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第1部 特集 データ主導経済と社会変革
第3節 地方創生とICT利活用

(1)地域における観光客の利便性向上に向けた取組

各地域におけるICTを活用したインバウンド観光に関する取組(訪日外国人旅行者の呼び込みや利便性向上)の状況を明らかにするため、全国の地方自治体を対象にしたアンケート調査を実施した。また、取組の実施状況と訪日外国人観光客・宿泊客数の増加との関係性についても分析した。

ア 自治体におけるICTを活用した取組状況

ICTを活用したインバウンド観光に関する取組を推進している自治体は、4割近い(図表4-3-1-2)。都道府県では9割超が取組を実施している一方で、市・特別区や町村では取組を行っていない自治体も多い。「観光先進国」を実現するためには、都道府県による取組だけではなく、各市区町村がそれぞれの地域性を活かした取組の実施が広がることが重要であるといえるだろう。

図表4-3-1-2 インバウンド観光に関する取組の実施状況
(出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状に関する調査研究」(平成29年)
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具体的な取組の実施状況を見てみると、実施率が高いのは「無線LANの設置」と「自治体HPの多言語化」で、全自治体のうちおよそ3割が取り組んでいる(図表4-3-1-3)。

図表4-3-1-3 インバウンド観光に関する具体的な取組の実施状況
(出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状に関する調査研究」(平成29年)
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イ 訪日外国人の増減と自治体の取組との関係

まず、2016年の訪日外国人観光客・宿泊客数が2年前(2014年)に比べてどのように変化したのかを尋ねた。観光客数については、「15%以上増加」が9.1%、「3%〜15%増加」が6.2%とおよそ15%の自治体が、宿泊客数については、「15%以上増加」が13.3%、「3%〜15%増加」が6.4%とおよそ20%の自治体が2年前に比べて増加したと回答している(図表4-3-1-4)。また、どちらも過半数の自治体が「把握していない」と回答しており、自治体ごとの取組状況の差のほか、急増する訪日外国人の実態を把握することの難しさの影響も推察される。

図表4-3-1-4 訪日外国人観光客・宿泊客数の変化
(出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状に関する調査研究」(平成29年)
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次に、インバウンド観光に関する取組の実施状況と訪日外国人観光客・宿泊客数の2年前からの変化との関係を分析した。取組を推進している自治体では、海外から来訪する観光客数が増加したという回答割合が大きくなっており、取組に積極的な自治体ほど観光客数が増加しているという傾向となった(図表4-3-1-5)。また、海外から来訪する宿泊客数についても同様の傾向がみられる。

図表4-3-1-5 自治体の取組と訪日外国人観光客数との関係
(出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状に関する調査研究」(平成29年)
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ウ 計量分析

ここまでみてきたように、インバウンド観光に関する取組を実施している自治体では観光客や宿泊客が増加している割合が大きいことがわかった。そこで、具体的な取組の実施状況と観光客数の変化との関係性を明らかにするため、計量分析(パネルデータ分析)によって検証した1。その結果、訪日外国人観光客数の増加に対して「無線LAN(Wi-Fi)アクセスポイントの設置」や「各種ログ(アクセスログ、GPSログ等)を活用したデータ分析」など多くの取組がプラスに有意であることが確認できた(図表4-3-1-6)。特に、「無線LAN(Wi-Fi)アクセスポイントの設置」については、急速に取組が広がっており、そのような観光客の利便性を向上させる取組が行われている地域では訪日外国人観光客が増加していることが確かめられた。また、「外部のWebサイトやSNSを活用した外国人向けの情報発信・PR」の取組は有意な結果とならず、多くの情報が飛び交う中で外国人にPRし、各地域に呼び込むためには、情報発信にも一工夫必要ではないかと推察される。

図表4-3-1-6 計量分析の結果(自治体の取組と訪日外国人観光客数との関係性)
(出典)総務省「地域におけるICT利活用の現状に関する調査研究」(平成29年)


1 分析モデルの詳細については巻末付注6を参照。

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