総務省トップ > 政策 > 白書 > 29年版 > 避難時等におけるICT利用環境の充実
第1部 特集 データ主導経済と社会変革
第4節 熊本地震の教訓とICT

(3)避難時等におけるICT利用環境の充実

被災地における無料Wi-Fiの利用率はあまり高いとは言えず、熊本地震においてニーズは顕在化しなかった。これは、前述のとおり通信インフラに対する被害が少なく、比較的日常に利用している情報通信手段が活用できたことが要因として考えられる。一方で、無料Wi-Fiは携帯電話やスマートフォンによる通信が利用できくなった際には大きな需要が生じると考えられることから、本地震において確認された無料Wi-Fi設置に関する課題については今後の改善方策を検討していく必要がある。具体的には、利用者側の課題として、災害時のWi-Fiの無料開放に対する認知度を高め、実用性を向上させていく必要があると考えられる。また、提供者側の課題として、設置事業者間での情報共有や自治体からの避難所情報の共有が円滑にできておらず、ルーターの設置等に偏りが生じたことから、避難所ごとに必要なICT環境を把握し、必要なものが充足されているか確認して共有できる仕組みの運用が必要とされている。

また、避難時・避難所における被災者のニーズの集約・発信については、避難所と自治体間では、避難所運営用のアプリケーションを搭載したタブレットの活用により、円滑な運用が可能になった。一方で、アプリケーションについては操作性の観点から初めて利用する職員が使いづらさを感じたり、アプリケーション上では想定されていないきめ細かな事象についてタブレットを介した情報発信ができないなどの課題が生じており、より直感的な操作が可能になるようアプリケーションへの改良が必要になると考えられる。

一方、熊本地震においては、自治会長(区長)等が自治会メンバーのニーズの集約を行うなど、従来の地縁を活用した情報伝達・情報共有により、要配慮者である高齢者等に対しても円滑に情報共有や物資の提供ができた事例が存在する。このような事例に対しても、タブレットを自治会長(区長)等に配布するなどのICTを活用することにより、より迅速な情報収集・情報共有が可能になる素地が残されており、ICTを介さない情報共有の利点を生かしつつ、ICTを導入することにより効率化が図れる部分について検討を行っていく必要がある。

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