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第2部 基本データと政策動向
第3節 電波政策の展開

(3)電波の混信・妨害の予防

電波利用が拡大する中で、混信・妨害を排除し良好な電波利用環境を維持していくことはますます重要な課題となってきている。このため総務省では、電波の監視、混信・妨害の排除に加え、それらの原因となり得る機器への対応も強化している9

近年、携帯電話の急速な普及や電波監視の強化などにより、過去に社会問題となった不法三悪と呼ばれる無線局(不法市民ラジオ、不法パーソナル無線及び不法アマチュア無線)による重要無線通信等への混信・妨害が減少する一方で、訪日外国人等により日本国内に持ち込まれた外国規格の無線機器や、インターネットの通信販売等で容易に手に入る電波法の技術基準に適合していない無線機器等による無線通信への混信・妨害が問題となっている。

このような問題への対策の一つとして、総務省では、空港・港湾における周知啓発活動等の対策を強化し未然防止を図るほか、発射する電波が著しく微弱な無線設備として販売されている無線設備を市場から購入して、電波の強さが電波法に定める基準に適合しているかどうかの測定を行い、その結果を一般消費者の保護のための情報提供として公表10する「無線設備試買テスト」の取組を平成25年度から実施している。この取組は、一般消費者が基準に適合していない無線設備を購入・使用して電波法違反(無線局の不法開設)となることや他の無線局に混信・妨害を与えることを未然に防止することを目的としている。また、公表した無線設備の製造業者等に対しては、電波法で定める技術基準の適合への改善等を要請している。

なお、無線局が他の無線局の運用を著しく阻害するような混信・妨害を与えた場合には、製造業者又は販売業者に対して報告を徴収し、その事態を除去するために必要な措置をとることについて勧告・公表を行うことが制度上できるが、近年の無線設備の製造・流通実態の変化に対応して、この制度の実効性を高めるため、平成27年度に電波法が改正された。これにより、平成28年度から、無線設備の製造業者、輸入業者又は販売業者に対して電波法で定める技術基準に適合しない無線設備を製造、輸入又は販売することがないよう努力義務が規定されたほか、勧告に従わない者に対する措置に関する命令制度が導入された。

政策フォーカス 新たな付加価値を創造する5Gの実現に向けて

1.スーパースマートインフラ「第5世代移動通信システム(5G)」

我が国における移動通信システムは、1968年のポケットベルのサービス開始を皮切りに、半世紀にわたって、場所に制約されないクリアな通話や高速データ通信の実現を目的として進化してきた。LTEなどの高速通信サービスとスマートフォンの普及により、我々のコミュニケーションやビジネスの在り方は大きく変化し、電話やメールだけでなく、写真や動画を簡単に共有・閲覧できるようになったが、これまでの携帯電話は、基本的に「人」と「人」がコミュニケーションを行うためのツールであった。

次世代の移動通信システムとして2020年の実現が期待されている5G(ファイブジー)は、4Gまでの進化の延長となる「超高速」だけでなく、家電、クルマなど、身の回りのあらゆる機器(モノ)が同時にネットワークにつながる「多数接続」、遠隔地にいてもロボット等の操作をスムーズに行うことができる「超低遅延」といった新たな特徴を有している(図表1左)。

あらゆる「モノ」がインターネットにつながり制御しあうIoT社会(Internet of Things)が到来しつつある中、5Gはそれを支えるICT基盤の役割が期待されている。

現在、電波の利用は、携帯電話や無線LANなどの無線通信ネットワークのほか、ドローンをはじめとするロボット、医療、環境など様々な分野へと拡大している。今後、スマートメータ、自動販売機、ホームセキュリティなど、これまで移動通信システムが十分に活用されていなかった分野へと広がろうとしている5GはIoT社会を支えるスマートインフラとして本命視されている。その結果として、ドローンをはじめとするロボット、医療、環境に至るまでのあらゆる分野の産業構造の変化を引き起こし、新たな市場を創出すると見込まれている(図表1右)。

図表1 (左)5Gの主な要求条件 (右)5Gによる産業構造の変化

さらに、5Gによって、タイムラグを感じることのない、リアルタイムな通信が可能となることで、基本的にはクルマがネットワークに依存しないでサービス展開をしていた社会から、クルマとネットワークがつながり、新たな価値やビジネスが創出される安全・安心な「Connected Car」社会へ進展すると考えられている。ビッグデータ、AI等の進化もあいまって、地図、環境等の情報とクルマを組み合わせる技術が様々な分野に普及展開し、新サービス創出を促すと期待されている。

図表2 「Connected Car」社会における新たなビジネス

2.2020年に実現が期待されるワイヤレス社会

このような5Gの普及とその利活用が進展することにより、2020年にどのような社会が実現できるだろうか。例えば、次のような社会の実現が期待されている。

①災害に強い社会

災害時に、街中に多数設置された高精細な映像センサーにより収集されたデータを活用することで、被災状況を網羅的に把握でき、被災者に最適な避難経路情報を迅速に届けることが可能になる社会。

②高度なモビリティ社会

公共交通機関が利用しにくい地域でも、自動運転タクシーで好きな時に、好きな場所に出かけることができる社会。例えば高齢者が検診に出かける際、目的地を告げると自動運転タクシーがタイムリーに到着する。また、病院に着くまでの車内でも健康チェックを受けることができる。

③先進医療が提供される社会

離島で急患が発生し、ヘリで搬送する際、移動中でもタイムラグの少ない高精細映像を用いた遠隔手術を行ったり、専門医がヘリ内の医師に指示をしながら処置をするなどの先進医療を提供することが可能になる社会。

④超臨場感をどこでも楽しめる社会

バーチャルリアリティ技術を用いた360°パブリックビューイングによる迫力あるスポーツ観戦が可能となる社会。またカメラで選手を撮影することにより選手の情報を取得したり、リアルタイムマルチ中継により一つのタブレット端末で全競技を楽しむこと等もできるようになると期待されている。

3.5Gの実現に向けて

2020年の5G実現に向けて、総務省では、研究開発や実証試験の推進、各国・地域の政府等との国際連携の強化、周波数の確保などに積極的に取り組んでいる。

具体的には、5Gの実現に不可欠な要素技術の研究開発に2015年度から取り組むとともに、2017年度からは、5Gの具体的な利用シーンなどを想定したユーザ参加型の総合的な実証試験を、東京だけでなく地方でも実施する(図表3)。

図表3 研究開発・総合実証試験の推進

また、グローバルなシステムである5Gが、経済や社会の基盤になるとの認識のもと、国際電気通信連合(ITU)における5Gの国際標準化活動に積極的に貢献するとともに、欧米やアジア諸国との国際連携の強化にも努めている。

さらに、5Gの実現には、使用する周波数の早期の明確化が重要であることから、国際的な動向等を踏まえつつ、5G用の周波数確保に向けた検討を2016年10月より、情報通信審議会において進めている11

総務省は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される2020年を5G実現のターゲットイヤーとしている。換言すると、2020年は5Gが安全・安心の確保、便利な社会の実現、地域の活性化・地方創生、新たなビジネスの創出を支える基盤となるよう、これら必要な環境整備を推進することとしている。



9 総務省電波利用ホームページ 電波監視の概要:http://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/monitoring/index.htm別ウィンドウで開きます

10 無線設備試買テストの結果:http://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/monitoring/illegal/result/別ウィンドウで開きます

11 2017年夏頃までに答申がまとめられる予定である。

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