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第1部 特集 データ主導経済と社会変革
第4節 産業連関表によるICT投資等の効果検証

(4)企業内情報活動とICT人材

先述のとおり、産業連関表には、取引基本表とよばれる表以外にも、各種付帯表が作成されている。各種付帯表のうちの雇用マトリックスを活用すると、どの業種でどのような職種の就業者数が多いのかを分析することが可能である。情報化に関しては、雇用マトリックスを用いると業種別の情報通信関連職種の推移が定量的にとらえられる。

合わせて企業就労者に行ったアンケート結果から、現在から将来のICT人材不足についても取り上げる。

ア 企業内情報活動

ここでは、産業連関表の雇用マトリックスを活用し、1995年から2011年の情報通信職の数をみることで企業内情報活動を概観する。

雇用マトリックスの職種を集計し、システムエンジニア・プログラマー、電子計算機・PCオペレーター、データ・エントリー装置操作員、通信機器操作従事者、電話交換手・電話応接事務員を情報通信職として定義10している(図表3-4-2-7)。

図表3-4-2-7 情報通信職の分類
(出典)総務省「IoT時代におけるICT経済の諸課題に関する調査研究」(平成29年)

情報通信職は1995年から2011年にかけて増加傾向であるが2000年から2005年に一旦落ち込みを見せている(図表3-4-2-8)。落ち込みの要因は後述のとおり、システムエンジニア・プログラマーが増加する一方、電子計算機・PCオペレーターが減少した影響である。業種別に情報通信職の推移をみると、圧倒的に数が多いのは情報通信であり、次いで対事業所サービス、商業となっている。

図表3-4-2-8 業種別情報通信職数の推移
(出典)総務省「IoT時代におけるICT経済の諸課題に関する調査研究」(平成29年)における集計データより作成
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職種別に情報通信職数の内訳をみると(図表3-4-2-9)、最も多いのが、システムコンサルタントやソフトウェア作成者、システム運用管理者を含むシステムエンジニア・プログラマーの類型である。ただし、職種の定義が年によって変化している点は注意が必要であり、2011年にはシステム運用管理者、通信ネットワーク技術者等が加わっている。

図表3-4-2-9 業種別情報通信職数内訳の推移
(出典)総務省「IoT時代におけるICT経済の諸課題に関する調査研究」(平成29年)における集計データより作成
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ここでの電子計算機・PCオペレーターは、2000年をピークに減少している。ただし、定義が変化しており、2005年までは「電子計算機又はこれとオンラインで作動する機器の操作に従事するもの」であるが、2011年からは「指示を受けて、専らパーソナルコンピュータを操作することにより、定型的な文書、表などを作成する仕事に従事するもの」となっている点には注意が必要である。

電話交換手・電話応接事務員に関して、2005年までの産業連関表では電話交換手を対象範囲としていたが、電話交換手の減少に伴い、2011年からは電話交換手の項目を削除し、コールセンターのオペレーターを含めて電話応接事務員の項目が設定されている。2011年の電話応接事務員の数をみると対事業所サービスが14万人と2005年と比較して増加しておりコールセンターが含まれるようになった影響と考えられる。

業種別にみると、情報通信を別にすれば、対事業所サービス、商業における情報通信職数の増加が目立つ。

雇用マトリックスを用いると、情報通信職に限らず、各産業における職種別の従業者数がわかる。ここでは自動車及び医療等を例に取り上げる。

自動車産業11の就業者の職種をみると(図表3-4-2-10)、自動車の組み立てに従事する者は1995年から2011年まで増加している。他方、一般事務員は2005年から2011年にかけて減少している。

図表3-4-2-10 自動車産業の職種別従業者数の推移
(出典)総務省「IoT時代におけるICT経済の諸課題に関する調査研究」(平成29年)における集計データより作成
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情報通信職種は2011年時点では5800人程度と低い割合にとどまっている。

医療・保健産業12の就業者の職種をみると(図表3-4-2-11)、医師、看護師、薬剤師等のほかに、一般事務員や調理人等からも構成されていたことがわかる。看護師は一貫して増加している。2011年には介護職員が大きく増加している。一方で、調理師は2000年から2011年にかけ大きく減少、一般事務員も2005年から2011年にかけ減少している。

図表3-4-2-11 医療・保健産業の職種別従業者数の推移
(出典)総務省「IoT時代におけるICT経済の諸課題に関する調査研究」(平成29年)における集計データより作成
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情報通信職種は低い割合にとどまっている。

産業連関表のデータは5年に1度という制約はあるものの、雇用マトリックスを用いると、企業内情報活動に限らず業種ごとに職種別の人数がわかる。一般事務員が減少している傾向、加えて医療・保健産業においては調理人も減少している傾向がある一方で、自動車産業においては自動車・機械器具組立従事者、医療・保健産業においては看護師や介護士等が増えている傾向からは、アウトソースできる部分はアウトソースし、その業固有の業務に占める者の割合が高まりつつある可能性がうかがわれる。

昨今、IoTやAIが雇用に与える影響についての議論がなされているが、各産業について単一のイメージにとらわれることなく、様々な職種があることを前提とした上で、どの職種がAIに代替されるか、どの職種が人間に強みがあるか考察することは有益と考えられる。例えば、上記で取り上げた医療・保健産業において、一般事務員が2005年から2011年にかけて減少している一方、看護師や介護士は1995年から一貫して増加している。定型的な事務はコンピュータにより代替される一方、人と人とのコミュニケーションが求められる職種は人への需要があるとの仮説とも整合的であり、今後産業連関表のデータの活用の観点からも、AIと雇用との議論の観点からも分析の進展が期待される。

イ ICT人材

産業連関表は原則5年に1度の公表であり、2017年時点で利用可能であるのは2011年のデータである。近年、ICT人材の不足、ICT人材に限らず少子高齢化や団塊世代の退職に伴う労働力の不足が言われている。企業関係者へ2017年に行ったアンケート結果から、ICT人材不足の現状及び見通しを補足する。

現在では、増加を続けてきたシステムエンジニア・プログラマーを中心に情報通信関連の人手不足が生じており、今後は情報セキュリティ関連、ビジネス創出人材、データサイエンティスト等の人手不足が深刻化する見通しである(図表3-4-2-12図表3-4-2-13)。

図表3-4-2-12 ICT人材不足の見通し(全業種)
(出典)総務省「IoT時代におけるICT経済の諸課題に関する調査研究」(平成29年)
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図表3-4-2-13 ICT人材不足の見通し(情報通信業)
(出典)総務省「IoT時代におけるICT経済の諸課題に関する調査研究」(平成29年)
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10 詳細な定義は脚注3で言及している資料参照。

11 自動車産業の範囲は2011年産業連関表統合中分類の乗用車、その他の自動車、自動車部品・同付属装置。
各年で人数の多い職種を抽出し、時系列で可能な限り定義を統一するように集計。集計方法は以下の通り。
11年の自動車・機械器具組立従事者は自動車組立従事者とはん用・生産用・業務用機械器具組立従事者の合計値。
11年の一般事務員はその他の一般事務従事者、総合事務員、受付・案内事務員、庶務・人事事務員の合計値。
95〜05年の輸送用機器技術者は機械・航空機・造船技術者とその他の輸送機械組立・修理作業者の合計値。
名称が変更された職種は11年の職種名を表記している。

12 医療・保健産業の範囲は2011年産業連関表統合中分類の医療、保健衛生。
各年で人数の多い職種を抽出し、時系列で可能な限り定義を統一するように集計。集計方法は以下の通り。
11年の一般事務員はその他の一般事務従事者、総合事務員、受付・案内事務員、庶務・人事事務員の合計値。
11年のその他の保健医療従事者は理学療法士、作業療法士、その他の保健医療従事者、視能訓練士、言語聴覚士の合計値。
名称が変更された職種は11年の職種名を表記している。

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