総務省トップ > 政策 > 白書 > 29年版 > 被災地域における災害情報等伝達に役に立った手段
第1部 特集 データ主導経済と社会変革
第2節 熊本地震におけるICT利活用状況に関する調査結果

(2)被災地域における災害情報等伝達に役に立った手段

時系列別に情報収集に利用した手段をみると、発災時から復旧期までの期間を通じて携帯通話の利用が最も多く、次いで地上波放送、SNS(LINE(家族・友人・知人等))となっている。また、地上波放送及び行政機関のホームページについては、時間の経過により利用者が増加する傾向がみられる(図表5-2-2-5)。

図表5-2-2-5 情報収集に利用した手段(時系列変化)
(出典)総務省「熊本地震におけるICT利活用状況に関する調査」(平成28年)
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熊本地震と東日本大震災について、各時期に利用した情報収集手段をみると、熊本地震では、発災時から復旧期までいずれの時期においても携帯通話や携帯メール、SNSなど携帯電話やスマートフォンによって利用する情報収集手段が多く活用されている。

また、熊本地震の回答者をスマートフォンの日常的な利用状況に応じて分類するため、「日常的に利用している連絡・通信・情報入手のための手段」としてスマートフォンを挙げている回答者を「スマホ利用」、そうでない回答者を「スマホ未利用」として、分析を行った。

情報収集手段について、東日本大震災と熊本地震を比較してみると、熊本地震では、発災時から復旧期までいずれの時期においても携帯通話や携帯メール、SNSなどスマートフォン利用者、未利用者がそれぞれ日常的に利用している情報収集手段が多く活用されている。一方、東日本大震災では利用されている情報収集手段が少なく、発災時には、ラジオが中心的に活用されていたのに対し、応急対応期には防災無線やテレビ、ラジオ、復旧期には近隣の住民の口コミへと変化しており、利用されていた情報収集手段に変化のなかった熊本地震と比較して対照的な結果になっている(図表5-2-2-6)。

図表5-2-2-6 情報収集に利用した手段(スマホ利用者・スマホ未利用者別、東日本大震災との比較)
(出典)総務省「熊本地震におけるICT利活用状況に関する調査」(平成28年)
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情報収集に役立った手段について、熊本地震、東日本大震災のそれぞれについて時系列変化をみると、全体的な傾向として、利用した手段(利用率)と同様に、熊本地震では東日本大震災と比較して時間的変化が小さいことが特徴として挙げられる(図表5-2-2-7)。

図表5-2-2-7 情報収集に役立った手段(時系列変化)
(出典)総務省「熊本地震におけるICT利活用状況に関する調査」(平成28年)
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熊本地震、東日本大震災のそれぞれについて発災時及び復旧期に役立ったと評価した人の割合を比較してみると、熊本地震では時間経過に伴い地上波放送、行政機関のホームページの評価が向上している。地上波放送及び行政機関ホームページは、両地震において時間の経過に従って評価が高まっており、利用者の情報ニーズに合わせた情報発信が行われていたと考えられる。一方、携帯通話や携帯メールでは熊本地震の際には評価に大きな変化はないが、東日本大震災の際には時間の経過とともに大きく向上しており、利用環境の向上が評価につながっている(図表5-2-2-8)。

図表5-2-2-8 情報収集に役立った手段(発災時と復旧期)
(出典)総務省「熊本地震におけるICT利活用状況に関する調査」(平成28年)
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災害発生時に情報収集をする際に有用だと考えていた手段に対し、地震の揺れがおさまってから情報収集・安否確認をする際に実際に用いた手段(利用率)をみると、両者には一定の正の相関がみられる。また、スマートフォン利用者は、LINEやメール等スマホで利用できる手段について有用だと考えていた割合に対し、利用率が高い。スマートフォン未利用者は、スマートフォン利用者よりも、地上波放送やAMラジオを有用と考え、かつ利用率も高い。相対的に、東日本大震災等の過去の災害の状況から、AMラジオやエリアメール・緊急速報メール等の手段が有用であると考えられていたが、熊本地震においては日常生活で利用している情報収集手段と同様の手段が利用できたため、事前の評価と比較して利用率が伸びなかったものと考えられる(図表5-2-2-9)。

図表5-2-2-9 有用だと考えていた手段と利用した手段(スマホ利用者・スマホ未利用者別)
(出典)総務省「熊本地震におけるICT利活用状況に関する調査」(平成28年)
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図表5-2-2-10のとおり、収集した情報の種別ごとに情報収集のニーズを見ると、発災時においては地震情報や安否情報等の収集ニーズが特に大きかった。また、情報の種別ごとに情報収集時に役に立った情報収集手段をみると、情報種別全般にわたり地上波放送が役に立ったとの回答が高く、次いで携帯通話、AMラジオ、インターネットである。一方、安否情報や生活一般情報の取得に関しては、LINEの利用率が高い傾向がみられる。

図表5-2-2-10 収集した情報と役に立った手段
(出典)総務省「熊本地震におけるICT利活用状況に関する調査」(平成28年)
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災害時における各ICTメディアの位置付けを確認するため、「迅速性」「正確性」「安定性」「地域情報」「地域外情報」「情報量」「希少性」の7つの統一指標をもとに分析した(図表5-2-2-11)。

図表5-2-2-11 各ICTメディアの位置付け・特徴に関する分析の枠組み
(出典)総務省「熊本地震におけるICT利活用状況に関する調査」(平成28年)

ICTメディアの位置付けの分析は、発災時に利用者数が多かった地上波放送、携帯通話、検索サイト、AMラジオ、エリア・緊急速報メール、LINE(家族・友人・知人等)の6つのICTメディアについて評価を実施した。

地上波放送については、全般的に優位性が高く、特に地域外情報も含めた情報量に対する評価が高い。一方で、携帯通話については全般的に優位性を発揮している項目が少なく、迅速性のみやや優位になっている。特に、安定性に対する評価が低く、「つながらないことがある」という認識が一定程度存在すると考えられる。検索サイトについては、概ね地上波放送と類似した評価になっている。一方で、地上波放送に比べて希少性の評価が高いものの、正確性の点で平均を下回っており、インターネット上での情報の正確性に対する懸念を反映した結果になっている。AMラジオについては、相対的にバランスの取れた特性を持つと評価されている。地上波放送と同様、希少性に対する評価は平均を下回っているものの、他の手段が使えない場合のオールラウンドのメディアとして有効と評価されていると考えられる。エリア・緊急速報メールについては、その役割のとおり、迅速性の評価が他のメディアと比較して著しく高くなっている。LINE(家族・友人・知人等)については、安定性・迅速性・希少性の評価が高くなっている。特に、放送メディアと同等に安定性が高く評価されており、携帯通話の評価を補完する関係がみてとれる(図表5-2-2-12)。

図表5-2-2-12 各ICTメディアの位置付け・特徴に関する分析結果
(出典)総務省「熊本地震におけるICT利活用状況に関する調査」(平成28年)
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各ICTメディアに対し、上記のような7つの観点から評価した。これに対し、各評価指標において評価の高い、ICTメディアを抽出した。その結果、全般的に災害FM・コミュニティFM及びテレビ放送の順位が高く、指標によってはインターネット関連サービスの順位が高い。特に安定性や正確性の観点からは、行政機関HPやTwitter(政府・行政機関等)の評価が高く、災害関連情報の発信における行政機関のネットメディア活用の効果が浮き彫りとなった(図表5-2-2-13)。

図表5-2-2-13 各指標で評価の高いICTメディア
(出典)総務省「熊本地震におけるICT利活用状況に関する調査」(平成28年)
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