推進等ネット強国インフラの構築、「互聯網+(インターネットプラス)」の推進、国家ビッグデータ戦略の実施、情報技術コア産業の強化、人工知能(AI)の発展、及びネット経済の管理方式の整備に取り組むこととしている。新世代情報技術分野の産業規模は2020年までに12兆元以上を目指す。

デジタル・クリエイティブ分野では、デジタル文化クリエイティブ技術・装備の創新(VR、AR、裸眼3D等)、デジタル文化クリエイティブ・コンテンツの充実、イノベーション・デザイン水準の向上、関連産業との融合発展の推進に取り組むこととしている。デジタル・クリエイティブ分野の産業規模は2020年までに8兆元を目指す。

また、体制・政策面において、管理方式の整備、産業イノベーション体系の構築、知的財産権保護・運用の強化、金融税制支援の強化、人材育成の強化等6つの側面から戦略性新興産業の発展を後押しする。

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