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付注
付注

付注4 IoT時代におけるICT経済の諸課題に関する調査研究(産業連関分析関係)

1)将来予測値の推計方法

市場規模、実質GDP、従業者数の将来予測値は産業連関分析の手法を応用して推計した。

■推計モデル

将来予測に用いた推計モデルは以下の式で示される消費を内生化したモデルである1。本文中での市場規模は生産誘発額、就業者数は労働誘発数の値を指している。予測値はベースシナリオと経済成長シナリオの2通りを算出した。実質GDPは実質GDP÷生産誘発額総計の比率(ベースシナリオデータで計算)を生産誘発額に乗じて算出した。

■使用したデータ

推計に使用したデータは2011年産業連関表を元に作成した。まず、前述の(1)式〜(3)式の変数を2011年データで計算し、これを元に2016年、2020年、2025年、2030年の変数を推計した。部門分類は以下の26分類であるが、推計結果は番号1〜20を情報通信として集計して7分類として示した。産業連関表の部門分類は基本的に統合大分類を示したが、一部分析用の部門分類と対応しない部分は基本分類を示した。

分析用の部門分類

■変数の予測方法

推計に用いた変数は、まずベースシナリオの予測値を算出し、それを元にIoT利活用が進展した場合の経済成長シナリオの予測値を算出2した。それぞれの算出方法は以下のとおりである。

○ベースシナリオ
・投入係数の予測方法

投入係数は、中間投入額と国内生産額を予測し、中間投入額を国内生産額で除して計算した。各部門の中間投入額合計、中間需要額合計の予測値を算出し、KEO-RAS法3を用いて中間投入額行列を推計した。

国内生産額、中間投入額、中間需要額は2011年の値に接続産業連関表から計算した平均成長率を乗じて計算した4

・最終需要額の予測方法

最終需要額はベースシナリオの値を2016年実績値及び内閣府の予測値5を元に計算した。このため、ベースシナリオの実質GDP成長率は内閣府の予測値と同じ値となっている。

品目別の内訳2011年産業連関表の比率と同じと仮定し、2011年の比率を乗じて案分した。なお、家計消費支出額と輸入額、消費係数と輸入係数を計算するために予測値を算出している。

2016年の最終需要額のうち、家計消費支出額と輸出額はSNAのGDEの内訳の値をそのまま採用し、家計消費支出以外の国内最終需要額は他の内訳(輸入額以外)を集計して計算した。家計外消費支出は2011年産業連関表データで計算したGDEに対する比率を2016年の最終需要額に乗じて計算した。

2020年以降の最終需要額は、2016年の総合計値に内閣府の予測値の成長率を乗じた総合計値を按分した。按分比率は基本的に2016年の比率を用いたが、家計消費支出は高齢化の進展と共にGDEに占める比率が高まることを想定した6

・消費係数、輸入係数、付加価値係数、労働係数の予測方法

消費係数は前述した各部門の消費支出額をGDEの合計値で除して計算した。残りの変数は、上述した最終需要額を元に以下の(4)式7を用いて計算した生産誘発額を国内生産額として用い、国内生産額を元に算出した。

X=(I−A)−1(F+E)…(4)

輸入係数は前述した各部門の輸入額を国内需要額で除して算出し8、付加価値係数は各部門の付加価値額を国内生産額で除して計算した9

労働係数は各部門の従業者数を国内生産額で除して計算した。2016年の従業者数の合計値は総務省「労働力調査」の値を採用し、2020年と2030年は労働政策研究・研修機構の予測値を採用し、2025年は線形を仮定して補完した10

○経済成長シナリオ

IoT利活用が進展することで、ベースシナリオから各種変数が変化すると想定して、アンケート結果から算出した係数(算出方法は調査報告書を参照)を乗じて予測値を算出した。

投入係数については、KEO-RAS法に用いる国内生産額と中間投入額合計、ICTサービス11需要額計が増加すると想定し、ベースシナリオの値にアンケート結果から算出した係数を乗じた値を用いた。

最終需要額については、ベースシナリオに比べて国内総固定資本形成(民間)と輸出額が増加すると想定し、ベースシナリオの値にアンケート結果から算出した係数を乗じた。

消費係数は、IoTを活用したリアルタイム化(リアルタイムにデータを分析することで、供給と需要のマッチングを最適化する又は各タイミングに応じたレコメンド等)・カスタマイズ化(データを活用して個別または顧客属性ごとに最適な提案や商品のカスタマイズ、レコメンド等)によって、ベースシナリオよりも上昇することを想定し、ベースシナリオの値にアンケート結果から算出した係数を乗じた。

労働係数は、労働生産性が変化することを想定して、ベースシナリオの値にアンケート結果から算出した係数を乗じた。

輸入係数と付加価値係数はベースシナリオと同じ値とした。

2)アンケート調査

本アンケート調査は、企業のIoT、ICT利活用の状況・見通し、企業改革の実施状況等を把握することを目的として実施した。

表.調査設計
(注)中小企業庁の分類を参考に企業分類。「農林水産業」、「製造業」、「建設業」、「電力・ガス・水道業等」、「金融・保険業」、「不動産業」、「運輸業」、「情報通信業」は常勤従業員数が 300 人以上の企業を「大企業」、同 300 人未満の企業を「中小企業」として分類。「商業」、「サービス業(情報通信関連サービス業を含む)、その他」は、常勤従業員数が 100 人以上の企業を「大企業」、同 100 人未満の企業を「中小企業」として分類。


1 モデル式は中村(2016)と同様のものを採用した。消費を内生化したモデルの詳細は宮沢(1975)を参照。労働係数は各部門の就業者数を各部門の国内生産額で除した値、輸入係数は各部門の輸入額を各部門の国内需要額で除した値、消費係数は各部門の消費支出額を付加価値額合計で除した値、付加価値係数は各部門の付加価値額(粗付加価値部門計から家計外消費支出を除いた値)を各部門の国内生産額で除した値のベクトルである。

2 公務は推計に含めているが、シミュレーションの対象とはしておらず、ベースシナリオとシミュレーションシナリオの変数は基本的に同じ値である。ただし、シミュレーションシナリオの労働係数は公務の従業者数がベースシナリオから変化しないと想定して逆算した。

3 詳細は黒田他(1997)を参照。

4 平均成長率は、平成12-17-23年接続産業連関表における部門別実質国内生産生産額の2000年〜2005年の平均成長率と2005〜2011年の平均成長率の平均値を用いた。中間投入額合計は、まず全産業合計値を国内生産額と同じ平均成長率を用いて計算した。全産業合計の投入係数(中間投入額合計÷国内生産額合計)は変化しないと想定した。次に、2011年の各産業の中間投入額合計値に平均成長率を乗じて計算した部門別の予測値(暫定値)のシェアを用いて、全産業合計値を按分した。中間需要額合計は、2011年の各産業の中間需要額合計値に平均成長率を乗じて計算した部門別の予測値(暫定値)のシェアを用いて、上記の中間投入額合計値を按分した。これは中間投入額の行列の行和と列和を一致させるためである。

5 内閣府『中長期の経済財政に関する試算』(平成29 年1月25 日経済財政諮問会議提出)におけるベースラインケースの実質GDP成長率予測値を用いた。2026年以降の予測値は存在しないため、2022〜2025年と同じ0.8%とした。

6 家計消費支出の比率は5年ごとの平均値を線形近似で延長した比率を乗じて計算した。国内総固定資本形成(民間)、輸出額、及び輸入額(後述する輸入係数の計算に使用)、家計外消費支出はGDEに対する比率が2016年のまま一定と仮定して、2016の比率を乗じて計算し、その他の国内最終需要額は残差として計算した。

7 変数の定義は(1)〜(3)式と同じである。

8 国内需要額は国内生産額から最終需要額を除いた中間需要額に国内最終需要額を加えることで計算できる。

9 各部門の付加価値額は国内生産額に2011年データで計算した付加価値係数を乗じた暫定値のシェアを用いてGDE合計値を按分した値である。

10 各部門の従業者数は国内生産額に2011年データで計算した労働係数を乗じた暫定値のシェアを用いて従業者数合計値を按分した値である。

11 電気通信、情報サービス、インターネット附随サービスの合計値。

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