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第2部 基本データと政策動向
第7節 ICT国際戦略の推進

2 国際的な枠組における取組

(1)多国間の枠組における国際政策の推進

ア G7・G20

2016年(平成28年)5月26日、27日に開催された伊勢志摩サミットの関係大臣会合の1つとして、4月29日及び30日の2日間、香川県高松市において、我が国、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、英国、米国及び欧州委員会(EU)のほか、オブザーバーとしてITU及びOECDの参加の下、「G7香川・高松情報通信大臣会合」が開催された。

高市総務大臣が議長を務め、IoTやAIなどの新たなICTの普及する社会における経済成長の推進やセキュリティの確保等につき議論を行い、その成果として、あらゆる人やモノがグローバルにつながる「デジタル連結世界」の実現に向けた基本理念や行動指針をまとめた「憲章5」と「共同宣言6」及び「協調行動集」(共同宣言の附属書)7の3つの成果文書を採択した。また、我が国より「AIの研究開発に関する8原則8」を提唱し、国際的な検討を行うことについて各国から賛同を得た。

総務省としては、議長国としての立場から、同会合のフォローアップとして、G7各国の取組の進捗状況と今後の更なる取組強化に向けた我が国としての提案などについて取りまとめ、2017年(平成29年)3月に「2016年情報通信大臣会合憲章及び共同宣言のフォローアップ報告書9」として公表した。

また、G20の枠組みでは、2016年(平成28年)9月に、中国(杭州)でG20杭州サミットが開催され、情報通信関連では、G20として初めてICT関連の3つのタスクフォース(デジタル経済、イノベーション、新産業革命)が設けられたほか、成果文書「デジタル経済発展及び協調イニシアティブ」において、情報の自由な流通の促進やデジタル・ディバイド解消など、G7共同宣言等において取りまとめた政策方針が、新興国も含めた共通理解として明記された。

2017年(平成29年)4月には、ドイツ(デュッセルドルフ)でG20として初めての「デジタル大臣会合」が開催され、同会合ではデジタル化によりもたらされる機会を活用するために、G20各国が協力して取り組むべき事項として、①デジタル・ディバイドの解消を目指したグローバルなデジタル化、②ベストプラクティスの共有を通じた成長のための製造のデジタル化、③情報の自由な流通の促進とプライバシー・消費者保護の促進による、デジタル世界における信頼の強化、などを内容とする大臣宣言が取りまとめられた。

引き続き、G7、G20をはじめ、OECD、APEC、ASEAN、IGF等、他の国際フォーラムにおいても、関係国と協力して、情報の自由な流通の促進やマルチステークホルダーアプローチの支持等に関するメッセージを発信し、各国際フォーラムの成果文章等にも反映させることに努めていく。

イ アジア太平洋経済協力(APEC)

アジア太平洋経済協力(APEC:Asia−Pacific Economic Cooperation)は、アジア・太平洋地域の持続可能な発展を目的とし、域内の主要国・地域が参加する国際会議である。電気通信分野に関する議論は、電気通信・情報作業部会(TEL:Telecommunications and Information Working Group)及び電気通信・情報産業大臣会合(TELMIN:Ministerial Meeting on Telecommunications and Information Industry)を中心に行われている。

現在、TELにおいては、2015年(平成27年)3月にマレーシア(クアラルンプール)で開催された第10回TELMIN(TELMIN 10)において承認された「TEL戦略的行動計画2016-2020」に基づき、ICTを通じたイノベーションの推進、ブロードバンドアクセスの向上、IoTの展開、情報の自由な流通の促進等に関する議論を深めている。総務省としても、2016年(平成28年)10月から11月にかけて、第54回TEL会合(TEL54)を京都府(関西文化学術研究都市:けいはんな学研都市)においてホストし、情報の自由な流通に関するラウンドテーブル、シルバーICTに関するラウンドテーブル、4K/8K放送に関するワークショップを開催するなど、TEL会合の運営に積極的に貢献している。

ウ アジア・太平洋電気通信共同体(APT)

アジア・太平洋電気通信共同体(APT:Asia-Pacific Telecommunity)は、1979年(昭和54年)に設立されたアジア・太平洋地域における情報通信分野の国際機関で、現在、我が国の近藤 勝則氏(総務省出身)が事務局次長を務めている。APTは、同地域における電気通信や情報基盤の均衡した発展を目的として、研修やセミナーを通じた人材育成、標準化や無線通信等の地域的政策調整等を行っている。

総務省は、APTへの拠出金を通じて、ブロードバンドや無線通信など我が国が強みを有するICT分野において研修生の受け入れ、ICT技術者/研究者交流などの活動を支援している。

エ 東南アジア諸国連合(ASEAN)

東南アジア諸国連合(ASEAN: Association of South‐East Asian Nations)は、東南アジア10カ国からなる地域協力機構であり、経済成長、社会・文化的発展の促進、政治・経済的安定の確保、域内諸問題に関する協力を主な目的としている。

我が国は、ASEANの対話国の一つとして、日ASEAN情報通信大臣会合やASEAN情報(放送)担当大臣会合等の対話の機会を活かし、日ASEAN協力の強化に向けた提案や意見交換を行っており、双方の合意が得られたワークショップ等の提案については、我が国拠出金により設立された日ASEAN情報通信技術(ICT)基金等を活用し実施されている。

また、日ASEAN間の協力強化については、特にサイバーセキュリティ分野の関心が高く、2016年(平成28年)10月に東京で開催された「第9回日・ASEAN情報セキュリティ政策会議」では、新しい「日・ASEANにおける重要インフラ防護に関するガイドライン」が承認されるとともに、このガイドラインに基づくASEAN各国における重要インフラ防護政策の導入・実施に向けた、今後の協力について合意した。

オ 国際電気通信連合(ITU)

国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union (本部:スイス(ジュネーブ)。193か国が加盟))は、1865年パリで創設の万国電信連合と1906年ベルリンで創設の国際無線電信連合が、1932年マドリッドにおいて統合の後に発足した組織である。

国際連合(UN)の専門機関の一つで、電気通信の改善と合理的利用のため国際協力を増進し、電気通信業務の能率増進、利用増大と普及のため、技術的手段の発達と能率的運用を促進することを目的としている。

ITUは、

① 無線通信部門(ITU−R:ITU Radiocommunication Sector)

② 電気通信標準化部門(ITU−T:ITU Telecommunication Standardization Sector)

③ 電気通信開発部門(ITU−D:ITU Telecommunication Development Sector)

の3部門から成り、周波数の分配、電気通信技術の標準化及び開発途上国における電気通信分野の開発支援等の活動を行っている。我が国は、無線通信規則委員会(RRB:Radio Regulations Board)委員の伊藤 泰彦氏(KDDI顧問)を初め、各部門における研究委員会(SG: Study Group)の議長・副議長及び研究課題の責任者を多数輩出し、勧告を提案するなど、積極的に貢献を行っている。

(ア)ITU−Rにおける取組

ITU−Rでは、あらゆる無線通信業務による無線周波数の合理的・効率的・経済的かつ公正な利用を確保するため、周波数の使用に関する研究を行い、無線通信に関する標準を策定するなどの活動を行っている。

国際的な周波数分配等を規定する無線通信規則の改正を目的として3〜4年に一度開催される世界無線通信会議(WRC:World Radiocommunication Conference)及び無線通信総会(RA:Radiocommunication Assemblies)については、次回は2019年(平成31年)に開催される予定である。

2015年(平成27年)11月に開催された前回の2015年世界無線通信会議(WRC-15)においては、2019年世界無線通信会議(WRC-19)の議題について審議され、2020年以降に第5世代移動通信システム(5G)において使用する周波数帯に関して具体的な周波数を検討することや、高度道路交通システム(ITS)の世界的あるいは地域的な周波数利用の調和に向けて検討すること等が合意され、現在、各研究委員会(SG)等で研究が進められている。

(イ)ITU−Tにおける取組

ITU-Tでは、通信ネットワークの技術、運用方法に関する国際標準や、その策定に必要な技術的な検討が行われている。

このITU-Tの最高意思決定会合であり、4年に1度開催される世界電気通信標準化総会(WTSA:World Telecommunication Standardization Assembly)が、2016年(平成28年)10月から11月にかけて、チュニジア(ヤスミン・ハマメット)にて開催された。WTSAでは次研究会期(2017〜2020年)の研究課題の承認、具体的な標準化活動を行う研究委員会(SG:Study Group)の議長・副議長の任命、勧告・決議の承認等が行われた。議長・副議長の任命について、我が国からは津川 清一氏(KDDI)及び宮地 悟史氏(KDDI)の議長2名の他、副議長6名が任命された。

SG3からは、ローミング市場における競争促進及びローミング料金の上限の導入等の適切な規制措置の検討の必要性を強調しつつ、ローミング料金の低廉化のためにとり得るアプローチを提案する「国際ローミング料金決定のための方法論の原則に関する新規勧告」を含む5件の勧告案が提案され、いずれも承認された。

また、将来の重要な通信基盤である第5世代移動通信システム(5G/IMT−2020)の実現に向けて、非無線分野の標準化活動を強化するため、2015年(平成27年)5月から2016年(平成28年)12月まで活動したフォーカスグループ「FG IMT-2020」の検討結果を踏まえ、2017年(平成29年)からSG13を中心に本格的な勧告化作業が行われている。

(ウ)ITU−Dにおける取組

ITU−Dでは、途上国における電気通信分野の開発支援を行っている。年2回の会合期間(9月のSG会合、4〜5月のラポーター会合)中に集中的に各研究課題について議論を行い、ベストプラクティスの共有とガイドラインの策定を通じ、途上国のデジタル・ディバイドの解消を目指している。ITU−Dにおける最高意思決定会議として4年に1度開催される世界電気通信開発会議(WTDC−17:World Telecommunication Development Conference 2017)が、2017年(平成29年)10月に、アルゼンチン(ブエノスアイレス)で開催され、今後の活動指針となる宣言及び行動計画等の採択が行われる。

カ 国際連合
(ア)国連総会第一委員会

軍縮と国際安全保障を扱っている国連総会第一委員会においては、2014年(平成26年)7月から「国際安全保障の文脈における情報及び電気通信分野の進歩」に関する政府専門家会合(GGE:Group of Governmental Experts)第4会期で、国家のICT利用に関する規範やサイバー空間におけるルールづくり等について議論がなされ、2015年(平成27年)7月にGGE第4会期の報告書が取りまとめられた。

その後、同年12月の第70回国連総会において採択された「国際安全保障の文脈における情報及び電気通信分野の進展」決議によりGGEが第5会期として再設置され、2016年(平成28年)8月にニューヨークにおいて同会期の第1回会合が開催され、議論が継続されている。

(イ)国連総会第二委員会・経済社会理事会(ECOSOC)

経済と金融を扱っている国連総会第二委員会においては、開発とICTについての議論が行われている。2003年(平成15年)にジュネーブで、2005年(平成17年)にチュニスで開催された世界情報社会サミット(WSIS:World Summit on the Information Society)のフォローアップが、経済社会理事会(ECOSOC:Economic and Social Council)に設置されている「開発のための科学技術委員会」(CSTD:Commission on Science and Technology for Development)を中心に行われ、ECOSOCを経て国連総会第二委員会においても議論されている

2015年(平成27年)12月に第70回国連総会において採択された「WSIS成果の実施に関する全体総括レビューに係るハイレベル会合における成果文書」決議に基づき、2016年(平成28年)7月までに、インターネット政策協力強化のためにCSTDに設置されていた「協力強化に関するワーキンググループ(WGEC:Working Group on Enhanced Cooperation)」が再設置された。WGECにおいて、インターネットに関する国際的な公共政策課題に関して各政府が同等の立場でそれぞれの役割・責任を果たすために何をするべきかついて、議論が行われており、2018年中頃のCSTD年次会合において議論の結果が報告される予定である。

(ウ)インターネット・ガバナンス・フォーラム(IGF)

インターネット・ガバナンス・フォーラム(IGF:Internet Governance Forum)は、インターネットに関する様々な公共政策課題について対話を行うための国際的なフォーラムであり、2006年(平成18年)以降毎年開催されている。同フォーラムは、2005年(平成17年)のWSISチュニス会合及び2015年(平成27年)12月のWSIS+10ハイレベル会合の成果文書に基づき国連が事務局を設置し、政府、産業界、学識者、市民社会等のマルチステークホルダーによって運営されている。

2016年(平成28年)12月には、メキシコ(ザポパン市)において第11回会合が開催され、「包括的かつ持続的な成長を可能とする」をメインテーマとして、約200のセッションが行われ、123カ国から約2000名が参加した。我が国も、情報の自由な流通の促進やマルチステークホルダーアプローチの支持といったG7香川・高松情報通信大臣会合の成果の発信を目的とするオープンフォーラムを主催した。

キ 世界貿易機関(WTO)ドーハ・ラウンド交渉

2001年(平成13年)11月から開始された世界貿易機関(WTO:World Trade Organization)ドーハ・ラウンド交渉においても、電気通信分野はサービス貿易分野における最も重要な分野の一つとして認識されており、貿易政策検討制度(TPRM)の枠組み等を通じて、各国の電気通信市場の一層の自由化に向けた検討が進められている。我が国は、WTO加盟国の中で最も電気通信分野の自由化が進展している国の一つであり、諸外国における外資規制等の措置の撤廃・緩和に向けて積極的に取り組んでいる。なお、同ラウンド交渉は、各国の意見対立により中断、再開を繰り返している状況であるが、サービス分野(電気通信や電子商取引の分野が含まれる)については、2011年(平成23年)末の第8回WTO閣僚会議以降、「新たなアプローチ」の一環として我が国を含む有志国によるサービス貿易自由化に関する議論が継続的に行われ、2013年(平成25年)6月より、21世紀にふさわしい新サービス貿易協定(TiSA:Trade in Services Agreement)の策定に向けた本格的な交渉に入っている。このTiSAについては、23の国・地域(EU各国を含めると50の国・地域)が参加しているが、2016年(平成28年)12月にスイス(ジュネーブ)で開催された非公式閣僚会合において、2017年(平成29年)以降の早期妥結に向けて引き続き連携していくことで一致している。

ク 経済協力開発機構(OECD)

経済協力開発機構(OECD:Organisation for Economic Co-operation and Development)に関しては、デジタル経済政策委員会(CDEP:Committee on Digital Economy Policy)における加盟国(35ヶ国)間の意見交換等を通じ、情報通信に関する政策課題及びその経済・社会への影響について、各国の政策立案に資するような調査検討を行っている。OECDの特徴は、他の国際機関に比べ、最新の政策課題について、経済的な観点から、より客観的・学術的な議論(エビデンスベースの取組)を行う点にある。CDEPは、通信規制政策、情報セキュリティ、プライバシー等の分野において特に先導的な役割を果たしている。

2016年(平成28年)6月には、メキシコ(カンクン)において、イノベーション、成長、社会繁栄を主なテーマとするデジタル経済に関する閣僚級会合が開催された。ICT分野におけるOECDの閣僚級会合は、1998年(平成10年)のカナダ(オタワ)会合、2008年(平成20年)の韓国(ソウル)会合以来、3回目の開催となった。OECD加盟国の他、アウトリーチ(非加盟国の閣僚級、国際機関の長)の参加を得て議論が行われ、その成果は、情報の自由な流通の支持、ブロードバンドの連結性強化によるデジタル・ディバイドの解消等を内容とする閣僚宣言(カンクン宣言)10としてまとめられた。

また、このような流れを受け、OECDにおいては、デジタル化の便益を社会全体で包摂的に享受するための分野横断的な検討を進める事業として、「デジタル化に関する水平的事業(Going Digitalプロジェクト)」(2017年及び2018年の2年間の事業)を実施することとしている。

ケ その他

インターネットの利用に必要不可欠なIPアドレスやドメイン名といったインターネット資源については、重複割当ての防止等全世界的な管理・調整を適切に行うことが重要である。現在、インターネット資源の国際的な管理・調整は、1998年(平成10年)に民間団体として発足したICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)が行っており、ICANNは、年に3回の会合を開催し、IPアドレスの割当てやドメイン名の調整のほか、ルートサーバー・システムの運用・展開の調整や、これらの技術的業務に関連するポリシー策定の調整を行っている。総務省は、ICANNの政府諮問委員会(各国政府の代表者等から構成)の正式なメンバーとして、その活動に積極的に貢献している。2016年(平成28年)6月には、我が国の前村 昌紀氏(一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC))がICANNの新しい理事として選出された(任期は同年11月から3年間)。

ICANNは発足時から米国政府との契約に基づいてインターネット資源の管理を行ってきたが、2014年(平成26年)3月に、米国政府が、ドメイン名システムに関して同国が担ってきた役割を民間部門に移管する意向を表明した。その後、ICANNにおいて、米国政府との契約を解消し、ICANNが完全に独立するために必要な新たな体制やICANNの説明責任を確保するための仕組みについて検討が行われてきた。2016年(平成28年)3月にモロッコ(マラケシュ)で開催された会合において、その検討結果が取りまとめられ、米国政府に提出された。同年10月、米国政府はインターネット資源の管理に関する同国の役割を民間部門に移管した。なお、ICANNの説明責任を確保するための仕組みについては、引き続きマルチステークホルダーによる議論が行われている。



5 デジタル連結世界憲章(仮訳):http://www.soumu.go.jp/main_content/000416965.pdfPDF

6 G7情報通信大臣共同宣言(仮訳):http://www.soumu.go.jp/main_content/000418726.pdfPDF

7 G7協調行動集:http://www.soumu.go.jp/main_content/000416967.pdfPDF

8 AIの研究開発に関する8原則:http://www.soumu.go.jp/joho_kokusai/g7ict/main_content/ai.pdfPDF

9 2016年情報通信大臣会合憲章及び共同宣言のフォローアップ報告書:http://www.soumu.go.jp/joho_kokusai/g7ict/index.html別ウィンドウで開きます

10 http://www.oecd.org/internet/Digital-Economy-Ministerial-Declaration-2016.pdfPDF

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