総務省トップ > 政策 > 白書 > 29年版 > データの処理速度を高める技術革新の進展
第1部 特集 データ主導経済と社会変革
第1節 広がるデータ流通・利活用

(2)データの処理速度を高める技術革新の進展

データ主導型社会における経済成長への貢献には4つの「V」の視点がある。すなわち、データ流通量(Volume of Data)、データの速度(Velocity of Data)、データの種別(Variety of Data)、データの価値(Value of Data)である。前項ではデータ流通量について概観した。以降では残りのVに基づいて概観する3。ここでは、まずデータ速度(Velocity of Data)についてみてみる。

デジタル・ネットワークの発達とスマートフォンやセンサー等IoT機器の小型化・低コスト化によるIoTの進展により、インターネットやテレビでの視聴・消費行動等に関する情報や、小型化したセンサーから得られる膨大なデータ(ビッグデータ)を効率的に収集・共有できる環境が実現され、膨大な計算処理能力を備えていない機器であってもクラウド上で計算を行うことが可能となり、計算環境が進化している。特に、AI等によるデータ処理の高付加価値化・自律化によって爆発的に拡大するデータ流通を、AI等によってデータの分析技術が高度化されることで、データの利活用による付加価値やイノベーションの創出が加速している。

データの生成・流通・処理・消費などデータのサプライチェーンを踏まえ、この流れをより効率的に実装するための考え方として、データの集中化と分散化による流通(フロー)の仕組みも進展している。具体的には、ビッグデータ化してAIなどで処理して付加価値を創出するデータの集中化と、必要なデータを必要な領域で局所的に処理してフィードバックするいわゆるデータの分散化(エッジ・コンピューティング等)の両面から技術革新が進んでいる。「データの集中化」は、クラウド上に集約したビッグデータの機械学習・深層学習が行われ、良質な学習データを集約することで競争上優位となるデータ集約型社会の典型的な形態である。「データの分散化」は、IoT時代の膨大なデータ量を見据え、その価値の密度に応じた最適な処理を行う観点から、クラウドにおけるデータ処理のみならず、より端末に近いネットワーク階層であるエッジ側にAIも活用したデータ処理を分担することで、その課題を解決しようとする形態である(図表2-1-2-4)。例えば、AIをエッジ側に実装することで、センサー等のデバイスから得られる連続的なデータの中から価値のあるデータのみ抽出して上位層へ伝送する、あるいはエッジ側のAIで複数のセンサーから収集されたデータに基づきデバイスやアクチュエータに制御等の指示を出すことが可能となる。さらに、機械学習できるAIを用いれば、「現場」に近い場所で「知識」を吸収して判断や処理能力を高めることが可能となる。また、エッジ側に実装されたAI間でその「知識」を共有することで協調しながら学習させる研究も進んでいる。

図表2-1-2-4 データの集中化と分散化
(出典)総務省「安心・安全なデータ流通・利活用に関する調査研究」(平成29年)

このように、エッジ側でのデータ処理を従来の上位層であるクラウドでのデータ処理と組み合わせて役割分担を図ることによって、システム全体として最適なデータ処理が可能となる。また、多様なデータ流通(フロー)が実現することで、後述するプライバシーやデータローカライゼーション等に係る課題解決も期待される。



3 Mayruce E.Stucke and Allen P. Grunes, “Big data and competition policy”, Oxford Press, 2016

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