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第1部 特集 データ主導経済と社会変革
第2節 熊本地震におけるICT利活用状況に関する調査結果

(3)避難時のICT環境の整備

避難時のICT環境については、電気通信事業者やベンダー、メーカー等による公衆無線LANの無料開放や携帯電話充電器の貸与、被災者や避難所等へのラジオ等の配布など様々な支援が行われた。

公衆無線LANについては、携帯電話事業者等による「00000JAPAN」の提供やエリアオーナーWi-Fiの利用開放、避難所への特設Wi-Fiの設置などを通じて、被災者の通信環境を確保する取組が実施された(図表5-2-2-14)。

図表5-2-2-14 公衆無線LAN環境整備の取組
総務省「電気通信事業者の平成28年熊本地震への対応状況」(平成28年)及び各種資料より作成

「00000JAPAN」とは、各事業者が提供するWi-Fiサービスを、大規模災害発生時に被災者の通信接続手段の一つとして利用してもらうことを目的に、災害用の統一SSID「00000JAPAN」として公衆無線LANサービスを提供するものである。本取組は東日本大震災を教訓として始められており、2013年9月に同災害において被災地となった岩手県釜石市で実証実験が行われた。その後、2014年5月に正式運用が開始され、熊本地震で初めて実運用に至った。

その利用状況を示したのが図表5-2-2-15である。「利用した」が23%にとどまり、「知っていたが利用せず」が37%、「知らなかった」が40%に上った。本結果は、携帯電話等の他の代替手段が問題なく利用できたことが大きく寄与したと考えられるが、より大きな通信障害が発生した際のWi-Fiの実用性を高めるためにも、設置・利用場所の増加と認知度向上を進める必要がある。

図表5-2-2-15 災害時Wi-Fiの認知と利用状況
(出典)情報通信総合研究所「熊本地震におけるWi-Fi利用状況調査」

一方で、利用者からは電気通信事業者の区別なく簡易に接続できる00000JAPAN等の公衆無線LANの有用性が挙げられている。自治体職員による業務利用では、応援で他の自治体からきている職員のインターネットアクセス提供手段としての活用や公衆無線LANを介したインターネットによる情報収集が行われていた。被災者についても、スマートフォンでインターネットに接続する人からは公衆無線LAN環境の整備要望が出されていた。

このような評価から災害時の公衆無線LANの有用性については一定の評価がされている一方、設置にあたっては電気通信事業者が避難所を回ってルーターの設置を行うなど災害時により迅速かつ効率的な対応ができるよう、設置場所とニーズの情報が共有されることが望ましい(図表5-2-2-16)。

図表5-2-2-16 公衆無線LANの利用に対するニーズと顕在化した効果と課題
(出典)総務省「熊本地震におけるICT利活用状況に関する調査」(平成28年)

被災者の通信利用環境の整備として、スマートフォン等の電源確保のため、携帯電話用充電器(マルチチャージャ)の提供や被災に伴う携帯電話料金の減免等の説明を実施するための避難所等へ相談コーナーが設置された。また、災害時に直ちに利用できるよう特設公衆電話の事前設置が推進されており、熊本県内での事前設置は30箇所であり、うち6箇所が運用された。

このような取組が行われていたにも関わらず、携帯電話の充電については、21.0%が「充電できなかった」と回答している(図表5-2-2-17)。また、電気通信事業者へのインタビュー結果からも「避難所に充電器を設置して回ったが、避難所の情報が整理されておらず、設置に時間がかかった」という意見もあり、避難者数のピークが発災直後の1、2日であったことに鑑みると、充電需要に対して供給が不十分な時期があった可能性が示唆される。このような状況については、Wi-Fiの提供と同様、電気通信事業者が効率的に避難所や避難所に置ける通信環境の整備状況を確認・共有できていないことが一因と考えられることから、より電気通信事業者間の連携や自治体との連携を含めた体制強化が必要とされている。

図表5-2-2-17 避難所における携帯電話の利用可否・充電の状況
(出典)総務省「熊本地震におけるICT利活用状況に関する調査」(平成28年)
「図表5-2-2-17 避難所における携帯電話の利用可否・充電の状況」のExcelはこちらEXCEL / CSV(1)はこちら / CSV(2)はこちら

なお、通信の混雑の影響を避けながら、安否の確認や避難場所の連絡等をスムーズに行うことができるよう、発災直後から災害用伝言サービスが提供された。利用者は、固定電話・携帯電話の双方から利用ができるよう環境が整えられた(図表5-2-2-18)。

図表5-2-2-18 災害用伝言サービスの利用実績6
(出典)総務省「電気通信事業者の平成28年熊本地震への対応状況」(2016年7月29日)


6 集計期間は、熊本地震時の同サービス提供期間(4/14〜5/31)。各社で集計方法が若干異なる。

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