総務省トップ > 政策 > 白書 > 29年版 > インドのICT政策の動向
第2部 基本データと政策動向
第7節 ICT国際戦略の推進

(8)インドのICT政策の動向

2014年の連邦下院選挙によりインド人民党(BJP)率いる国民民主連合(NDA)が単独過半数を獲得し成立したナレンドラ・モディ政権であったが、2年目を迎えた2016年においても経済改革が最重要課題となった。

情報通信分野においては、通信サービス市場が拡大を続けており、携帯電話サービス加入者数が2016年9月末現在で10億4,900万を超え、モバイルインターネット加入者数は3億6,700万を超えた21。拡大する市場と加入者を支えるための通信インフラの整備が進められており、スマートフォンや4Gサービスの一層の普及拡大が予測されている。

政府は2014年8月に策定した「デジタル・インディア計画」を継続して推進しており、様々な分野をデジタル化することにより知識経済社会へ変革することを目指している。また「JAMビジョン」(J=Jhan Dhan、人々のお金。A=Aadhaar、固有ID番号。M=Mobility、モビリティ。)を打ち出し、国民の口座開設による金融包摂22、国民ID番号との連動とともに、携帯電話・スマートフォン・インターネット等の情報通信技術によるオンライン化・デジタル化や情報インフラの整備等によりモビリティ向上を図ることで国民生活を変革することを目指している。

ア ルーラル地域へのブロードバンド普及促進政策

インド政府は2011年10月に国家光ファイバ網(National Optical Fiber Network(NOFN))の構築を承認し、全国25万のグラム・パンチャヤットにブロードバンドを敷設する計画を開始した。モディ政権は、NOFNをBharatNet(「インドのネット」の意味)と改称し、デジタル化による知識経済社会への変革を目指すデジタル・インディア計画の実現に向けて全国レベルでの通信インフラ整備を進めている。これにより、電子商取引、オンラインバンキング、電子政府、遠隔教育、遠隔医療等の利活用を通じて、人々の経済活動や雇用を促進する計画である。

BharatNet計画の第一段階では、2017年3月までに10万のグラム・パンチャヤット(村落の単位)にブロードバンドを敷設、第二段階では2018年9月までに15万のグラム・パンチャヤットに敷設する計画である。また、2016年2月には、インド電気通信規制庁(TRAI)が国家ブロードバンド普及計画BharatNetの実現のために官民パートナーシップモデル(PPPモデル)の運用を勧告した。

イ インフラ共用促進政策

通信省・電気通信局(DoT)は、2016年2月に、統合ライセンス協定(Unified License Agreement)の内容を修正し、サービスプロバイダ間の相互の合意に基づきアクティブ・インフラ(アンテナ、フィーダー・ケーブル、ノードB、無線アクセス網(RAN)、伝送システム)の共用を認めることとした。

これまでも政府は、通信塔等のパッシブ・インフラの共用を認可してきたが、新たにアクティブ・インフラの共用も可能にすることで、プロバイダ間のインフラ共有が促進される。

なお、DoTは2015年に周波数共用と取引に関するガイドラインを発出し、同一サービスエリア内において同一周波数帯(2G、3G、4G)の免許を保有する通信キャリア2社間での周波数共用を可能とし、これにより周波数の効率的利用とサービス品質の改善が促進された。

インド政府は、インフラや周波数の共用を促進することで、プロバイダのインフラ整備コストを軽減し、インフラ敷設の効率化・迅速化を進め、デジタル・インディア計画の実現に向けたインフラ整備を促進する方針である。

ウ 周波数オークション

インドでは、2016年10月1日と3日に周波数オークションが実施された。対象となったのは過去最大規模の2,354.55MHzで、二日間にわたり合計31ラウンドが実施され、そのうち約40%に当たる965MHzが落札された。落札総額は6,578億9,000万INRで、2016年1月にTRAIが設定した最低落札価格総額5兆6,000億INRを大幅に下回る結果であった。

入札にかけられたのは22免許エリアの700、850、900、1800、2100、2300、2500MHz帯で、700MHz帯が入札にかけられたのはインドにおいては今回が初めてであった。

最終的には、700、900MHz帯は価格高騰のため落札されず、主なものとしてはバルティ・エアテルが1800、2100、2300MHz帯で合計173.8MHz、アイデア・セルラーが800、2100、2300、2500MHz帯で合計349.20MHz、リライアンス・ジオが800、1800、2300MHz帯で合計269.9MHzを獲得した。



21 固定電話サービス加入者数は2,449万、固定インターネット加入者数は2,126万。TRAI『2016年9月末インドテレコムサービス四半期実績指標レポート』

22 2015年8月に開始された「首相による人々のお金計画(PMJDY)」銀行に口座を持たない貧困世帯やルーラル地域で金融機関の利用が限定的である世帯に口座を開設させることにより「金融包摂」の実現が目指されている。

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