イノベーションは、古くは経済学者のシュンペーターが既存の技術・資源・労働力などを従来とは異なる方法で新結合することをイノベーションと定義している。比較的最近では、OECDが①プロダクト・イノベーション(新製品・新サービス)、②プロセス・イノベーション(製品・サービスの生産・流通方法の革新や大幅改善)、③業務・組織イノベーション、④マーケティング・イノベーションを含む広い概念としている。
スマートフォン関連のプラットフォームに関してイノベーションを考えるにあたっては、第3項で取り上げる過去のOver the Topといわれる例、近年の音声入力、データ取引市場といった例が示唆的である。
過去を振り返ると、ICT分野ではビジネス上影響力の大きいレイヤーは変遷しており、従前の規格の上位に横断的に互換性のある規格が登場することが繰り返されている(図表1-3-2-1)。
1995年以前、まだ携帯電話もインターネットも本格的に普及しておらずパソコン通信が行われていた時代、通信の速度は低く端末が中心的な存在であった。
1995年頃から2010年頃までは、通信ネットワークを持つ通信事業者が中心的な役割を担い、携帯電話の端末からアプリ・サービスまでをコーディネートしていた。
2007年以降、GoogleやAppleがスマートフォンのOSを提供するようになり、通信事業者に関わらずアプリやサービスが利用されるようになっている。
また、あるSNSが異なるOSでも利用できること、従来OSが担ってきた認証等のプラットフォームの機能をSNSが担いつつあることもこの傾向の1つと考えられる。
2017年時点では、AmazonのAlexaなどの音声認識とリアル空間とを連携させるサービス、データ取引市場や情報を分散処理する技術が注目されている。
データの囲い込みが新たなイノベーションを阻害しないよう、競争環境の整備が求められると考えられる。